特集 2022年12月21日

20年前に閉園した宝塚ファミリーランドの観覧車を追いかけて大分へ!

思い出の観覧車を見に行きました。乗りました。

そのむかし地元に遊園地があった。
そこにはちょっと変わった観覧車があり、ランドマークになっていた。

そこは20年前に閉園してしまったのだが、なんと観覧車は別の遊園地に移設されているのだという。
これは行かなくては!

1987年兵庫生まれ。会社員のかたわら、むだなものを作る活動をしています。難しい名字のせいで、家族が偽名で飲食店の予約をするのが悩みです。(動画インタビュー

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嗚呼、懐かしの宝塚ファミリーランド

兵庫県宝塚市、宝塚歌劇団で有名な街だが20年ほど前までは遊園地が併設されていた。

宝塚ファミリーランドである。

僕が生まれて初めて行った遊園地であり、夏休みには祖父母と遊びに行った思い出の遊園地だ。

実家に写真があった。ギリ昭和の1988年撮影。

関西にお住まいの人なら知っている人も多いかと思う。
関東で言うならとしまえんくらい、と言ったら大げさだろうか。知らんけど。
思い出の多い遊園地だったが、USJが大阪に出来たりして2003年に閉園の運びとなった。

宝塚歌劇団と同様に阪急電鉄が運営していて、阪急宝塚線と今津線からファミリーランドがよく見えた。
閉園当時は高校生で、阪急に乗って通学をしていたこともあり解体されるファミリーランドを見て寂しくなったものだ。

景色として特に目立っていた遊具はジェットコースター、そして特徴的な観覧車だった。

阪急のラガールカード(切符代わりのプリペイドカード。これも懐かしい!)にファミリーランドの景色が描かれたものがヤフオクにあったので即購入。

一般的な観覧車とはかなり異なっている。花の形をしていて「フラワーホイール」という名前だった。

パンフレットもヤフオクで買った。やばい、全部懐かしい。

まったく余談だが、地元の小中学生の間で最も人気のあったアトラクションといえばサファリだろう。

これがサファリ。

今のディズニーシーに「トイ・ストーリー・マニア!」という大人気アトラクションがある。
乗り物に乗って的を撃っていくシューティングゲームだ。

サファリはこれと全く同じ種類のアトラクションだった。
違うのは的がシマウマやライオンといった動物の人形で、銃がかわいいビームガンではなく猟銃というところだ。硬派であった。

普通はバン、バンと的が見えたら引き金を引くのだが、地元の子どもたちは鬼のような連射速度で銃を撃ち続けて的が見えたらその方向に向く、という戦法を取っていたため通常ではあり得ないハイスコアを残していた。
その代償として翌日は腕が筋肉痛になるのであった。

「宝塚ファミリーランド サファリ」で検索しても全然この話が出てこないので、思い出を残す意味でもどうしても書いておきたかったエピソードだ。

閑話休題。観覧車の話に戻ります。

フラワーホイールは写真だとこんな感じ。

二重式観覧車という方式になるらしい。
月が地球の周りを公転して、さらに地球も太陽の周りを公転するように、小さい観覧車が回転してさらに全体も回転する、という構造になっていた。

赤矢印が回りつつ、青矢印も回るのだ。
実家にあった写真にも観覧車が小さいが写っていた。

ファミリーランド、あったよな~と懐かしくWikipediaの項目を読んでいたら、驚くことが書いてあった。
この観覧車、今は大分にあるというのだ。

な、なんだってー!?

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別府に行かなくちゃ!

Wikipediaで引用されていたのは神戸新聞のこちらの記事だった。

16年前に閉園遊園地の観覧車、今どこに? 二つに分割されて第二の“人生”

ファミリーランドの閉園後、大阪市福島区の遊園施設総合メーカー「岡本製作所」が譲り受け、二層構造の観覧車を二つに分割した。
一つの行き先は、大分県別府市の遊園地「別府ラクテンチ」。04(平成16)年、「フラワーかんらん車」と名を変え、観覧車は九州の温泉地で動き始めた。
上記神戸新聞の記事より引用

なんと半分になって大分県の別府にある。これは見に行くしかないじゃないか。

ということでやってきました別府!駅名表示がかわいい。

九州に来ること自体が人生で2回目である。
別府が温泉地であることは知っているが、それ以上のことはまるでわからない。

高架下がいい感じの商店街になっていた。
山の方を見ると湯けむりが立ちのぼっていて驚く。これが日本有数の温泉地か……!

くだんの観覧車があるのは「ラクテンチ」という遊園地とのことだ。
徒歩でも20分くらいで行けるとのことなので、歩いて向かう。

見通しの良い道に出て、ラクテンチがある方向を見る。

おお、あの遠くに見えるのがラクテンチかな?
……あれ?もう観覧車が見えてないか?

早い!こっちの心の準備がまだ出来てないよ。

だんだんと近づいて期待に胸を膨らませて……という展開を想像していたら、かなり序盤での遭遇になった。
というか、ラクテンチは山の中腹にあるせいか遠くからでも目を凝らせば色々な場所から見えたのだ。

視線を上に向けるたびに、観覧車あるな~となる。

そうこうしているうちにラクテンチに到着!上に見えるはあの観覧車だ。
もらったガイドブックには「ゆりい・ぬりい・懐かしい!」とある。昭和レトロなゆるさを推しているようだ。
小さい子どもが楽しめるアトラクションがいっぱい、といった風情。

さあ、いよいよ観覧車に乗車するべくラクテンチに入園だ。

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観覧車の足元まで来た!

なんといっても目を引くのはチケット売り場と園内をつなぐケーブルカーだった。
サイトで「日本屈指の勾配を誇る」とうたうだけあって、斜度は30度もある。
急すぎて家族連れで来ていた女の子がこわくて泣いていた。弟は楽しそうだよ、頑張って!

しかし下から見るとすごい斜度。これは泣いても仕方ないかも。
そして駅にある鋼索鉄道事業免許がかっこいい。「運輸省」に歴史を感じる。

ラクテンチが出来たのは1929年とのことで、今年で創業93年。ものすごい老舗だ。
還暦を過ぎたと思われる夫婦がケーブルカーに乗ってきて、小学生のときにラクテンチに遊びに来たと思い出を語っていた。すげえ。

観覧車のあたりが終着駅になっているらしく、下界にあるチケット売り場の駅と同時にケーブルカーが発車しお互いが入れ替わるようになっている。
すれ違うときに案内のお姉さんが「はーい、手を振りましょう~!」とアナウンスした。ひとりで乗っていたけどめちゃくちゃ手を振りました。

そしてケーブルカーを降りたら、すぐ上にあったのだ。観覧車が。

これを見るために大分まで来たのだ!!
ああ……。
これだよこれ。
宝塚ファミリーランドに行っていた皆さん、見てますか?

実際に近くで目にするとやばい。けっこう涙腺にくる。
おれは子どものころにこれを見て、これに乗っていたのだ。

先の記事でもあったように半分に分割されているので、園内とは反対を向いており裏側しか見えない。
ファミリーランドではもう一対が反対側に付いていたのでどちらから見ても表側が見えるようになっていたのだが、これは仕方ない。

もちろん見ただけで終わるわけにはいかない。乗らなくては!
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観覧車にいよいよ乗車

ゴンドラが目の前に。うわー、ドキドキしてしまう。
扉を開けてもらう。乗るぞ!!!
乗った。……。

ゴンドラのドアが閉められた瞬間、むかし乗っていたときの記憶が一気によみがえってきた。

これは、やばい。

若干うるっと来ている。いや、若干ではなくかなり。
隣のゴンドラが見える景色も、こうだったよなと思い出させられる。

そう思っているうちに一周した。小さい円はすぐに回転してしまうのだ。

全体は回らないのかな、と思っていたら係のおじさんが「今度は上までいきまーす」と言った。

ガコンと大きな音がして、全体も回り始めた!

ゴンドラの中からだと動きがわかりづらいので、外から撮った様子をどうぞ。

 

かなりダイナミックな動きだ。

さっきとは比にならないほど高く上がってびびる。そうだ、こんな感じだったな……!
別府の街がこれでもかというくらい一望出来る。遠くには愛媛県の佐田岬も。

乗ってから15分後に戻ってきた。
ノスタルジーがすごい。自分の子どもと一緒に乗ったら泣いちゃうな、これ。

動画を撮っていたので見返したら、降りたあと「はー。」とすごい言っていた。感慨が声に出ている。

せっかくなので園内を一巡りした。名物の「あひるの競走」は、おじさんが名調子で面白い。
そしてここでも温泉が湧いていて、地獄蒸しが楽しめる。排水口から湯気が出ていてすごい。
レトロ感のあるジェットコースター。そしてその後ろに観覧車が。
再びケーブルカーに乗ってラクテンチをあとに。振り返ると観覧車が見える。

どこからでも観覧車は見えるのだ。
ここ別府でも、しっかりシンボルとして働いているじゃないか。

フラワーホイール、いやラクテンチのフラワーかんらん車、ありがとう。これは子どもと乗りに来なくては。

ところでフラワーホイールのもう半分は、なんとミャンマーにあるらしい。これも見に行かないといけないのだろうか。


ファミリーランドがまだ残ってたらな

久しぶりにあの観覧車に乗ることが出来てうれしかった。
同時に、宝塚ファミリーランドがなくならずにまだ残ってたらな、という気持ちにもなった。阪急の体力があれば、と思わずにはいられない。

自分の子どもと観覧車に乗っておきたかった。そしてサファリで思い切り高得点を出して翌日筋肉痛になるのだ。

通りがかったラクテンチ近くのアパートに、よくある旅のノートが置いてあった。
普段なら素通りしてしまうところなのだが、「いつまでもここにありますように」と思わず書いた。
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