ねえ、これ、なんだと思う?
冒頭で述べたタイプのパッケージのヨーグルトを購入した私は、そのまま、デイリーポータルZ編集部へ向かった。
編集部員の安藤さんが仕事をしている。遠くから、呼んでみよう。
安藤さん、安藤さん、これ、なんだと思う。
安藤さんは、「?」という様子。
「え、シャンプーですか。詰め替えるやつ」
よく見てください。これ、これだよ。
「なんなんですか、おしゃれなパッケージだし、洗剤じゃないんでしょう? リンスですか」
せめてコンディショナーと言ってほしい。これ、もっとよく見てくださいよ。
「あっ!」
ここでようやく気付いてくれた。
「ヨーグルトなんですか! へ~!」
ミーティングルームでは、同じく編集部の橋田さんがリモートの打ち合わせを終えたところの様子。
(コンコン)橋田さん……?
「なに、古賀さん怖いよ」
これ、なんだと思う?
「え?」
これ……。
「なに……ハンドソープ……?」
ちがいますよ……。
「あっ! えっ? ヨーグルトなの?」
そうでーす!
「えーっ。こんなパッケージのがあるの?」
調べてみると、どうもそれなりに以前からあるパッケージ形態ではあるようだ。けど、私のように安藤さんも橋田さんも知らなかった。
22種類中7種類がパウチパックの店もある
私がこのパッケージに最初に存在に気づいたのはこだわり系のスーパー、成城石井でのこと。
一度気づくことで、おそらくこれまで見落としていたパックのパッケージのヨーグルトがかなり「見える」ようになってきた。
一般的なスーパーのさほど広くない店舗にはおなじみのプラスチックや紙の容器だけが並ぶが、高級店だったり品ぞろえにこだわりのあるスーパーにはかなりの確率でパックの商品が並んでいる。
兵庫発、個性派スーパーといわれる北野エースの渋谷東急フードショー店は、ヨーグルトの品ぞろえがかなり良い。ここでは400g以上の家庭用商品が22種類(これでも同商品のフレーバー違いは除いてカウントしている)並ぶうち、7種類がパックのパッケージだった。
へ~~っ、だ。
3品買ってみたら「なんで?」が見えてきた
安藤さんや橋田さんが見間違えたとおり、このタイプ、特にスクリューキャップのついたパックは詰め替え用の洗剤やシャンプー、ハンドソープ等で既視感が強い。
ただ、ヨーグルトは「詰め替える」ものではないわけで……。
じゃあなんでこういうパッケージなんだろう?
捨てるときにゴミの量が減るから……というのはなんとなく思いつきつつ、3品を試しに購入、その公式から発表されている理由(と、せっかくなのでお味もですね)みていきたい。
理由:取り分けやすい
ひとつめはひとり用のカップタイプのヨーグルトをたくさん出しているイメージがある、チチヤスの「北海道で作ったチチヤスヨーグルト」。
チチヤス株式会社は広島が本社だが、この商品は製造を北海道の新札幌乳業が行っている。コラボ品みたいなことだろうか。
値段は800gで830円(価格は以降も税抜、購入時のものです)と、量は多いとはいえグラムあたりで考えてもだいぶ高級なヨーグルトである。
製造元の新札幌乳業には同傾向の「ご褒美ヨーグルト」という商品がるがこれと同じパッケージ。
近年「取り分けやすさ」を狙ってノズルのついたこのパッケージに変更したんだそうで、 なるほどそういう利点があるのか。
食べてみると、生クリームが使ってあって、口内にクリーム感が広がるタイプのヨーグルトだった。さっぱりしているんだけどちゃんともったり食べ応えもある。酸味はおだやかでクリーム感がずっと口に残ってくれる。上等のやつだ……。
良いことがあった日、もしくは完全に無理になっちゃった日に復活の呪文として買うヨーグルトだと思う。
理由:衛生的に保存できる
続いては福島県の木村ミルクプラントの「命の雫 こだわりヨーグルト」1000g 750円。名前のかっこよさにもうしびれる。
ノズルのついたパッケージを使う理由は衛生的に保存できるからだそうだ。
そうか、さきほどのチチヤスのもそうだけど、一般的なプラスチックケースの400g入りのヨーグルトにくらべてパックの商品は1000~800gと量が多い。
このパッケージなら、食べきるまでできるだけスプーンや空気にも触れなくてすむ。
パッケージの商品説明がのカタカナに酔いしれつつ食べると、こちらも酸味はあまりなく、とはいえぶわっと口中にクリーミー感が広がることもない、するっと吸い込まれるような素直な口あたりのヨーグルトだった。
加糖タイプを買ってみたのだけど、べたつかず優しい甘みで腸にしみわたる。
そもそもアルミパウチでなければ作れないヨーグルト
衝撃を受けたのは最後の「プレミアム 湯田ヨーグルト」800g 799円だった。
ヨーグルトファン界隈からの信頼が熱い逸品と噂には聞いていたが、食べるのははじめて。
こちらはノズルのない、ずばっとパックを開けて、スプーンなどですくうパッケージ。このタイプもスーパーには多かった。
ここまでの2品の言う、分けやすさや衛生面とは別の理由がありそうだ。
とりあえず……と公式サイトにアクセスすると、最初のページにいきなりパッケージのことが言及されていた。
それによると、このヨーグルトは「紙やプラスチックの容器では作れない」のだという。あっそういうことがあるんだ!
アルミのパッケージが発酵温度をより一定に保ち、空気に触れさせないことで乳酸菌の能力を発揮させ、他の食品からのにおい移りも防ぐのだそう。
超積極的なパッケージ採用理由だった。
パッケージからすくうと、たぷたぷしつつもっちりしていてちぎり出すよう。
こちらも加糖タイプを試してみたのだけど、酸味と甘みともちもちした食感がチーズケーキみたいだ。
実はノズルのないこのパッケージに、編集部の橋田さんが「倒さないか心配」といっていた。
公式サイトによるとそういった声は少なくないようで、背を低くして重心を下げるリニューアルを行ったのが現行品だそうだ。
景色はしれっと変わっていくから
なんだか一生懸命、なぜパックのパッケージなのかの意味を探ってしまったけれど、もともとは単純に「スーパーにこういうヨーグルトがたくさん並んで売られてる~~!」「知らなかった~~~!」という発見のお知らせだったのでした。
まちの景色はこうしてすこしずつ変わっていって、いつしか知らないうちにすっかり変わった様子になる。
ひとつずつ、いちいち気づいて驚いていきたい。