あれは私だったのか
子供の頃、酔って練習に乱入してきたり、保護者でもないのに一日中試合をボーっと見たりしてる謎のオッサン達がいた。
計測が終わり子供たちの試合をしばらく眺めていて気付いた。私はいつの間にか、あのオッサンになっていたのである。
約束の時間になったので、球場の扉を開けて中に入る。
モンキーズ、子供の頃に対戦したこともある懐かしい名前だ。聞けば私が所属した砂町ジャガーズも健在だという。東北楽天イーグルスの設立が2004年だから、それよりもずっと長く続いているのか。
試合前のノックやキャッチボールが行われている中、いよいよ計測をさせてもらう。
いきなりやってきてロードメジャーをコロコロしだす中年男と、それを撮影する女。子供達や保護者の方々の目にはどのように映っているのか?
あとはフェンスの外の距離を残すのみ。佐藤コーチに心からお礼を伝えて球場を後にする。
私の中で200mくらい飛んだことになっていた吉村のホームラン。結果は以下の通り。
今回計測したのは着弾点までの距離だが、「推定飛距離」というのは打球速度や角度から計算して推定される着地点までのことだそうだ。6mのフェンスを越えおよそ4mに位置する窓に飛び込んだ吉村のホームランも、着地点はもう少し先だと思う。
だが1988年から巨人軍の本拠地となった東京ドームの両翼は100m。残念ながらあの日の打球は、プロの世界ではスタンドに入るほどの当たりではなかった。
やはり思い出は思い出のままにしておくべきだったのだろうか?
いや、35年前の出来事を覚えている人が私以外にもいることを知り、吉村のホームランの価値はむしろ高まった。
あの日の球場は少年野球関係者だけでなく、巨人軍の選手を一目見ようと集まった近所の人々で埋め尽くされていた。強烈な打球の興奮は恐らく、多くの人々の心の中で今も生き続けているはずだ。
打率2割9分6厘、ホームラン149本。公式に残された吉村選手の17年間の通算成績である。だが、私の夢の中ではこれからも150本目の特大ホームランが再生され続けるだろう。
子供の頃、酔って練習に乱入してきたり、保護者でもないのに一日中試合をボーっと見たりしてる謎のオッサン達がいた。
計測が終わり子供たちの試合をしばらく眺めていて気付いた。私はいつの間にか、あのオッサンになっていたのである。
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