特集 2021年3月8日

今川焼きに厚焼きパンケーキのふりをさせる

今時のパンケーキが厚みを増すにつれ、今川焼きに近づいてきた。

ふんわりと厚焼きのパンケーキは、コーヒーとセットで1000円以上することもあるプレミアムな食べ物だ。

一方、今川焼き(大判焼きや回転焼きとも呼ばれる)といえば5個入りが250円ほどで売っている、冷凍庫の友。街中で出来たてを買ったとしてもせいぜい150円くらいだろう。

ちょっと、50円の冷凍今川焼きに厚焼きパンケーキのふりをさせてみたい。

平成元年生まれ。令和から原始まで、古いものと新しいものが好き。

前の記事:東京都立大学は、平成初期の雰囲気を色濃く残す未来の文化遺産だ

> 個人サイト 畳の夢

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厚焼きの一例:星野珈琲店の窯焼きスフレパンケーキ

フワフワ、フワトロ、シュワシュワ…最近の厚焼きパンケーキをあらわす擬態語は、少しずつ実体をなくしている。その鍵はメレンゲだそうだ。

これでもかと泡立てたメレンゲを加えることで、生地はふんわりと厚みを増し、くちどけも良くなる。

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20分じっくりと焼き上げたパンケーキは外サクで中ふわだ

小麦粉とは偉大なもので、ザクザクしたクッキーからふわふわのパンケーキまで、原材料はだいたい同じだ。

食感の魔術師ともいうべき小麦粉をリスペクトしつつも、要するに違いは空気の含有量なのだ。

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ニチレイの冷凍今川焼はスーパーで5個入りが約250円

一方、今川焼きの売りはみっちりと詰まったあんこだ。見た目は似てるが方向性は真逆。赤茶色の小豆には確かな実体がある。

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しかもレンジで40秒で熱々が食べられる

パンケーキも好きだけれど、この記事ではひたすら今川焼の肩を持ちたい。

産声をあげる赤ん坊ではないのだから、いまさら空気をありがたがる必要はない。

フワフワを求めた先の、唐突なあんこをありがたがろう。

1. 今川焼きの純喫茶風

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バター、メープルシロップ、今川焼×2

丁寧に時間をかけて焼き上げた厚みのあるホットケーキ。板橋区大山の「ピノキオ」など、昔ながらの喫茶店でも人気のメニューだ。今川焼きは、そんな懐かしいホットケーキのふりだってできる。

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ちょっと小ぶりだけど、パンケーキとしては贅沢すぎる厚み

さっきまでカチンコチンだったのがレンジで1分半、早着替えのアイドルみたいだ。

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ナイフを入れると予想以上のみっちり感が伝わってくる。パンケーキにあるまじき比重だ
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2枚重ねのまま一口に食べるのが作法

味は言わずもがなジューシーでしっかり甘く、足し算の美味しさだ。

食べ慣れないあんことの組み合わせで、メープルシロップって黒蜜にそっくりだという発見もあった。サトウカエデとサトウキビ、種類は違えど同じ植物の汁だからだろうか。

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あんバターはしあわせの味

名残惜しくあんバターを味わっていると、今川焼きはパンケーキの上位互換なんじゃないかという気がしてくる。すくなくとも、今以上に晴れ舞台で活躍できる資質を持っている。

もっと今川焼きには旅をさせたい。

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2. ハワイアン今川焼き

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イチゴ、バナナ、ブルーベリー、スプレーホイップ、アーモンド、粉糖、今川焼×3

2010年代、パンケーキ屋が大行列だった覚えがある。そんな流行のきっかけの一つが2010年に日本初上陸したハワイ発の「Eggs ’n Things」だ。そびえ立つホイップクリームと色とりどりのトッピングが話題となり、原宿から全国に人気が広がった。スイーツ界のラーメン二郎的インパクトがあった。

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そこで今川焼きだ。隠されたあんこでさらなる甘味の一押しを加えたい。

ハワイと和菓子のコラボ。威勢のいいおやっさんがねじり鉢巻にアロハシャツを着てる姿を想像すれば、意外と合うんじゃないか。もしかして、日系人の多いハワイのどこかに実在したりしないだろうか。

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皿はアメリカの耐熱ガラスブランド、ファイヤーキングの"ジェーンレイ"というシリーズで、1940〜60年代に製造されたもの。古き良きアメリカ食器の代表格だ。
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陽気なトッピングに囲まれて、あんこの実直さが際立つ

味の方も、予想以上にあんこの風味は奥に引っ込み、イチゴやブルーベリーの弾ける甘酸っぱさが引き立つ。

英語話者に囲まれて自己主張できない日本人のようなイメージだが、そのぶん協調性のある味だ。

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縁の下の力持ちとして甘味を下支えしてくれるあんこが心強い。

あんこに比べるとトッピングの甘さは控えめなので、1人でも食べ切れる味だった。とはいえ誰かとシェアしたい楽しさだ。

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スプレーホイップはほとんど空気なので嘘みたいに淡泊に溶けてゆく

3. アメリカンな朝食×今川焼き

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スクランブルエッグ、ベーコン、ブロッコリー、バター、メープルシロップ、今川焼

アメリカでは、しょっぱい料理とパンケーキの組み合わせも定番だそうだ。ならば今川焼にだってチャンスはあるはず。

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皿とマグカップは1970〜80年代にアメリカ海軍で使われていた古いパイレックス製のもの

米軍のG.Iカットのたくましい青年たちが肩を並べて、忙しく朝食を食べている。食べ盛りの若者の胃袋を満たす分厚いパンケーキにナイフが入る。するとその断面からあんこが出てくるのだ。

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精悍な顔ぶれにも戸惑いの笑みがもれる。そんなイメージ。ちょっとかわいい。

初めての組み合わせを前にして胃がざわつき始めるが、こちらは平気な顔で食べてみよう。

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まずスクランブルエッグと今川焼を

これが意外とすんなり食べられて拍子抜けした。甘い厚焼き玉子の面影が見え隠れする味。

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村上春樹の小説の主人公が下半分だけコタツに入ってる感じだ

有塩バターが甘じょっぱく架け橋になってくれるからか、ベーコンとも合わないことはない。食感だけならむしろカリカリとモチモチがベストマッチともいえる。

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ブロッコリーと今川焼の食べ合わせは良くも悪くもなく、お互い興味がなさげ

もう一度食べようとは思わないけど、和洋折衷の文化のひとつとしてはありというか、こんな食の洋風化をはたしたパラレル日本があってもいいんじゃないか、と思った。

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アメリカンな朝食のコーヒーはポットから熱々が出てくるし、おかわりもできるはずだ

コーヒーがいつも以上に美味しかった。


今回はあんこにこだわったが、今時の今川焼きは中身がカスタードやチョコ、抹茶クリーム、おかず系にまで多様化している。

去年の1月頃、今川焼ブームが来て今年の流行語は「ガワる」になる!というニュースが一瞬だけ流れたが、それに関してはいまだ音沙汰なしだ。

しかし、そんな流言飛語に関わらず、今川焼はパンケーキに負けないポテンシャルを秘めている。

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途中であんこオムレツというのを思いついたけど、また遠い今度にしようと思う

 

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