バスならではの安心感
日本人向けの周遊バスMyBusランドクルーズはJTBのサイトから予約購入できます(販売は始まっていますが、運行は4月からです)。とにかくたくさん移動したい人には最適だと思いますよ!
日本最長の昼行バスといわれる上野~青森便。11時間かけて680キロを走破するのだ。しかも昼間にである。
これに匹敵するバス旅がヨーロッパにある。オランダ~ベルギー~フランスをバスで1日で結ぶのだ。こちらも昼間に12時間以上かけて走るという。
ちょっと想像を超えているだろう。どちらも乗ってきました。
※この記事はJTBがあたらしく始めたヨーロッパの日本語周遊バスMyBusランドクルーズの広告企画ですが、取材時にはまだこのサービスが始まっていなかったので仕方なく現地のガチのやつに乗っています。
日本の長距離昼行バスで最長と言われるのが東京と青森とを結ぶ便である。朝10時に上野を出て夜9時ごろに青森に着く。総距離680キロ、ざっと11時間の旅である。
これに匹敵する昼行バスがヨーロッパにあるらしい。総距離620キロ以上、オランダからベルギーを経てフランスまでの道のりを一日で走るというのだ。今回の記事はJTBがあたらしく始めたヨーロッパの日本語周遊バスMyBusランドクルーズの広告企画なので、その一部なのだろうとお思いだろう。
それが違うのだ。取材時にはまだこのサービスが始まっていなかったので先駆けて現地のガチのやつに乗ってきた。ようするに大人の事情である。とはいえ昼行の長距離バスという点は同じなのでその部分で青森便との違いを感じてもらいたい。
長距離夜行バスには何度か乗ったことがあるけれど、昼行バスで長いというのはどうなのか。夜行バスとはまた違った面白さがあるのだろうか。予約は国内も海外も、webから簡単にできた。
まずは東京~青森のバスである。
バス乗り場で待っていると「青森駅前」の表示も誇らしげに、大きな観光バスみたいなやつがやってきた。かっこいいぞ。
しかし乗り込んでみるといわゆる「高速バス」の内装だった。夜行バスのようにカーテンで仕切りがあるわけでもなく、左右に2列ずつの4列シートである。シンプルイズベスト。派手に席を倒すと後ろの人に蹴られるやつだ。
座席間隔も普通のバスと同じで、狭すぎないがけっして広くはない、いやちょっとまてよ、やっぱり狭いかな、くらいだった。一言で言うと、狭い。
でも荷物は上の棚に置けるし電源も完備である。もちろん空調もきいていて暖かいし。好きな飲み物とお菓子と本さえあれば、この空間で一日過ごせるというのはもしかしたら天国なのではないか。
平日の便にもかかわらず、上野駅を出る時点で席は8割がた埋まっていた。聞くと、時期にもよるが、だいたい毎日満席に近くなるのだとか。こんなハードなバス旅に毎日30人くらい挑んでいるということだ。
ということはもしかしたらものすごく快適なのかもしれないぞ。期待をこめて、いざ11時間の旅に行ってきます!
バスは快晴の都内を抜け、北へ北へとひた走る。都内は混んでいるし、高速の防音壁に視界を遮られてほぼ景色が見えないので、いきなり自分の内側と対話を始めるしかなくなった。家のカギ閉めてきたっけな、とかどうでもいいことが気になる。
隣のお父さんは発車して1時間たらずで寝た。まだ昼の11時である。見渡すと周りでもちらほらみんな寝始めていた。
寝るんだ、昼行バス。考えてみればやることないから寝るのも選択肢の一つかなとは思っていたけれど、これほどまでにみんな寝るとは思わなかった。夜寝られなくなるぞ。
スタートしてほどなくして車内が静かになった。話をするのはひそひそ声、そんな暗黙の了解がまかりとおる雰囲気である。持ち込んだお菓子を開ける音が響く。ガサガサ、ガサガサ。これは外が明るいだけで、プレッシャーは夜行バスと同じだ。夜と違ってビールとか飲めない分、頼れるのは自分だけである。
とはいえバスは2時間に1度くらいの頻度でサービスエリア休憩をとるらしい。最初は頻度多いなと思っていたが、これが徐々にありがたみを増していく。
サービスエリアでの休憩はだいたい30分くらいだった。思った以上に長くとってくれる。隣に座っていたお父さんは煙草を吸う人らしく、バスを降りてすぐ喫煙所に飛び込んでいった。煙草を吸う人は僕たちがトイレを思うみたいに、同時に煙草のことも考えなくてはいけなのでたいへんだ。
寝てる人がいるとなるとみんな気を使って静かにしてくれるので、バスは本を読んだりするにはもってこいの環境なのかもしれない。次の休憩所までに持ってきた本を一気読みしてしまったくらいだ。
あっという間に次の休憩に入る。なんだ、たいしてつらくないぞこれ。
ちなみに青森までの11時間のうちに休憩は4回である。それぞれ30分くらいずつ止まる。
この休憩の「30分」という時間が絶妙なのだ。トイレに行ってコーヒーを買って、ちょっとぼーっとしたら30分である。サービスエリアにあるレストランに入ってしまうと、注文してから料理が出てくるまで待つことになるので30分だとちょっと心もとないだろう。
とはいえだいたい毎回大きなサービスエリアを選んで休憩してくれるので、その気になれば林の中を軽く走ったりもできる。僕は出張に行くときには現地で走るため、だいたいジョギングシューズを持って行くのだけれど、これがたいへん役に立った。紅葉の中を5分くらい走る。実際走っていたのは僕と犬くらいだったけれど、これはかなり気持ちがよかった。
バスにはみんなだいたい時間通りに戻ってきくるのだけれど、このサービスエリアでは2名ほどが遅れて時間通り出発できなかった。
チケットを買うときに電話番号を登録してあるので、運転手さんが集合時間に来ないお客に直接電話する。ちょうど聞こえてしまったのだけれど、この言い方がぜんぜん嫌味ではないのだ。
「失礼します!もしかしてバスを間違えちゃってないかなと思って!」
こういう配慮は日本ならではだと思った。
持ってきた本も読んでしまったので会社のメールをチェックしたりメルカリでいらないものを物色したりして時間を過ごした。さっきの休憩所で余分に時間をとってしまったからだろうか、次の国見SAでは休憩が20分だった。
僕はドライブが好きだと思っていたのだけれど、実はサービスエリアが好きなだけなのかもしれない。つまりバスに乗ってたまにサービスエリアに寄ってくれたらもうそれで満足なのだ。車売ろうかな。
というわけで前半戦終了である。はっきりいって楽しかった。
しかしここからの後半戦が長かった。徐々に日は傾き、夜に向かってバスは走る。サービスエリアで本でも買えばいいやと思っていたけれど、売っていなかった。考えてみたらみんな運転して来ているのだ、本読まない。
本を読んで眠くなったら目を閉じてみるんだけれど、昼行バスってなんだか眠れないのだ。理由は昼間だからだと思う。
でもバスには運転手さんが2名乗車していて休憩の旅に運転を替わるのだけれど、控えの選手は後ろの方で寝ているようだった。これは仕事としての睡眠である。さすがプロだ。
朝の新しい光を浴びて出発したバスが、いまでは青から赤、赤から黒へと重さを増していく空の下を走っている。こういう時間の移り変わりを感じることができるのは昼行便ならではなのかもしれない。旅とは点ではなく土地土地を線でつなぐことなのだ、そういう基本的なことを思い出させられる。
バスは最後の休憩所である紫波SAを過ぎ、青森県内へと入っていく。このバスは終点の青森駅前の前に弘前でも降車できる。弘前での降車で10分くらい止まるので実質休憩は5回である。ここでトイレにいったりもできるぞ。
弘前から先はほぼウイニングランである。1時間ほど走ってバスは時間通りに青森駅前に到着した。この感動ったらない。ただ乗っていただけなのにこの感動である、運転手さんたちはきっと抱き合って涙していることだろう。
この日は遅かったので青森で一泊して、翌日の朝の新幹線で帰りました。あー楽しかった。
次はヨーロッパの昼行長距離バスに乗ります。
何度も言うがヨーロッパを走る昼行バスは、日本の青森便のような定期便ではなく、今回一緒に記事を作っているJTBのMyBusランドクルーズの一部になる路線なので、厳密には扱いが別なのかもしれない。でも昼間に600キロ以上走るバス、という一番怖い部分は共通しているので大目に見ていただきたい。日本のバスとの違いはあるのだろうか。
バスはまずオランダの首都、アムステルダムを朝の7時半に出発する。
この時期のヨーロッパ、とくに北の方では日の出がものすごく遅いのだ。9時を過ぎたころから街がぼんやりと明るくなってきて、15時過ぎるとまた薄暗くなる。この昼の短さには滞在中最後まで慣れなかった。
用意されたバスは2階建て、ゆったりとした皮のシートである。
このバスはさっきも書いたとおりツアーの一部なので、日替わりで案内役がついてくれるのだ。この日はスペイン人のマリアと、もう一人スペインからきた男性のミゲルが一緒に乗り込んでいた。
説明は英語なのでだいたいわかるし、バスはゆったりと余裕がある。これはなんだか快適な旅になりそうである。
しかも今回は一人では不安だったので日本から心強い友を呼んである。ライター地主くんである。
地主くんにもこのあと別の視点でこのツアー全体を振り返ってもらう予定なので、そちらも楽しみにしていてください。
こちらのバスもほぼ満員で、乗客に日本人は僕たち二人だけ、あとは南米から来たツアーの人と、インドから来た団体、ほかにもシンガポールやオーストラリアなど、非常に多国籍だった。
この現地ツアーも日本からウェブサイト経由で申し込むことができた。申し込みの時にパスポートナンバーを聞かれたり、飛行機の到着便を聞かれたりするけれど、ちゃんと答えるとちゃんと空港まで迎えに来てくれるのでかなり便利である(現地でガイドに会えるかドキドキしたけど)。
僕が申し込んだ時には日本人向けツアーはまだできていなかったのだけれど、4月からは日本人向けツアーも運行するらしいのでもう無敵だと思います。
さっきも書いたが特筆すべきは座席の広さである。世界の人はでかい人もいるからか、かなりゆったりと作られていて、日本人にとっては映画館にでも来ているみたいな感じである。
この日は昼の休憩をベルギーで取ってそのあとフランスまで移動することになっているので、ほぼ終日バスなのだ。日本みたいにサービスエリアに寄ったりするのだろうか。さっきマリアが「お昼にはブリュッセルよ!」と言っていたような気がしたので(スペイン語なまりの英語で、集中していないと聞きもらします)もしかしたらノンストップなのかもしれない。
車窓から見える風景もほぼ野原で代り映えしなかった。たまに何度か細い川を渡る。日本の昼行バスと違って、乗客は非常に大きな声で遠くの席の友だちと話したり自宅に電話したりしていた。うるさくて寝られないけど、どうせ寝ないのでうるさい方が気を使わなくてよくて楽である。
ところで、今回のバス旅はツアーの一部なので、すでに前日にオランダでチーズ工場を見学したり風車と一緒に写真を撮ったりと、要所要所はおさえている。長距離昼行便として長時間移動するのはこの日だけである。
今回の記事ではずっとバスに乗っているだけなので、途中にバス以外のヨーロッパ情報もいくつか挟んでいきたいと思います。まずはこちら
日本でもよく観光地にある名前入りキーホルダーだが、オランダでは名前入りトラックだった。
子どもはたいてい車が好きなので、そのボディに自分の名前が書いてあったらそりゃあうれしいだろう。でもこれ日本でやるとトラック野郎みたいになりかねないなとも思った。
オランダとベルギーとの国境を越え、しばらく走ったあと突然バスが止まった。10分間、どうぞ写真撮って!という休憩らしい。さすが昼行バスとはいえ観光をかねているだけはある。しかし広い道の真ん中だ、何を撮れというのだろうか。
と思ったら、はるか遠くに変わった建物が建っていた。
アトミウムは鉄の分子構造を巨大化した建物。ベルギーでおこなわれた万博のシンボルということなので、日本でいうところの太陽の塔みたいなものだろうか。エレベーターで上まで登れるらしいのでぜひ行ってみたかったが、なにせ与えられた時間は10分である。写真を撮ったら急いでバスに戻る。
バスを離れるときに注意したいのは、日本のバスみたいに戻りの時間を表示してはくれていないところだ。ガイドさんか運転手さんにしっかりと何時に出るか聞いておかないとたいへんなことになる。
戻りの時間がわからないとたいへんなことになる、と書いたが、その前にこちらの人の柔軟さを理解していないと苦労することがある。僕たちはわりといつも時間に遅れずに集合場所に集まっていたのだけれど、バスは平気で10分とか、長いと30分くらい遅れてやってきた。
乗客も平気でそのくらい遅れて「いやー、寒いねー」なんて言いながら集まってくるのだ。この感覚は日本のバスとはまったく違う。
一度など夜の集合で雨が降っており、僕と地主くんは濡れながら集合場所で待っていた。10分過ぎ、15分過ぎ、いよいよ不安になってきた頃である。
これはもう自力でなんとかするしかないな、と諦めかけたその時、おもむろにバスがやってきたのだ。さらに驚いたのは乗客もみんなそのあとで来たことである。雨が降ったら20分くらい遅れてもいいよ、とスペイン語で言っていたのだろうか。いやそんなことはないと思う。
かと思えばたまに時間キッチリにみんな集まっていて、僕たちが3分くらい遅れて行くと「もう全員集合してますけど!」みたいな空気で迎えられたこともあった。なんなの。
ひとつだけわかったことは、時間はアバウトだがバスは必ず来る、ということである。これも列車とは違う安心感かもしれない(海外の列車は平気で来ないことがあるので)。
案内役の二人はスペイン語で説明をしたあとに英語でも話してくれるのだけれど、外の景色と対応しているのは先にアナウンスされるスペイン語なのだ。英語を待っていると車窓はもう流れてしまっている。
リアルタイムにガイドを聞くにはスペイン語を勉強したらいいのだけれど、なかなかすぐにはどうにもならないので、手っ取り早く翻訳サイトにお願いすることにした。マリアのスペイン語をダイレクトに翻訳だ。
翻訳サイトは体感上3割くらいの正答率だった。声の聞こえ方やなまりの強さなどにもよるのだろう。海外ツアーの最大の壁、それはやはり言葉なのかもしれない(何度も言いますが4月からは日本人向けツアーも運行が開始されるのでその点もクリアです)。
アムステルダムのゴッホ美術館には有名なひまわりという絵が収蔵されている。時間がなくて見にはいかなかったのだが、雨宿りに寄ったミュージアムショップでひまわりのグッズが大量に売られているのを見た。
他にもメガネから傘、トートバッグに文具など、思いつくものほとんどある。ひまわりくらい有名だと、配色を真似るだけでグッズになってしまうのがすごいと思った。これがフランスに行くとモナリザグッズに変わる。この有名絵画のグッズ展開の強引さには驚きながらもやっぱり買っちゃうのである。
アトミウムを過ぎてさらに1時間ほど走り、バスはブリュッセル市内へとやってきた。座っているだけで、パスポートさえ出さずに国境を越えられるのだ。20年くらい前にいろいろなところを苦労しながら旅していた身としては信じられない環境である。
ブリュッセルに到着。ここで2時間の休憩となる。
2時間も!と思うだろう。日本の昼行バスだと目的地まで行くのが目的なので観光の時間はとらないのが基本なのだけれど、ヨーロッパのバスは少しでも景色を見せようとしてくれるのだ。走る距離は日本と変わらないはずなので、たぶん道中をかなり飛ばしているんじゃないかと思う。
せっかくの経由地ブリュッセルである、2時間きっちり楽しもうではないか。
ベルギーと言えばなんだろう、と地主くんと相談した結果、二人そろって「ワッフル!」ということになった。二人とも今回はバスに頼りきりでほとんど前知識を入れてきていないのだ。
どう?美味い?
ベルギーはチョコレートも有名だよね、ということでチョコもトッピングした。
ワッフルには地主くんが食べているブリュッセルワッフル(軽くてふわふわしている)と僕が注文したリッジワッフル(砂糖コートされていてカリッとしている)があって、どちらも食べてみたのだけれど、どちらも鼻の奥が痛くなるくらいに甘かった。チョコもワッフルも美味しいのは確かなんだけど、甘さが日本人の想像する度合いを超えているのだ。
関係ないけど隣にいたベルギー人が見上げるくらい大きくて海外に来た感じがありました。
パリのシンボルであるエッフェル塔ですが。
遠くで見ると美しいのだけれど、近くで見るとまったく雰囲気が違うのだ。
4本ある足のそれぞれから斜めにエレベーターで上がっていくことができるんだけど、そのエレベーターが思いっきり作業用の趣なのである。
東京タワーとか都庁とかスカイツリーとかに慣れているとちょっと想像できないだろう。下から見ると「これ大丈夫か?」というエレベーターでキコキコと上がっていく。
もちろん建設が1889年と、世界に先駆けていたということもあるのだろう。そしてこのエッフェル塔、たぶんかなりの箇所で作りながら設計の変更が行われたんじゃないだろうか。そうでもなければこの建て増し感は出せないと思う。狙って出したとしたらフランス人かなりやる。
展望階まで登ると周囲に高い建物のないパリの街をぐるっと見渡すことができる。これはかなり壮観なので見た方がいいです。
ただ東京タワーとかと違い展望階も基本ふきっさらしなので、雨が降ると立っていられない。
僕たちが行ったときは雨風が強くて最上階までのエレベーターが止まってしまっていた。少しの風でも止まる感じのエレベーターなのだ。エッフェル塔に上ると、パリに抱いていた「おしゃれ」「優雅」「最先端」そんな印象ががらっと変わるのでお勧めです。
ブリュッセルの街をすこし歩くと、人だかりにぶちあたった。誰がいるのだろう、竹内力だろうか。
そういえばバスで案内役のマリアがしきりに「マネキン」と言っていたのだ。マネキンってなんだろうと思っていたのだけれど、たぶんこれのことを言っていたのだと思う(ベルギーでは「マネケンピス(Manneken-Pis)」と呼ばれていました)。
ワッフルを食べて小便小僧を見てしばらく道に迷って、集合場所にたどり着くとちょうど2時間くらいだった。遅れて置いて行かれるのが怖くて15分前くらいに着いたので、実際には1時間45分である。
2時間というのはちょっとした観光にはちょうどいい時間だと思う。長すぎず短すぎず、お店に寄ったり何かアトラクションを一つ体験することもできるくらいの時間だろう。昼行バスに2時間の休憩をねじこんでくるヨーロッパはやはりおしゃれだなと思った。
このあとバスは1時間半くらい走ってベルギーのブルージュという街についた。ここで昼食休憩である。
ブルージュではムール貝が有名とマリアに教えてもらったけれど、歩き回っているうちにムール貝を食べることなく集合時間になってしまった。与えられた時間をどう使うか、ここにバス旅の充実度合いがかかっていると思う。
名物のムール貝は食べられなかったけど、ブルージュでの休憩ではクリスマスマーケットでホットワインを飲みながら地主くんとおれたち将来どうしようか、という話をわりと真面目にした。こういう話は普段なかなかしないので、ワインとベルギーというわけのわからない状況が人を素直にしたのかもしれない。旅に出ると身近な人と深い話ができるからいいですよね。
駆け足の休憩も終わりまたバスへと戻る。
集合場所には僕たちのバスの他にもそれこそ大量のバスが待機していた。ヨーロッパを周遊する場合、みどころが点在していることが多いので、効率的にまわるにはバスが最適なのだろう。
バスツアーの場合すきな時に歯を磨くことができないので、と思い途中でリステリンを買ったのだけれど、これが日本では体験したことのない刺激だった。
もしかしたら薄めて使え、とか書いてあるのかもしれないけれど読めませんもの。
パリの中心を流れるセーヌ川には37の橋がかかっているというが、ボートに乗って下から見ると二つとして同じ手法で作られたものがないのだ。
これもおそらく時代によって、必要にかられて橋をかけていったからだろう。パリに来てみて思うのは、街の持つ歴史の長さである。博物館はもちろんのこと古い教会も多いし、かと思えば最新のファッションブランドのショップがすごい古い建物に入っていたりする。街自体が何千年におよぶ建て増しの上にできているのだ。
僕たちを乗せたバスは日が暮れたあともひた走る。
ここまで朝から夕方までバスに乗ってきて乗客にもさすがに疲れが見え始めた頃、車内のモニターでは映画が流れ始めた。そういえば以前は日本の高速バスでも釣りバカ日誌とか流していた気がする。
はじめ10分ほど英語音声スペイン語字幕だったのだけれど、どこかからリクエストが入ったのだろう、途中からスペイン語音声英語字幕に切り替わった。
英語音声ならなんとなく追えるのだが、英語字幕だと字幕にだけ集中してしまって物語がまったく入ってこない。もちろんスペイン語はわからなかった。
これはもう言葉のわからないわれわれは寝るしかないのだろう。最終目的地のパリまであと4時間くらいある。
けっきょくバス旅の一番いいところは、電車と違って寝られるところかもしれない。バスの中というのは一種の安全地帯になっていて、外から知らない人が入ってくることがないのでみんな家みたいに安心しきっているのだ。もちろん寝過ごして知らないところに行っちゃう心配もない。
昼行バスは目的地に着くのが夜になるので、着いてから寝るためになるべく車内では寝ないようにしていたのだけれど、パリを前にとうとう寝てしまった。おかげで残りの4時間はあっという間だった。
オランダ、ベルギー、フランスと、3か国をまたいで走る昼行バス便だったけれど、途中にちょうどいい観光時間があったりシートに余裕があったりと、僕たちがバス好きだということをさっぴいてもかなり快適な旅だった。
言葉がわからないと集合時間や場所に不安があるけれど、これから日本人向けのツアーができたらもはや死角なしだと思う。旅行は移動をできるだけ楽にこなして、現地でちょっと無理をする、くらいがちょうどいいと思うんですよね。
日本人向けの周遊バスMyBusランドクルーズはJTBのサイトから予約購入できます(販売は始まっていますが、運行は4月からです)。とにかくたくさん移動したい人には最適だと思いますよ!
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |