全部完食
かようにお肉というものは素晴らしいのでございます。すべての肉は命であり、命を山で喰らうというのは動物としての根源的な欲求を満たします。これほどファンタスティックな体験が他にありましょうか。
でも、山でお肉を食べるのはハードルが高うこざいます。特にテント泊での肉は荷物が重い。そこで登場するのが山小屋です。
最近の山小屋は肉をいただける事があります。感謝してナイスなお肉をいただきましょう。
山で肉を焼いて食べると、いつも以上においしく感じるのは何故でございましょう?
わたくしは登山をしてテント泊をする時は、ほぼ必ず生肉を持っていき、山で焼いて食べています。そのおいしさたるや。安い肉やホルモンが格別においしく感じるのでございます。
しかし持っていくのは生肉。何時間、時には24時間以上常温で持ち運ぶためには少し工夫が必要なのでございます。
重い荷物を背負って山に登るわけですから荷物の重さにも制限がございます。山で肉を食べるには技術が必要なのです。
わたくしはこれまでに多くの山で肉を焼いてまいりました。牛肉、豚肉、鶏肉、ホルモン。
同じ様に肉を焼いてきたつもりでしたが、写真を見返したら毎回違った趣でございました。
牛肉もよいものですが、ホルモンも山で焼くと殊更においしく感じられます。
ホルモンやカルビなどで脂が多く出た時はナスに吸わせると無駄なく処理できます。
食物連鎖の頂点に君臨する人類だからこそ出来る娯楽といえましょう。ゴージャスでございます。
肉を焼いている写真を見ているだけで心がゴムまりのように弾みます。ポポンポーン!!
肉は柔らかいと美味しいという価値観がございますので、肉を柔らかくする技術もご紹介いたします。
以前、『ステーキは手間をかけた分だけ美味くなる(ご飯はそうでもない)』という記事を書いた時に編み出した方法です。
マイタケ30g、水15ml、砂糖5g、塩1gをミキサーでガーッとやると、どんな硬い肉もテロンテロンに柔らかくするペーストが出来ます。
マイタケに含まれるマイタケプロテアーゼという酵素がタンパク質を分解するのだそうです。ちょっとした消化でございます。
ジップロックに入れてもよろしいですし、密閉できる保存容器でもよろしいかと存じます。
ペーストにするのが面倒であれば、刻んだマイタケと肉をジップロックに入れるだけでも効果がございます。
焼くとこの様になります。
と、肉を柔らかくする方法を書いておいてなんでございますが、牛肉は硬いのをゴリゴリ食べるのも『肉食ってる!』という野性味を感じられ、それはそれでよいものです。 硬い肉もマーベラス!やわい肉もエクセレント!!
あと、最初からヒレ肉など良い部位を選ぶのもよろしゅうございます。
和牛のシャトーブリアンとまで行かなくても、厚い肉は正義なので正義を行使して参りましょう。
ユユユ、U・S・A!U・S・A!!
次は、肉を焼く道具を紹介いたします。
肉を焼く道具は色々試しましたが、結局フライパンに落ち着きました。登山に持っていく際には、大きさと重さが重要でございます。よい道具でも重いと持っていけません。
登山では鍋のことを『コッヘル』と呼びます。ドイツ語で『調理器具』です。コッヘルの蓋がフライパンになっていることがあります。
コッヘルの蓋フライパンはオマケみたいなものなので小さいのです。これは直径12cm。肉を焼くにはやや窮屈でございます。
もう一回り大きい蓋フライパンも持っています。こちらは直径14.5cm。これくらいあると焼き物が捗ります。
ソロキャンプなら十分な焼き能力を有します。
しかし、蓋フライパンは取っ手が貧弱だったり、厚みがないので火の通りが不均一になりがちだったりいたします。
という事で小さめのフライパンを使い始めました。
やはり焼き能力としては、蓋フライパンよりこういうフライパンに軍配が上がります。後述の19cmフライパンでは重いと感じる時は、今でもこのフライパンを使っております。
ダイソーのスキレットが優秀と聞いたので買ってみたりもしました。300円。
大きさや焼き能力は申し分ないのですが、810gは流石に重うございます。最近の軽量テントと同じくらいの重さですから、さすがに登山では躊躇いたします。
焼き網も試しました。脂が落ちて煙の匂いがよいスパイスになります。
焼き網は焚き火が出来るキャンプ場でなら有用です。しかし登山には使いにくい。脂が落ちるとガスバーナーが汚れるので焚き火でしか使えません。登山ではあまり焚き火が出来ないのです(普通は焚き火禁止なので)。
最終的に行き着いたのは、ティファールのフライパンでございました。直径19cm。21cmのも所有しておりますが登山で使いやすいのは19cmです。
ティファールのフライパンは安くて大きさもちょうど良くて使いやすいのですが、最大の特徴はビスが無いことなのです。
一般的なフライパンにはビスがあり、ここに汚れが溜まります。これが地味によろしくない。
ビスもないし大きさも丁度いいので、荷物に余裕があるときはこの19cmフライパンを使っております。
ちなみに肉のソースやタレは液体調味料用の容器に入れて持っていきます。
塩やコショウは自作のマルチ調味料入れに入れています。
このマルチ調味料入れはモデルデータを公開しているので(コチラ)、どこのご家庭にもある3Dプリンターでプリントして使ってください。
ついでに書くと、上からの明かりがあると山での生活が豊かになるので、ランタンを持っていくことにしています。ランタンはロープなどに吊るしてもいいのですが、ストックに付けたフックに引っ掛けております。
テーブルもテント生活を豊かにするのでおすすめです。
最後は保冷の技術でございます。
日帰りや一泊で、真夏以外ならジップロックに入れて保冷剤で冷やすとか、肉自体を冷凍して保冷バッグに入れておけば腐ることはございません。
ですが、遠くの山に前夜から行くとか2泊するとかいう場合は保冷しきれないので工夫が必要でございます。
そこで役に立つのが真空断熱スープジャーです。
これに肉を入れて冷凍庫で24時間冷凍したあと、常温(27℃)で放置いたしますと、 24時間経っても2℃を保てます。
更に12時間、合計36時間常温にしても12℃でございました。
36時間保てば2泊目の夜も肉を焼いて食べられます。ナイスなスープジャーでございます。
ちなみに、一泊の時にこの技を使うと肉が溶けずに食べられません。真空断熱が必要になるのは2泊目からでございます。
凍りすぎていた時は、赤ワインを掛けて溶かしました。赤ワインはソースに流用出来ます。
技術と道具は揃いましたね。あとは山に登るだけです。
山に登ったら肉を焼きましょう。
焼いたらいただきます。いただきまくるのでございます。
わたくしは肉を食べるために山に登っていると言っても過言ではございません。
牛様、ありがとう存じます。
山と、山に関わる皆様も、ありがとう存じます。
かようにお肉というものは素晴らしいのでございます。すべての肉は命であり、命を山で喰らうというのは動物としての根源的な欲求を満たします。これほどファンタスティックな体験が他にありましょうか。
でも、山でお肉を食べるのはハードルが高うこざいます。特にテント泊での肉は荷物が重い。そこで登場するのが山小屋です。
最近の山小屋は肉をいただける事があります。感謝してナイスなお肉をいただきましょう。
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