特集 2020年6月16日

電子ペーパーを額装して飾るとやたらカッコいい

部屋のインテリアに電子ペーパーを

Kindleなどの電子書籍端末に使われている「電子ペーパー」。あれを額に入れて飾ってみたら、驚くほどカッコよくなったので見て欲しい。

1983年徳島県生まれ。大阪在住。エアコン配管観察家、特殊コレクタ。日常的すぎて誰も気にしないようなコトについて考えたり、誰も目を向けないようなモノを集めたりします。(動画インタビュー)

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電子ペーパーを飾るということ

「電子ペーパー」は、どちらかといえば地味な存在だ。その多くがモノクロだし、応答速度(画面切り替え)も遅い。液晶と比べると華やかさに欠けるイメージがある。

しかし一方、目が疲れにくかったり、電源がなくても画面表示を保持する特性があったりで、電子書籍端末などに重宝されている。秀才の影に隠れて目立たない無口キャラだけど、「あいつ、実はすごいやつだよな」とクラスで噂されるような存在である。

そんな飾り気のない、質実剛健な電子ペーパーに強く惹かれている。

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これは愛用している電子ペーパー端末「Kindle Oasis」。写真で表現しづらいのだけど、液晶にはない独特の質感があるのも特徴

一般的にはKindleみたいな完成品の形でしか目にすることのない電子ペーパーだが、実は単品でも買うことができる。最近は価格もこなれて、比較的安く手に入るようになってきた。

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そんなわけで買った。7.5インチのサイズで約6000円だった。このパネルは640x384ピクセルで、白黒以外にも「赤」が表示できる
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この通り電源はどこにもないけど、ちゃんと画面が表示できている。厚さは1mmほどしかない

表示を書き換えるには、Raspberry Piなどのマイコンが必要になる。なので、まだまだ電子工作趣味の人しか使わないパーツだけど、逆にちょっとした知識さえあれば簡単に使いこなすことができる。

この電子ペーパーで遊んでいると、ふと思い付いたことがあった。

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ここに何の変哲もない配管の写真があるじゃろ
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これを画像処理ソフトで、白と黒の二値画像に変換するじゃろ
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それを電子ペーパーに表示して、
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額に入れて飾る。これだ!
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近くで見るとカクカクしている。解像度の荒さ、そして電子ペーパーの質感も手伝って、謎の味わいが生まれた
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すごくいい。電子ペーパーは飾って楽しむものだったのだ

白と黒の二値しか使えないという不自由さ。それが逆にいい味を出している。

以前、レシートに印刷するデジカメを作った。思えばあれも、白と黒の二値画像である。リッチさとはほど遠い、枯れた技術のなかにこそ、新しい魅力があるのだと思い知った。

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煙突と電線のある町並み。遠目で鑑賞しても良いし、
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近くで見ると、また違ったディテールが楽しめる。この途切れ途切れのドットが最高である

これを便宜的に「デジタル額縁」と呼ぶことにする。面白いので、他にもいろいろと試してみた。

赤を入れて画面を引き締める

手持ちの電子ペーパーは、先に書いたとおり「赤」も表示できる。これを効果的に使わない手はない。

「赤いものとは何か?」と問われたならば、人は「コカコーラの自販機」と答えるだろう。私が真っ先に思い浮かんだのはそれだった。
 

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赤はなるべく「差し色としてさりげなく入れるのがいいだろう」という予想のもと、山奥にポツンとある自販機の写真をチョイス
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白黒二値化→自販機部分にだけ赤を乗せる→電子ペーパーに表示→額装という行程をたどると、この通りである。想像以上に良い雰囲気になってしまい、思わず真顔になる
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ポツンとたたずむコカコーラ自販機の悲哀さが、電子ペーパー上のドットで表現されている。木々の不穏さも相まって、版画のような味わいになった

同じ画像を紙に印刷して額に入れても、この微妙な風合いは生まれないだろう。あくまで、ディスプレイ上にデジタル画像を表示して額に飾るという、この回りくどさがポイントなのである。

さて「赤いものとはなにか?」と再び問われたならば、人は「コインパーキングの満車表示」と答えるだろう。異論は認めない。

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今度は切り絵のような雰囲気になった
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いびつなところがいい

もともとドット状LEDの集合だった「満」を、さらに細かなドットの集合へと分解し、それを電子ペーパー上に表示する。そして額に飾る。その行為に意味なんてないが、なぜだか見た目はカッコいい。それで十分である。

簡単に書き換えられる仕組み作り

話はそれるが、いちいち電子ペーパーを額から取り出して、書き換えて、また額に入れていると、それだけで日が暮れてしまう。なので、額に入れたままで表示を書き換えられる仕組みを作った。

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電子ペーパーを「ESP32」というマイコンに接続し、
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接続した状態のまま額に入れる
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見た目は不格好だが、裏ぶた部分にマイコンやらバッテリやらを貼り付けたなら、額縁部分は完成だ
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画像の送信には「M5Stack」というデバイスを使う。microSDカードに画像を入れて、M5Stackに挿入
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画像を選んでボタンを押すと、額縁に向かってWiFiでデータを送信する
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それを受けて、電子ペーパーの表示が書き換わる仕組みである

またまた話はそれるが、電子ペーパーの表示が書き換わる瞬間が異様にカッコいい。別に気を利かせてエフェクトをかけているわけではなく、書き換えに必要な動作がたまたまカッコいいのである。ぜひ動画でご覧いただきたい。

 

黒が表示されたあと、遅れて赤だけが点滅しながらじわじわ画面に焼き付いていく。Kindleでは一瞬で画面が書き換わるけれど、この電子ペーパーは書き換えに時間がかかるタイプなのだ。狙って作られたわけではない、素のクールさがここにある。

誤差拡散法でさらにいい感じを目指す

電子ペーパーに表示するためには、画像を白と黒の二値に変換する必要がある。ここまでやっていたのは、「ある一定以上の濃さがある画素を黒、そうでない画素を白にする」という、一番シンプルな二値化処理である。

そのほか、よく使われる二値化処理に「誤差拡散法(ディザ)」というのがある。これは画像の微妙な濃淡を、ドットの密度で表現する手法である。

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試しにこの画像を誤差拡散法で二値化してみる
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Photoshopなどの画像処理ソフトを使うと、簡単に誤差拡散法をかけられる。これを使うとどうなるかというと、
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白と黒の二値だけで、中間色のグレイっぽい色が表現できるようになった
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近くで見るとドットの集合なのに、こうして遠くから見るとちゃんとグレイに見える。でもちょっと地味?

単純に誤差拡散法をかけた画像を電子ペーパーに表示してみる。たしかに写真らしさは増すのだが、色がグレイになるため見た目は地味である。新聞を額に入れて飾ってる雰囲気に近い。

じゃあ、せっかくなので赤色も足してみよう。

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今度は赤・黒・白の三色を使って誤差拡散法をかけてみる。被写体は実家の犬だ
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するとどうでしょう。赤が入ることで茶色っぽい色が表現できるようになり、柴犬がなんとなくカラーに見えるようになった
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でも近くで見るとドットの集合体だ。電脳空間に転送され、解像度と色数が減らされたデジタル柴犬である
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消火栓もこの通り。色あせたカラー写真のようになった
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道路の部分にも微妙に赤が混じっているのが、カラーっぽく見える理由のようだ

最初の白と黒がクッキリ分かれた二値画像もオシャレだったが、誤差拡散法による微妙な色合いの表現も素敵である。なにより、遠くから見たときと、近くから見たときで印象が変わるのが面白い。一粒で二度おいしい誤差拡散法である。

あの名画も電子ペーパーで

最後に、赤が印象的なあの名画(パブリックドメイン)を表示してみた。

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そう、これである(葛飾北斎・富嶽三十六景より)
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おどろくほど何の違和感もなかった
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ひゃー、かっこいい!

表示デバイスである電子ペーパー。白黒二値(+今回の場合は赤)しか表示できない制限があることを逆手に取って、カッコよく画像を飾る方法を模索してみた。その結果、解像度が荒いことも手伝って、想像以上に味わい深いものができあがった。

しかもである。電子ペーパーなので、一度書き込むと紙と同じように電源不要で画像を表示できる。部屋のインテリアとの相性は抜群ではないか。また逆に、電源を搭載して一定時間ごとに画像を書き換える使い方でも面白そうだ。

同じように液晶を額縁に入れたとしても、おそらく大した驚きはないだろう。電子ペーパーには、感覚に訴えてくる妙な魅力があるのだ。Love! 電子ペーパー!


書にも合う電子ペーパー

写真、絵画とくれば、次は「書」だ。

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文字だけでなく赤色で落款が押せるので、かなり本物っぽくなった

「デジタル額縁」が世を席巻する未来も近い。

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