ちょっと聞いてよ 2023年1月31日

鯉をありがとう ~佐久鯉の甘露煮をまるまる1本いただく

大きな魚を1匹、まるまるでいただいた。

料理にうとく、釣りにも親しまない私にとっては珍しいことだ。

それで分かったのだけど、これはかなり嬉しい。受贈の原体験的というか、贈り物としてのプリミティブな興奮があった。

東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

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神様になったみたいな気持ち

いただいたのはこちら。佐久鯉の甘露煮1本である。

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ゴゴゴゴゴ

写真で伝わるかどうか不安なのだけど、箱のサイズは縦が35cmある。

でかいのはもちろん、魚がまるまる1匹ということに圧倒的な(もらった身でこんなことを言うのは大変大変恐縮なのだけど)献上感がある。

神様にでもなったみたいな気持ちがする。

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神聖(たとえパックから出すときに尾が折れてしまったとしても)

いや、もしかしたら神様よりも配慮してもらっているかもしれない。

神様に備えるのは生の魚ということが多いんじゃないか。でもこの鯉は1本まるまる甘じょっぱく煮つけてあるのだ。

羊羹かと思った

立派なものだから、ぼろっと崩してしまってはいかんと切り分けるのは緊張した。なんだけど、ナイフを入れるとなんの抵抗もなくすっと刃が入る。身が崩れず、羊羹かと思った。

皮、身、そして骨、これぞまさしく「一体感」がありやわらかい。

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やわらかっ!

食べてみると身はしっかりと、でもほろっほろだ。

「たんぱく」って味が薄いんじゃなくて「たんぱく」という味がきちんとあるんだなと食べてわかった。がっつりした味付けがしてあるのに、鯉自体の味もちゃんとする。

普段魚の甘露煮というと小魚でしか食べつけないから、分厚い身に、こんなに食べ応えがあっていいのかと思ってしまった。

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甘露煮としてかつてないこの肉厚さ

もちろん、もんのすごい食べやすい味、というわけじゃないのも良さだ。独特の酸味が味のフックとしてあって、近所のスーパーでは買えない味わいの遠さに興奮がある。 

パッケージには「小骨に注意」とあり、なるほど鯉にはそういうイメージがあるけれど、私がいただいた固体は本当によく煮てあって中骨まで楽勝で食べられた。

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ふつうに生きててこんなことない

さて、なぜ神様でもない私がこんな幸甚に至れたか。

人間、ふつうに生きていて鯉を1匹まるまるもらえることないと思うのだ。そりゃ売ってるんだからもらう人もたくさんいると思うけど、なかなかない。

理由は当サイトのヘボコン(技術力が低い人限定のロボットコンテスト。作れない人が無理やり作ったロボット同士を戦わせることが見る者をなごませる)にある。

ヘボコンは2017年から毎年1回、コロナでお休みやリモート開催になった年もありつつも鯉の名産地であるところの長野県佐久市にある佐久市子ども未来館で実施されてきた。

私は毎回司会として参加しており、今年1/21に行われた大会で参加者の方から賄賂としていただいた、というわけなのだ。

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2023年の佐久大会は新競技「ヘボ綱引きバトル」! 作れていないロボたちがし烈に綱を引きあった

賄賂で鯉1匹、さきほど神様みたいだと言ったが、どちらかというとお代官様の方だった。

(すみません、ヘボコンだから「賄賂」というのが自然なのだけど、実際は歓迎の意味でただただ親切でくださったわけです)

佐久といえば鯉と分からされた7年間

イベントを通じ佐久にお世話になって7年。

それまで佐久といえばバルーンフェスタと、あと軽井沢に近いこともあり優雅でアカデミックなイメージを持っていたのだけど、通うほどその意外な鯉推しを知ることになった。

なにせ先に述べたバルーンフェスタで市が飛ばすPR気球のデザインが鯉である。

鯉が「鯉」と書いた腹掛けをつけた子どもをくわえている。佐久の鯉太郎というPRキャラクターだそうだ。良すぎである。

さらに和泉屋菓子店というお菓子屋さんには鯉をモチーフにした人気のお菓子があり、これは佐久に通うなかで何度もいただいた。「鯉ぐるま」という。

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中がすごいのよ
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2匹の鯉がみちっと入っている
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片方はあんこ入り、もう片方はクリーム入りでむちゃうまい

ちなみに5月には「佐久鯉まつり」という、鯉の街なら鯉のぼりのシーズンに祭りをやらねば、という発想のお祭りもあると聞く。

開催中は「佐久鯉マラソン大会」が行われ、勇壮な「佐久鯉太鼓」も披露されるというから、鯉に対する意気込みはなみなみならない。

佐久では1825年(文政8年)ごろに鯉の養殖が定着したそうだ。歴史ありすぎだ。

鯉にとって完全に適した気候と千曲川の水質の良さからしっかりした身と味わいの鯉が育つことで、佐久鯉のブランド名は全国にその名をとどろかせ続けている。

佐久といえば、鯉だったのだ。

名産の鯉を1本いただいて、すっかり生気に満ち溢れたと、そういうお話でありました。

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