なんてシンプルなコロッケ
『11ぴきのねこ』という馬場のぼる先生の絵本のシリーズがある。第1作は1967年発行のロングセラーである。
11ぴきのねこたちは団結しつつも好奇心や食欲に素直でとてもかわいい。自分の脳内会議を見ているような気持ちになる。
器用とは言いがたいねこたちが突然コロッケの店をはじめる。
絵本にはこうある。
ジャガイモをあらって、ゆでて、つぶして、
パンこをつけて、あぶらであげて、
どんどんつくって うりました。
3行。いや、調理の過程は2行。なんてシンプルなんだ。コロッケってもっと面倒な料理じゃなかったか。文章では省略したのでは、と思い絵を見るが、タマネギを刻んだりひき肉を炒める様子がない。パン粉も袋を逆さにしてただまぶしている。小麦粉や卵を使っていない。
そしてそのコロッケがおいしそうだ。作って食べてみたくなった。
まずは一般的なコロッケを作ろう
『11ぴきのねこ』のコロッケの前に、比較用に一般的なコロッケも作っておこう。
炒めたタマネギとバターの香りがしてくる。この時点ですごくおいしそうだ。11ぴきのねこだったら我慢できずに食べているだろう。
ここもおいしそうだ。ジャガイモが加わった分、食べ応えと食感が良くなっている。11ぴきのねこだったら我慢できずに食べているだろう。
パン粉が付きやすくなるように卵液を使う。卵なんて単体で大活躍できるものにそんな地味な役割を負わせていいのか不安になる。
小麦粉、卵、パン粉をただ混ぜて焼いたらうまそうなのに。11ぴきのねこだったら我慢できずに焼いて食べているだろう。
「ここでもう食べてしまいたい」を何度も乗り越えてコロッケが完成した。炒めて茹でて揚げて、3品ぐらい作った気分である。
『11ぴきのねこ』のコロッケを作ろう
では本題の『11ぴきのねこ』のコロッケを作ろう。タマネギもひき肉も、小麦粉も卵も使わずにやってみる。
溶けた!
油に入れたら小さくなっていくので慌てて引き上げた。中止だ中止。
溶けていく様子を見たら「そりゃあこうなるよな」と心底納得できるのに、やる前はカラッと揚がるイメージしかなかった。
衣はちゃんと付けないといけないらしい。つぶしたジャガイモが油に溶け出しちゃうのだ。
11ぴきのねこも見えないところで小麦粉と卵を使ってしっかり衣を付けていたのだろう。卵、そのまま食べちゃわないで偉い。
もし衣を薄くしか付けないのであれば、タネに片栗粉を加えてマッシュポテトフライのようにする方法もあるかもしれない。
11ぴきのねこはそのどちらかをやっていた。揚げ物のことを、僕なんかよりもずっとよく分かっているのだ。
分かったこと
11ぴきのねこたちは、見えないところでコロッケの衣をちゃんと付けていた(付けない場合はタネに工夫をしていた)。