渋谷の紀ノ国屋で見つけた
見つけたのは渋谷駅直結のスクランブルスクエア内にある高級スーパーの紀ノ国屋だ。
ここの紀ノ国屋は、繁華街の駅ビルという特徴から、路面にある落ち着いた店舗とはちょっと雰囲気が違う。
国内外からの旅行者に向けたお土産屋としての目くばせが効いているし、勤め人の昼ご飯やおやつの需要にこたえんとする様子もうかがえる。
常に賑わっていて、人気商品がどーんと積んであったり、売り場の作りも活気があって華やかだ。
そんななかに抹茶わらびもちこんにゃくゼリーはあった。
プッシュされるわけでもなく、静かに菓子コーナーに陳列されている。新商品だとか、とくべつに仕入れて飛び道具のように売っているのではなく、それなりに定着して淡々と扱われているように見える。
何と何の何?
それにしてはちょっと色物と言ってしまってもいい、変わった商品だと思うのだ。
抹茶わらびもちこんにゃくゼリー。
ど文系でも、いや、文系だからこそ因数分解したくなるようにことばが並ぶ。
何と何の何? と、ぱっと見では目がすべる。
私たちは、こんにゃくゼリーだったらよく知っている。
スーパーやドラッグストア、コンビニなどあちこちで見るし、あの独特の、噛むと歯から逃げるように躍動するぶりんとした食感は久しく食べていなくても口の中にも再現することができる。
喉に詰まらせる危険が分かってからは柔らかいタイプも出ているし、なにしろ身近な食べ物だ。
語の前半に位置する抹茶わらびもち、というのもそれほど難しくはない。
わらび餅は安いのをスーパーでよく見るし、和菓子屋でもこの夏買った。
どういうことかよく分からないが、都心では駅のなかにあるスポットの飲食店売り場などで鯖の棒寿司と一緒に売られるのもよく見かける(あらためてちゃんと調べた。和泉家吉之助というお店の商売らしい)。
ご存じわらび餅、その抹茶味と言われれば、あるだろうなと思う。
抹茶、わらびもち、こんにゃく、ゼリー。
ひとつひとつは飲み込むのに苦労しない。 ところが、それが一体になると……
抹茶わらびもちこんにゃくゼリー
一気に不明瞭になる。
ぷるぷるした食べ物が3つ同居する
数回声に出して読んでみると、一語のなかに、わらび餅とこんにゃくとゼリーという、ぷるぷるした食べ物が3つも入っていることに気づかされる。
そんなことしちゃだめだ。
オールスターにも向き不向きがある。人間だったら集めても困らないとは思うのだ。プリキュアも仮面ライダーも種類が集まれば集まるほど盛り上がるし、紅白歌合戦なんかであの歌手とあのバンドの人が交流している様子を見ると、おお、と脳がくすぐりを受ける。
しかしぷるぷるしたものは、そこは別じゃないのかな。集合させることでブレイクするとはちょっと思えないのだ。
どういう原材料なのかよ
いろいろと疑いまくってしまったが、この商品、何を買ってもおいしいことで知られる、信頼の紀ノ国屋ブランドが付いている。
紀ノ国屋のオンラインストアには詳細ページがあった。
「こんにゃく粉とわらび粉を使用しもっちりとした食感に仕上げた抹茶わらび餅風の蒟蒻ゼリーです」とある。
本当に、プリキュアみたいに、オールスターにして盛り上げる作戦なのか。
原材料にはこんにゃく粉とわらび粉、両方の粉の表記がある。なんと……。
食に対する人類の意欲はなみなみならない。
私たちは、焼きそばとご飯を一緒に炒めてそばめしを作った種族である。その実績を考えると、こんにゃく粉とわらび粉を同時に使って新しい味を求めるなんてことはやって当然なのかもしれない。
私たちがさすがだ。
パッケージにも見覚えがない
中を開けると、個包装のパッケージがまたちょっと不思議だった。
なんかちょっと、「添付のタレ」っぽいのだ。
お菓子が入っているというよりは、”味”が入っている雰囲気がある。
外装も、ここまで和の要素をたたみかけた商品でありながら欧文の表記を中心にデザインされていることで異国の雰囲気がある。
海外の方のお土産目線で考えて、細かくチューニングしてこうなったということなのかもしれない。
抹茶とわらび餅の味、こんにゃくゼリーの食感
見どころが多いものだから、肝心の味への言及が遅れた。
食べてみた。ざっくり言うと、味は抹茶とわらび餅、食感がこんにゃくゼリー。総体としては、変わってる食べ物だと私は感じた。
こんにゃくゼリーらしい、特徴的なくにゅっとしつつもどこかでサクッと歯が入る食感で、けれど風味はわらび餅だ。
そして全体を味としてまとめるのが抹茶。色も抹茶。
同僚たちにも食べてもらったが、すあまなど、うす甘いものが好きなウェブマスターの林さんは大絶賛だった。
特徴は、ゼリーなのにいい意味で抹茶の粉っぽさが感じられるところ。抹茶がしっかり使われている。
3人からは、不思議とどこか日本っぽくない味だという結論が出た。
やっぱり海外向けに全体がデザインされているんだろうか。
林さんは、うす甘いし、それにべちょべちょしたお菓子だからこれはすごく好みですと、試食の残りを持って帰って行った。
撮影時は「そうなんだなあ」とだけ思ったが、べちょべちょしたお菓子、という愛好のジャンルがあるのは意外で(林さんの好物は船橋屋のくず餅、フルーチェ、水まんじゅうだそう)、全体的に美味しさは伝わったものの、結局最後までさわやかに謎を残す品であった。