特集 2016年8月15日

小説をのぼりでアピールする

小説家 長嶋有さんと宣伝ののぼり
小説家 長嶋有さんと宣伝ののぼり
3月におもしろ記事大賞というコンテストを行った。
そのとき、小説家の長嶋有さんに審査員をお願いしたのだ。

コンテストが終わって長嶋さんに謝礼を払おうとしたとき、こう提案された。
謝礼はいらないからデイリーで自分のフェアを告知して欲しい。

長嶋さんは今年小説家生活15周年なので書店でフェアを開催するのだ。面白そうだからデイリーなりにプロモーションを考えたい。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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純文学ののぼりを作ろう

顔ハメや等身大パネルなどあまり文学らしくないことを考えていたが、長嶋さんから国技館にあるようなのぼりをはどうかとのアイデアが出た。
かっこいい。そこに「猛スピードで母は」など歴代の作品名が書いてあるのだ。

しかしお金がかかりそうだし、オリオン書房ノルテ店にそれを掲げるスペースがあるだろうか。

勝手な話だが、プロモーションで作ったものはオリオン書房ノルテ店におかせてもらおうと考えていた。当然、この時点で先方には話をしていない。オリオン書房は以前もいろんな企画(「100本ポップ」「まわるポップを展示中」)をやらせてもらっているので大丈夫だろうと思っていた。

勝手に置く店を考えて勝手に都合を考えて普通ののぼりにした。

サイズが平凡なものになってしまったので、デザインだけはエッジが立つよう専門の会社に依頼した。
もったいぶらずに見せてしまうが、こんなデザインがあがってきたのだ。
!
「ケッサク小説 問いのない答え」「長嶋有新刊入荷」などの文章は長嶋さんからもらったのだが、それにのぼりのプロがこたえた。プロ同士のコラボレーションにドーパミンが出る。

コラボレーションの方向自体が違う気もするが、晩ごはんのおかずのついでに文学も買っていくか、そんな新しいシーンが見える。
こののぼりなんて比内地鶏と書いてあるように見えるではないか。
!
比内地鶏だと言ったのは編集部の古賀である。確かに地鶏っぽさがある。
我々は漢字ではなく雰囲気で読んでいたのか。
!
これは小説の文字が万年筆になっているのがポイントである。うなぎの看板のうがうなぎになっているやつだ。

ここまでのクオリティで冗談ができるとは。自分で作らないでよかった。
ひとつひとつ語っていきたいが、デザイナーに会って話を聞いてきたのでそちらをどうぞ。

販促のデザインノウハウは半端ない

のぼりはデザインが株式会社アルファ が手がけ、印刷は堀江織物に依頼した。どちらもその道のプロである。
左から堀江織物の堀江さん、アルファの宮内さん、津田さん
左から堀江織物の堀江さん、アルファの宮内さん、津田さん
アルファはのぼりを含めて販促品を手がけているのだが、打ち合わせで見せてもらった資料がことごとくグッとくるのだ。
ポイントカード特典も細かく刻まれている
ポイントカード特典も細かく刻まれている
7倍は最近作ったとのこと。売れ筋はポイント5倍と3倍。
その上の営業中は夜9時10時が売れ筋とのこと。
書体のサンプル、ウニウニカニカニ
書体のサンプル、ウニウニカニカニ
のぼりの筆文字はこのような素材集を使うこともあれば、筆で書くことも多いという。下手になるように左手で書くこともあるそうだ。
いちいちおもしろい。
のぼりのデザインは反転して見られることも考えて作る
のぼりのデザインは反転して見られることも考えて作る
のぼりはひっくり返ってしまうこともあるので、反転することを考慮してデザインするとのこと。そんな難易度の高いデザインの世界もないのではないか。
のぼりのポイントは文字に「影、フチ、影、フチ」と繰り返し装飾していくこと。「さっぱりしたデザインは無理です(笑)」だそうだ。

販促品の世界はこれだけで記事が1本書けるので改めてまた取材したい!

「恵方巻きみたいな感じで小説というのもいいなあ」と長嶋さん。いいのか!?
「恵方巻きみたいな感じで小説というのもいいなあ」と長嶋さん。いいのか!?

のぼり設置 吉祥寺編

そしてのぼりができあがった。のぼりを設置する書店は吉祥寺のブックス・ルーエと立川のオリオン書房、渋谷のブックファーストの3店。オリオン書房はできてから連絡したが快諾してくれた。よかった。
のぼりは軽いが台座とポールが重かったので運搬は赤帽である。デイリーポータルZ編集部第7のメンバーと言っても過言ではない。アゼット急便
のぼりは軽いが台座とポールが重かったので運搬は赤帽である。デイリーポータルZ編集部第7のメンバーと言っても過言ではない。アゼット急便
店頭でのぼりを組み立てる作家本人とブックス・ルーエ花本さん
店頭でのぼりを組み立てる作家本人とブックス・ルーエ花本さん
ブックス・ルーエは11年前に当サイトのライター小野法師丸さんが鎧でサイン会を開催している。心が広い書店である。吉祥寺に行ったら必ず寄ろう。
ブックス・ルーエにはこの3本ののぼりに決定
ブックス・ルーエにはこの3本ののぼりに決定
一瞬なんののぼりかわからないが(中央のはほぼパチンコだ)、文芸作品ののぼりである。これで売上が伸びるのかどうか楽しみである。

売上が伸びたら小説もどんどんのぼりを作るようになるだろう。ハリーポッターや村上春樹ののぼりを見てみたいと長嶋さんが言っていた。確かに見たいが、花本さんは苦笑いをするだけであった。
店内では長嶋さんのフェア開催中
店内では長嶋さんのフェア開催中
偶然長嶋さんの本を買った人がいたので記念撮影
偶然長嶋さんの本を買った人がいたので記念撮影
買われた人はタイからの留学生であった。「日本では文学作品をのぼりで宣伝して。しかも作家が作る」と間違った情報を持ち帰ってほしい。
8月10日現在、このように店内3ヶ所にのぼりがたてられてます
8月10日現在、このように店内3ヶ所にのぼりがたてられてます

立川・オリオン書房には7本

立川のオリオン書房ノルテ店は広いため、同じ柄ののぼりを連続して立てることにした。
いよいよバイパス沿いの中古車店っぽさが出てきた。
比内地鶏のような長嶋有祭りをエスカレーター横に
比内地鶏のような長嶋有祭りをエスカレーター横に
長嶋さんの本がおいてある棚にはこの3本。
長嶋さんの本がおいてある棚にはこの3本。
オリオン書房はドラマ「重版出来」でもロケ地として使われていた。あの撮影がもっとあとだったらこののぼりもドラマに写っていたのに、無念である。(無言でどかされていたと思うけど)。
妙な達成感があったので記念写真をやたらと撮った
妙な達成感があったので記念写真をやたらと撮った。
オレンジのポロシャツが赤帽の前原さん
オレンジのポロシャツが赤帽の前原さん

ブックファースト

渋谷のブックファーストではスペースの関係でのぼりをポスターのように設置している。
のぼりの棒がなくても雰囲気を一変させる存在感
のぼりの棒がなくても雰囲気を一変させる存在感

のぼりブームが来た!(おれに)

のぼりという垢抜けないけど力づくのアピールがおもしろい。
デイリーポータルZのライターひとりひとりにのぼりを作って送りつけようと思っている。今度イベントをやるときはひとりひとりに持ってもらおう。

のぼりはまだあるのでこれを読んで設置したいと思った書店さまはデイリーポータルZ編集部までご連絡ください。[email protected]
オリオン書房でののぼり設置は8月下旬までです。のぼり見物はお早めに。
赤帽さんは立川での長嶋有フェアで本を買った第1号になった
赤帽さんは立川での長嶋有フェアで本を買った第1号になった
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