カタログにPOPギャラリーってありますが、そもそもPOPってなんですか?
のぼりや店内デコレーションを作っている会社
その会社とは岡山に本社がある株式会社アルファである。
会社の入り口に鳥居があった
神道系の会社ではなく、この鳥居もスーパー向けに販売しているデコレーションである。バレンタインのチョコレート売り場に飾るものだ。
だから鳥居にかかっている札も「恋愛成就」である。
だから鳥居にかかっている札も「恋愛成就」である。
しかも交換可能なんだぜ
ミクスチャー文化、ここに極まれりというオブジェである。ちなみにこの鳥居の商品名は「スーパージャンボ鳥居」定価16,500円だ。
なんで玄関においてあるのか聞いたところ、「置くところがなかったから」という回答だった。最高だ。
なんで玄関においてあるのか聞いたところ、「置くところがなかったから」という回答だった。最高だ。
インタビューのために通された部屋にはさまざまな商品を並べてくれていた。季節感むちゃくちゃに歓迎ムードである。
土用丑の日にみかけるあれは「うなちゃん」というベストセラー商品である
これらがタイトルPOPと呼ばれる商品。
レシピカードも作っている
ある!こういうのある!うちの近所にある!と言いっぱなしである。日本のスーパーで見かける風景はここで作り出されていたのだ。
お話を伺うのは株式会社アルファ 十鳥(とっとり)創平さん、服部由佳さん
冷蔵ケースに巻くビニール幕が一番売れる
購買する動機づけを行う広告の総称ですね。のぼりとかポスターを含めてPOPです。
Point of purchaseの略です。お客さんの背中を押すような広告。
いきなり登場人物が増えているが、今回の取材には実際にのぼりを印刷している堀江織物の堀江さんが同行している。アルファは工場を持たないファブレス企業なので日本中の協力会社に製造を依頼している。
アルファといえば特徴的なのぼりベースです
また登場人物が増えているが、今回の取材にはのぼりベース(土台)マニアであるライター伊藤さんも同行しているのだ。
上の顔写真は全体像だとこのようになっている。
上の顔写真は全体像だとこのようになっている。
これは新しい拷問ではなく、お気に入りののぼりベースとの邂逅に喜んでいるところである(うなちゃんはもらった)。
伊藤さんは以前「のぼりベース観察記」という記事を書いたのぼりベースマニアである。そのなかで株式会社アルファののぼりベースを「アンドアジェネシスを思わせる要塞感」と書いている。
伊藤さんは以前「のぼりベース観察記」という記事を書いたのぼりベースマニアである。そのなかで株式会社アルファののぼりベースを「アンドアジェネシスを思わせる要塞感」と書いている。
この記事はアルファ社内でも評判となり、伊藤さんは今回の訪問で歓迎されていた。
のぼりベースマニア→要塞と形容する→歓迎される、という理屈がつながってないのだが、実際、歓迎されているのだから受け入れるしかない。
のぼりベースマニア→要塞と形容する→歓迎される、という理屈がつながってないのだが、実際、歓迎されているのだから受け入れるしかない。
一番売れているPOPはなんですか?
ビニール幕ですね。
これ!?
冷凍ケースの下に巻いてあるやつだ。これがないとディスカウントスーパーっぽくなりますね。
このなかでも売れるのは紅白幕とお正月に使う市松模様。このレンガとかは年間を通じて売れています
おせち売ってるときのスーパーの景色だ。BGMの春の海が聞こえてきそうである。
売れないのはなんですか?
トリコロールは出ないですね。灰色のレンガとかも売れません。
灰色だと巻く意味ないですもんね
こう話しているあいだにも伊藤さんはハンターのようにのぼりベースをチェックしている
いったん広告です
そもそもどういうビジネスなのか
商品は何種類ぐらい作ってるんですか?
秋のカタログでいうと自社商品は1000アイテムですね。カタログ全体では他社から仕入れたものを入れて2900アイテムあります。
POPだけではなく、店内デコレーションや什器などのツール、イベント用品も含めた数です。
こういうのは店内デコレーションです
最初は「セール」というのぼりなどをうちがデザインして大量に作って、在庫して一枚から売ったのがはじまりです。
スーパーさんが自分たちでつくると単価高くなるから、とりまとめて安く売ったというビジネスモデルですね。特にビニール幕は小ロットではできないから。
よそのスーパーと一緒になるかもしれないけど安いからいいか、ということですかね。
ひな祭りなどの大きなタイトルは二種類のデザインで作っています。かぶらないように。
なるほどねー
アルファではスーパーからの個別オーダーにも応じている。その場合は要望を聞いてデザイン案を出して決めてもらって印刷、という流れである。
定番のPOPについては社内のデザイナーが80人がデザイン案を作って、社内で投票して決めてます
デザイナー80人!アドビのソフト代だけでも大変そう
うなぎ・甘酒・ハロウィン・おみくじ・クリスマス
のぼりのトレンド
これがいま十鳥さんが力入れているカットアウトのぼり
のぼりが四角ではなくカットされている。そして文字がない
売り場の情報って四角ばかりなので形で動きをつけると目立つんですよ
最初にドミノピザがピザが飛び出てる形ののぼりを作ったんです。うちにも依頼きそうだなと思ったら見積もり依頼が来ました。
節分のはチチの部分まで色を変えてます
のぼりのポールを通す部分をチチと呼ぶ。ここを赤くしている(通常は白)。チチと聞いて当然のように鬼の乳首を探していた。
売れなくなったものとかあります?
大創業祭や周年祭というのが少なくなってきてますね
閉店セールも少なくなった
最近のスーパーはおしゃれ感を出しているのでPOPをべたべたつけるのを嫌がっている、とのこと。オールドスクールいいじゃん。
インバウンドを意識したのぼりもありますね。
Tax Freeは売れました!
POPは閉店セールからTaxFreeへ
ただ、Wi-Fi使えますは売れてないですね
Wi-Fi、スーパーにないのかも
パチンコ屋さんは「店長就任」とかのぼりにしてますね
パチンコ屋さんって射幸心を煽る広告が規制されているからそのせいかも
それで社内人事をのぼりに!(憶測です)
昔ながらの「大売り出し」の上にブラックフライデーが
ブラックフライデーは去年からですね。プレミアムフライデーは一時期ドーンと出ました
プレミアムフラ…なんでしたっけ?それ?
※ 最終週の金曜日は早く帰ろうという運動。デイリーポータルZでも便乗してプレミアムフライデー音頭という動画を載せたりしたがすっかり忘れた。
いったん広告です
いまもりあがっているのはハロウィン
ハロウィンのデコレーション多いですね
いまいちばん盛り上がってます
ハロウィンってスーパーでは何を売るんですか
お菓子や飲料、かぼちゃだったり。メーカーさんが力を入れているんですよ。ハロウィン用のお菓子を作るから。
1年でもりあがる順だと?
ハロウィン、クリスマス、節分、バレンタインです。
その並びのなかだと節分、地味じゃないですか。
鬼というキャラクターが明確なので盛り上がりますね。
「鬼は外」に対抗してだっこちゃんになった鬼
うなぎのでかいやつ最高ですね
ジャンボうなちゃん 6000円
うなちゃん、ベストセラーです。
これ海でも遊べますね
いや、だめです。海水浴用のフロートは安全基準が厳しいので。これはあくまでディスプレイ用
思わぬところで安全基準について学んだが、スーパーは販促物がバックヤードからよくいなくなったりするので、毎年のようにデコレーション用品を買ってくれるなんて話もあったりなかったりするらしい。(ぼかして書いた)
POP、デコレーションのほかに、このようなイベント用品を作ったり
こういった什器類も作っている。これは冷凍ケースの手前にひっかけてタレなどを入れるカカゴ。最近の通路の狭いスーパーに合わせて薄くしたら大ヒット
アルファ本社にはこれらの商品を在庫している巨大な倉庫がある。
その様子は次のページにて!
いったん広告です
スーパーでよくみる「あれ」がたくさんある
アルファ岡山本社には巨大な倉庫があり、POPやデコレーションが在庫されている。ここから全国に配送されるのだ。
ずらりと並んだ棚。これで1/4ぐらい。
秋のPOP
値段シール
お酒コーナー!
切り取られたスーパーの景色である。そういえばこのお酒コーナーのPOPはやたらと見るけどアルファのものだったのか。
値段シールも見慣れているものだが、数字単体だとわかりにくものもある。たとえば0。
値段シールも見慣れているものだが、数字単体だとわかりにくものもある。たとえば0。
しばらくなんのシールかわからずに眺めていた。値段シールのゼロだ!
「夫」ってシールはなにに使うんだろうと話してたが、¥だった。
値段という文脈から外れただけでこんなにも違って見えるのだ。¥シールだけ買っておけばよかった。
1はテープの幅が狭い!
テープの幅が狭いだけで大興奮である。スーパーでPOPとして現れるときには見せない姿である。蛹の状態を見た気分だ。
もちろん伊藤さんはアルファにあるのぼりベースに興奮していた
これから忙しくなる
そういえば繁忙期っていつですか?
8月から12月までですね。いまから年末に向けて、ハロウィン~クリスマス~歳末とイベントが続くので。
この暑いなか、冬のPOPが並んでるのはそのせいですか。
だいたいスーパーさんがイベント2ヶ月前から動き始めるので、そのときには在庫があるようにしているので。
ハロウイン関連が多くて「ハロウィンどんとこい!」状態である
「お鍋だってどんとこい!」
これはハロウィンの仮装グッズ………なのだろうか
目についたものを目についた順に紹介する
倉庫が楽しくて1時間以上うろうろしていたのだが、そのなかで気になったものを紹介したい。
まずこれだ、パッキング作業をするところに厳重に管理されているカード。
まずこれだ、パッキング作業をするところに厳重に管理されているカード。
三角くじのあたりのみ!
これ全部あたりですか!?
ここでスーパーの注文に応じて、あたり、二等、三等などの本数をセットしています。
これを間違えるとクレームになります。
用意していた賞品の数以上にあたりが入ってるとか。傍観者としてはおもしろいけど、当事者だと思うとゾッとしますね。
伊藤さん垂涎ののぼりベース新品
こちらのぼりポールから横に出ている棒。「そういえばあるね」というものが大量にあると興奮する
顔出しNGの人をマスクする画像のようだけど、こういうデコレーションです
POPには景色を一変させる力がある
高級料亭の前に「ランチやってます」というのぼりを立てたら一気に店の雰囲気が変わるだろう。いや、料亭だけではなく洞窟の入口に「食べ放題」ののぼりが立っていたら人が入ってくるかもしれない。
武田信玄ののぼりが風林火山じゃなくて「ポイント10倍」だったら塩を送る側も嬉しい。
大量ののぼりを目の前にしてこの企画はいつかやろうと決意を新たにした。
匂いが出るPOPも作っている。匂いはウェブで伝わらないので、なんとか顔で伝えようとしている写真