特集 2019年7月17日

能登のあばれ祭が完全に事件だった

火事や暴動ではなく、お祭りです。

友人から「能登にある古民家を買ったので遊びにこない?」と言われていたので、特に目的も決めずに軽い気持ちで見知らぬ町を彷徨ったら、なんだすごいお祭りと遭遇した、そんなお話です。

あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:ごはんとお粥の研究(デジタルリマスター版)

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なぜ能登に?

この人が能登に古民家を買ったMasaki Satoさん。山形出身で東京に住んでいて、なんで能登?と聞いたら「ネットで売りに出ていた古民家が気に入ったので売ってもらった」と言っていた。行動力の権化か。

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いや、気に入ったからって買いますか、古民家。しかも蔵付き。

紆余曲折の紆余曲折編

金沢から古民家まで1時間半。途中、固く締まった砂浜が国道になってるとこを走ったり。

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水曜どうでしょうで見たぞ、ここ。
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僕と妻。(撮影:Masaki Sato)

 僕が今まで食べていた寿司とは本当に寿司だったのか?と思うくらいおいしいお寿司を食べたり、

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のどぐろの握り。口の中で溶けたので、のどぐろは飲み物。
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ボタンエビ、ヒラメ(エンガワ乗せ)、カニ(カニ味噌和え)。すべての仕事が完璧すぎた。

古民家のある町を目指して移動したり。

着いた古民家の周りは建物に統一感があって、やたらと落ち着いた街だった。Satoさんちも良い家だけど、周りの家も含めた町と、そこに住む人がとても良い。

こりゃ買うね、と思った。

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冬は海が荒れるので海側にはあまり窓を作らないのだそうな。

 で、白い砂浜を歩いたり、

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日本海側の海ってどんよりしたイメージを持ってたけど、夏は普通に明るいし水もキレイ。

蔵にあった器とか屏風とか色んなものを見たりした。

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伊万里の錦絵金縁蓋茶碗。とても良い。
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これも伊万里だったか、仕事量が多い。
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錦焼小皿。こういう皿、前に加賀の山中温泉で買ったな。
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四隅が立ち上がってる器。変わった形で銘は角福。伊万里ですかね(ミーハー横好きなので細かいことは分からない)。

そしてあばれ祭に行くことになった(急展開)

Satoさんの友人も交えてご飯(さっきのお寿司)を食べていたら、 「今夜はあばれ祭があるので見に行こう」という話になった。

なんですか、あばれ祭って、と聞きながら検索したら火柱と神輿の写真が出てきて、神輿を落としたり転がしたり巨大なたいまつを燃やしたりするのだという。

なにその奇祭。

よっしゃ行こう行こうとなり、能登半島の先を目指すことになった。下の地図を見てもらうと分かるけど、石川県は縦に長いので移動時間はかなり長い。

 

下の赤いピンが金沢、中間がSatoさんち、右上があばれ祭の舞台、能登町の宇出津(うしつ)。

能登半島を北上していく

車で移動中、太陽が日本海に沈み、

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油絵みたいな雲と、沈む太陽。

 腹が減ったので夕飯を食べ、

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ボリュームがすごくておいしいカツ丼750円。熱々でむせる。

なんやかんや途中にあるのだけど、21時くらいに宇出津(うしつ)に着いた。

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道がメチャクチャ暗くて、駐車場にいた知らない人たちと「祭りはどこですかねー?」って話ながら適当に進んでいった。

 特に案内板とかは無いので適当に歩いていく。祭りはどこじゃ。

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駐車場からなんとなく賑やかっぽい方に歩いていったら明るくなってきた。手がかりは、音と匂い。

予想以上に盛大なあばれ祭

なんか火が燃えるような匂いの先で、盛大に焚き火?をしていた。「おお、火だ」 なんて言っていたが、これはまだ序の口だった。

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十分燃えているが、前菜でしかなかった。これでも焚き火としては大きいよね?

町のメインストリートに入ると、さっきまでの静寂と打って変わって、人とキリコが道を埋め尽くしていた。

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キリコ(奉燈)は光るとうろうが付いた神輿の様なもので、子供や女性が乗って太鼓を叩いたりする。他の地方では見たことないタイプ担ぎ物で、担ぐのは大人の男女。

キリコというのは初めて聞いたし、初めて見た。お祭りというのは本当に地方によって違いがあって面白い。 

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キリコ近影。タイプとしては山車に近いが、車輪は無く大人が担ぐ。

あばれ祭は別名『宇出津のキリコ祭り』と言い、能登の他の町でも行われる『キリコ祭り』の一つなのだそうな。他のキリコ祭りにも行ってみたい。

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あばれ祭は夜中が本番で、朝まで続くという。

神輿が壊れていた

キリコだけでなく神輿も出ていたが、なんだか壊れていた。なぜだ。

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シンプルな神輿だが、屋根が欠けている。(撮影:Masaki Sato)

どうして壊れているかはすぐわかった。

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神輿を転がしていた。(撮影:Masaki Sato)

「ちょーさ!ちょーさ!」と囃し立てながら担いでいると、みんなで息を合わせて地面に神輿を叩きつけた。 

ん?神輿ってそういうもんだっけ?

5年前に北村さんが書いた『あばれみこし』も昔はこれくらい暴れていたのかも知れないが、能登では今でもガチで暴れている。


でもって、ドーンと縦回転とかする。

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神輿ブレーンバスター。(撮影:Masaki Sato)

 落としたらぐるぐる回す。石川県の人は穏やかと聞いていたが、この祭りを見てしまうと印象が変わりますな。メチャクチャ激しいやんけ。

 
そりゃこんだけやれば壊れるのも納得ですわ。

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暴れの結果。(撮影:Masaki Sato)

ところで関係ないけど、この時自宅に付けた監視カメラで猫の様子を見たらトイレの淵にウンコをしており、こぼれそうになっていた。 

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絶対落ちるわ。(夜は自動で赤外線カメラになるのでモノトーンです)

時刻は23時。通りを進んでいく。 

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提灯はかわいいが、書かれている文字は『あばれ』だ。

移動していくキリコに付いて先に進むと、道の先が妙に明るい。

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通りの先がやけに明るいと思ったら。

控えめに表現しても惨事っぽい。23時だけど(ダジャレ地獄)。 

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ちょっと燃え過ぎじゃないですか。

行ってみると、なんかもう、大惨事一歩手前だった。やっぱ惨事だった!23時だけに!! (しつこい)

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火柱上がってたね。

そこに神輿がやってくる!

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「ちょーさ!ちょーさ!」って掛け声、興信所のCMに使えそうだなって思った。

動画でもどうぞ。 


動画で「あつっ!」って言ってるのは僕で、飛んできた火の粉が首に落ちた。火の粉がデカイんよ。

で、神輿はなにをすんのかと思ったら川に飛び込んだ。火柱の真下なので、めちゃくちゃ火の粉が降っている。 戦隊モノの爆発シーンみたいだ。

大きな炎と入水で二重に惨事だった。23時だけに!!(着地)

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どうしてこうなった。(撮影:Masaki Sato)

風が強く、その上たいまつを竹竿でバンバン叩くものだから火の粉の飛び方が尋常じゃない。 

革命とか起きてる?

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いやいやいや、近所の家燃えるだろ。

 服に炎の匂い染み付いて、むせる。


かなり離れていても熱気を感じるし、火の粉飛んでくるし、煙も激しい。

近所の人は「今日は風が強くていつもよりひどい」と、いつ自分の家が燃えやしないかと気が気でない様子だった。

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だって、この火の粉ですよ。

そりゃ自分ちの目の前でこんだけ燃えて火の粉が舞ってたら「ひどい」とも言いたくなるでしょうね…。

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火の鳥出ました。(撮影:Masaki Sato)

炎の勢いがすごすぎて、火柱が大変な事になっていた。

日野の『火振り祭り』もなかなかクレイジーだったけど(たいまつを持って町を歩いて叩き折って木に投げつける)、炎はこちらの方が大きい。

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撮影してる人たちも、よくそこまで行くなってとこまで突っ込んでいた。みんなおかしくなっている。

キングギドラみたいになってるし、日常で見ることはないレベルの炎だ。災害みがある。

『災害み』って祭りの形容としてはどうなの。

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ギドラですよ、ギドラ。怪獣の王ですよ。(撮影:Masaki Sato)

時間にして15分ほど。もっと長く感じたが15分程度の出来事。

すごかった。惨事とか書いてすみませんでした、最高でした。すごかったとしか言いようがない。すごいものを見て、体験した。熱かった。熱すぎた。なにこれ、毎年やってるの?能登、すごい!すごくない?すごいよね?!(語彙を諦めた)

たいまつが燃え尽きると神輿と男たちは川から上がって、次のたいまつに向かっていった。そう、これが数箇所あり、最後は八坂神社にたどり着く。

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どう見ても消火中の火災現場

消防団の人が更に現場感を醸す。 

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現場検証かな。

良いもの見れた、いやー、良いもの見れたって、大興奮で古民家に帰ってきたのは夜中の1時、その後さらに2時間呑んだくれた。

 翌日以降のダイジェスト

で、翌日以降は、

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良い器に盛り付けて肉とか海鮮とか食べたり、
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近所の方からいただいたアワビをコリコリ食べたり、
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囲炉裏で魚とかサザエとか焼いたり、
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蔵を漁って昭和初期の印刷物を読んだり、
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昭和初期のカレーライスの作り方とか、
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古いうちわを見たり、
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羽咋駅前でUFOっぽいオブジェを見たり、
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帰りの新幹線で速攻ビールをプシューしたら妻にゴミクズを見る目で見られたりした。

その辺のことはまた今度。

あ、そうそう。僕らが旅行中の猫ですが、

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監視カメラで見たら、やっぱこぼれ落ちてたね。俺んちが惨事。

控えめに言って、石川県最高かよ

2年前に加賀の記事を書いたときも思ったけど、石川県はとてもいい。町並みが良いし食べ物おいしいし、人も良いし文化の違いも面白い。あばれ祭もすごかったけど、なんとも居心地がよい。

また行きます。石川県の皆さん、よろしくお願いします。

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今回も買ってきた、リアル天狗になった夫が夢枕に立って製法を伝えたという圓八のあんころ餅。
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