うまいたこ焼きを食べに
見学の途中からがまんできないくらいにたこ焼きが食べたくなっていた。しかし食べるのならば絶対に銅板で焼いたものがいい。4代目にうまいたこ焼き屋を聞いた。
「そうだね、大阪ならチェーン店でもうまいところはたくさんあるよ。吉本の隣にあるわなかなんかもうまいし、あと**や**もうまい。**は東京にもあるんじゃないかな。」
聞くと大手チェーン店で使われている銅板はほとんどここで生み出されているのだ。大阪のたこ焼きがうまい理由の半分くらいはここが握っていた。
工場を後にし、4代目に教えてもらった吉本のとなりにあるたこ焼き屋「わなか」へと向かった。地下鉄の最寄り駅を降りてから吉本の劇場まで、歩いて10分くらいの距離なのだが、すでに4、5軒のたこ焼き屋を通り過ぎている。どれもうまそうだったが目的地までは、と思いがまんした。
数あるたこ焼き屋の中で一番列が長かったのがやはりこちら「わなか」だった。真夏の炎天下なのだが、あつあつのたこ焼きを食べたいが為にたくさんの人が並んでいるのだ。
一階のオープンテラス(露天ともいう)で買ったたこ焼きは冷房の効いた2階席でも食べることが出来るのがありがたい。
「わなか」の鉄板はかなり使い込まれて変色していたが、周囲のたたいた跡からして甲野製作所製の銅製に間違いないだろう。使い込んだプロ機材っぽさがかっこいい。
焼き手の従業員さんは一定のリズムで串を動かしたこ焼きを回していく。このお店はいったい一日に何個のたこ焼きを焼くのだろう。それを想定してヘビーユースに耐えうる銅板をたたき出すのはやはりたいへんなプレッシャーだろうなと思った。
「わなか」のちらしにもちゃんと「特性の銅板で一気に焼き上げます」と書かれていた。具材の注文販売も受け付けるが、お店では銅板を使っているので仕上がりに差が出ます、と書かれている。
「わなか」のたこ焼きは表面がかりっと、中はとろっとしたまさに理想のたこ焼きだった。一口ほおばると甲野製作所の二人が「ほれ、うまいだろう」とにやけているのが思い浮かんだ。ええ、まったくその通り、うまいです。
職人が支える技術でした
3代目が言っていた。
「たこ焼きも銅板も、人の手で作ったものが一番うまいんだ」 と。
職人の作る物には機械で作った均一の商品には出せない味がもしかしたらあるのかもしれない。しかし実際のところ、世の中の流れから銅製品の卸は年々減少しているのだとか。追い打ちをかけるように銅の原価は毎年倍々に値上がっている。
5代目はどうなるのですか、と聞くと「息子には継ぐなって言ってますよ」と4代目。10年後には職人の支えてきた世界は一変しているだろうと予想する4代目は、それでも今日も銅板をたたいているのだろう。これを書いていてまたたこ焼きが食べたくなってきました。
甲野製作所
https://www.kohno-factory.com/index.html
大阪府大阪市平野区加美東4丁目2番4号