メニューの彩度が強い
今回は「歌うため」にカラオケ館に来たわけではない。あくまで「食べるため」にカラオケ館に来たのだ。
そんな目的で来たのは初めてなのでどのくらいの時間があればよいか全然分からなかったが、とりあえず2時間で入店した。
カラオケに行ったら普通はまずデンモクで歌う曲を探すが、今日はフードメニューで食べるものを探す。
本気で食べるぞ!というマインドでこのメニューを見ると、いつもよりも解像度が高いような気がしてくる。メニューの統一感はまるでないが、逆に統一感のなさという点に着目してひとつのチームを作りましたという雰囲気がある。伊豆なんかにあるサイケなおもちゃを趣味でたくさん収集している博物館のようだ。
提供まで時間がかかる印象があったため注文は最初に一気にしてしまうことにした。部屋に備え付けの電話で注文を伝えると3品目にはいったところで店員さんが焦り始めて、メモを取り出したことが電話口の向こうから伝わってきた。こんなにフードメニューを一気に頼む人はあまりいないのだろう。
食べ放題の環境としてはいささか心もとないがこちらが勝手にやっていることなのでしょうがない。ただ「ちくわの磯部揚げ」を頼んだ時に「ちくわの日の出揚げですか?」と聞き返されたことは書き留めておきたいし、ちくわの日の出揚げってなんだ?
カラオケ館ではしびれ鶏を食べよう
気持ちよくあいみょんを歌っていると早速注文した料理が運ばれてきた。
注文したのは太麺ナポリタン、しびれ鷄、スパイシーすなぎも、えび野菜餃子、ちくわ磯辺揚げ、オニオンリングタワーの6品。
純粋に自分の好きなものと、これは普段カラオケで頼まないなというものを中心に選んでみた。こうやって並ぶと豪華さがある。
まずナポリタンをすするとこれぞカラオケ飯という味わいが口中に広がった。否が応でも「解凍」の二文字が脳裏に浮かんでくる。しかしカラオケ飯に求めていたのはこれだ。これでいいのだ。
ジャンクなものを無性にたくさん食べたくなる時があるだろう。ご飯を食べにカラオケに行く時はそのモードでいかなければならない。自分の中でのモード設定が大事だ。
えび野菜餃子は意外性という意味でかなりポイントが高い。これをカラオケにきて頼んでる人を見たら「相当えび野菜餃子が好きなんだな」と思うし、生活に余裕のある人なのかなとも思う。
ポテトを差し置いてえび野菜餃子を頼める人はガストとロイヤルホストが並んでいたら間違いなくロイヤルホストに入るしSuicaはオートチャージにしているだろう。
勝手に食べ放題をするとそんな人の気持ちをちょっと味わうこともできる。正直、料理の味としては特筆すべきこともないのだがそういう味わいがプラスされてくるので気分は悪くない。
カラオケ飯ではずれがないのは、やはり揚げ物だろう。出来合いのものだとしても揚げるという工程を最後に通ることによって料理としての格がワンランクアップする。
レストランのようにきちんとした調理場が用意されていないカラオケ屋にとって揚げ物は守りの要だ。えび野菜餃子で攻めて、揚げ物で守る。そうやってカラオケ屋のメニューの均衡は保たれている。
注文したオニオンリングタワーもカラオケで注文するメニューに正解があるとしたらこれだな、という感じだ。
揚げ物以外に過度な期待は禁物なカラオケ飯だが、メニューにも大きく掲載されていた「しびれ鶏」は事情が違った。
甘辛い垂れに山椒と風味と唐辛子の辛みがプラスされ、これはなかなか美味しい。カラオケ飯とは思えない味の複雑さだ。カラオケ館のフードメニューに対する意地が凝縮されたメニューと言ってよい。
勝手に食べ放題しているわけだが、それこそ安めのバイキングに来た時のような楽しさがある。金額を考えてもこのくらいのクオリティだよな~と思いながら選んでいると、1品だけすごく美味しい料理があったりするやつだ。そういうメニューを発見した時の感動が、カラオケ館の勝手に食べ放題にはある。
退室時間があるから燃える
軽く歌唱タイムも挟みつつ食べ進んでいると退室時間の30分前になっていた。オーダーから提供まで時間がかかったこともあり、思ったよりも時間を使っている。今日はカラオケ館に食べに来たのだ、歌っている場合ではない。
この企画は「無理をしない」というルールがあるが、個人的には食べ放題はちょっとくらい無理をして「これ以上食べられない!」という気分を味わうものだと思っている。普段は味わえない度を越した満腹感こそが食べ放題の醍醐味だ。
ラスト10分で揚げパンのデザート箱がきた。妙にボリューム感のあるデザートもカラオケならではのメニューであり、これを食べなければ終われない気がしたのだ。
筆者は見た目よりも食べるタイプなので実は満腹度的にはそこまで無理をしているわけではないのだが、問題は時間だ。10分でこれを食べきらなければいけない。
普通の食べ放題も基本的には時間が設定されている。カラオケも退室時間が定められているため、くしくも普通の食べ放題と同じ状況である。
そんな状況にがぜん燃えてきてしまった。ランナーズハイならぬフードファイターズハイだ。
オニオンリングタワー |
¥590 |
しびれ鶏 |
\680 |
スパイシーすなぎも |
\390 |
太麺ナポリタン |
\680 |
えび野菜餃子 |
\395 |
ちくわ磯辺揚げ |
\395 |
揚げパンのデザート箱 |
\580 |
コーラ |
\390 |
合計 |
\4,100 |
カラオケで思う存分食べる贅沢さよ
勝手に開催した食べ放題だがきっちり普通の食べ放題と同様の満腹感を感じることができた。
カラオケ飯はコスパとしては正直良くないだろう。4,000円あればもっと良いものが食べられる。しかしだからこそカラオケで食べ放題をする贅沢さが際立ってくる。ジャンクなものを大量に摂取している感じも欲望に素直に従っている感じがして気持ち良い。
そして退室時間が設定されていることが思いがけず普通の食べ放題と同じような緊張感を生み出してくれた。これをこの記事で得られる唯一の知見としてここに記しておきたい。