特集 2024年8月6日

コーヒーの味の説明がわからない

コーヒーの味の説明に「レッドカラント」「デーツ」などと書いてあることがある。よく分からないので、実際に食べてコーヒーの味と比べてみたい。

1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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コーヒーの味の説明が分からない

最近、コーヒーが好きになってきた。いろんなお店を回っているが、よく分からないことも多い。

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その一つがコーヒーの風味の説明だ。 

いろんなコーヒーを置いてあるところでは、お客さんに分かりやすいようにそれぞれの味の特徴を書いてくれたりする(フレーバーノートというらしい)。

たとえば「ビルベリーのような爽やかさ」「デーツのような奥深さ」と言葉を尽くして説明してくれるのだが、例えられている対象をそもそも知らないことが多い。

「ブラックカラント知ってますよね? あんな感じです!」と歩み寄ってくれているが、分からないなーと思いながら、雰囲気で選んでいる。

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コーヒーの味はどんな風に説明されているのか?

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お店によっては、説明を書いた紙をくれることがある。この紙のことを若い店員さんが「ストーリー」と平板なアクセントで言っていたのが印象に残っている。

コーヒーの味はどんなふうに説明されているのか? 家にあった紙を集めて傾向を探ることにした。

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文章派の紙たち

まず一つの派は、文章で言葉を尽くすタイプだ。

「まるで花のつぼみを丸ごと頬張っているかのような」「レーズンのような甘いとろとろのボディ」「マイヤーレモンのような柑橘の印象」

のように書いてある。

ただ、こちらの味リテラシーが低いため、実際にコーヒーを飲んでも、書いてある通りに感じることは少ないのが残念である。「まるで花のつぼみを丸ごと頬張っているかのようだなあ」といつか思いたい。

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箇条書き派

もう一つは、味の印象を3つ程度の箇条書きでまとめる派だ。

「トロピカルフルーツ、花の香り、カシス」「キウィ、トロピカルフルーツ、ココナッツ」

のように書いてある。

こちらは端的で分かりやすいが、たまに「ネロリ」「マイヤーレモン」など知らない言葉が書かれていて、分からん・・となったりする。

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(脈絡なく)吉祥寺の LIGHT UP COFFEE。うまい。
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分かろう

よく分からないので、分かりたい。

そのために、手持ちの紙にどんな言葉が書かれがちなのか集計してみることにした。その結果がこれだ。

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よく出てくる言葉たち

グラフにしてみたが、まったく見やすくない。改めて言葉で書き直してみた。家にあるカードでよく出てくる言葉トップ10である。

1. あんず
2. イチゴ
3. チョコレート
4. りんご
5. ラズベリー
6. 桃
7. はちみつ
8. ぶどう
9. バラ
10. 赤ワイン


なんと、予想と違ってほぼ知ってる言葉だった。すると多くの場合ではちゃんと馴染みのある言葉で説明してくれてるってことなのか。調べてみるものだ。

そこで観点を変えて、複数回出てくるが自分にとってなじみのない食べ物を選んでみることにした。こんな感じだ。

・レッドカラント
・ブラックカラント
・デーツ
・パッションフルーツ
・ラズベリー
・​​​​カカオニブ
・ココナッツ

こいつらはなんなのか。スーパー、果物店、百貨店などを回って探してみることにした。

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北池袋の WAVY COFFEE ROASTERS。うまい。
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パッションフルーツ

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コーヒーの味の説明で「華やかなパッションフルーツの香り」などと書かれたりするパッションフルーツ。

ふだん食べたことがないのでどんなものかと思っていたが、近所の果物屋でふつうに売っていた(5月ごろ)。外がしわしわで果物っぽくないし、持ってみると軽い。

切ってみて驚いた。

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ゴジラっぽい

そこそこ気持ち悪いので小さくしてみた。怪獣の口のようである。食べてみると、まず強烈に酸っぱい。そして後から少し甘い。いかにも熱帯の果物のような独特の強い香りがする。知ってるものだとマンゴーの風味を少し感じる。

いままで飲んだコーヒーで、こんな強烈な味のものはない。カードに書いてあるのは、あえていうなら・・というくらいのものなんだろうか?

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カカオニブ

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「カカオ」ではなく「カカオニブ」とわざわざ書かれることが多くて、どんなものかと思っていた。百貨店で量り売りしているものを買ってきた。

食べてみるとこれがうまいのなんの。「うめええ」と声に出る。高級なチョコレートのいい香りで、苦くて、ほんの少しだけ甘い。甘くないチョコレートが好きだと思っていたが、もうこれでいいなと思った。

翻ってコーヒーのことを思い起こすと、さすがにここまで強烈にチョコレートの香りのするものは飲んだことがない。ただ、チョコレートの香りを感じるコーヒーは確かにある。甘ければチョコレート、苦ければカカオニブ、と表現するというようなことなのかもしれない。

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パッションフルーツやカカオニブの例。さがみ野の REDPOISON。
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デーツ

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百貨店で量り売りしていたのを買ってきた。しわしわに乾いているが、干したわけではなくてそもそもこういうものらしい。

一粒がでかい。食べてみると、食感は干し柿だ。味は干し柿とドライプルーンの中間みたいな感じだ。

デーツはナツメヤシの実で、欧米では一般的な食べ物なのだそうだ。味を例えるときの基準となる「フレーバーホイール」というものがアメリカで作られたそうなのだが、それに倣うと日本ではなじみの薄い食べ物で例えることになる、という面もあるのかもしれない。

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『新版 THE COFFEE BOOK』(誠文堂新光社)27ページより

レッドカラント

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銀座のゲシャリーコーヒー

いままでもらった中で一番すごかったのがこの紙だ。フルカラーで焙煎度のグラフつき。風味の欄には「レッドカラント」と「リコリス」とあり、どちらも分からなくて面白かった(リコリスは彼岸花のことらしい。花の香りを書くのもよくある)。

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レッドカラント

百貨店で冷凍になっているものを買ってきた。

食べてみるとまず酸っぱい。その後、赤いベリー系の果物の香りがする。酸っぱいがレモンほどではなく、柔らかな甘みがある。

なるほどこうやって食べてみると、たとえば「酸っぱい果物」の枠にしても実際にはいろいろあるんだなと思った。

ココナッツ

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ココナッツも風味の表現としてよく見かける。量り売りのものを百貨店で買ってきた。裂きイカみたいだ。

食べてみると最初は味がしないが、だんだんココナッツカレーのあの香りを感じる。ほのかに甘い。東南アジアのお土産のココナッツのお菓子の味を思い出す。

こういうコーヒーあったかなあ。思い出せない。とりあえず引き出しに入れて次へ進む。

ラズベリー、ブルーベリー

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ミックスベリーとして売られているものを買った

ベリー系のものもよく例えられている。ラズベリー、ブルーベリー、ストロベリー。ヨーグルトの上にたまに乗ってるような気がするが、せっかくなので3つとも食べてみた。

ラズベリーは他よりも酸っぱくて香りがみずみずしい。苺はいつもの味で、全体的に甘い。ブルーベリーは皮が少し苦くて、ほのかに甘い。

ためしに、家にあるコーヒーで「ブルーベリー」と書いてあるやつを飲んで、味を比べてみた。

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花の香り、ブルーベリー、はちみつ、と書いてある。

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実際にコーヒーを飲んでみる。うまい。

ブルーベリーを食べてみる。・・・? 全然違う。

さっきブルーベリーを「ほのかな甘み」と書いたが、比べるとコーヒーはすこし酸っぱくて、ブルーベリーは「すごい甘み」だ。そこの差が違いすぎるので、その印象に引きづられてしまう。

甘さのことを忘れてそれ以外の風味だけを純粋に比べようとすると、少し丸みのある感じが強いていえば似ているかもしれない。むずかしい。

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代々木上原の acid coffee。うまい。ワイングラスにびびる。

結局よく分からないが、引き出しは増やしたい

レッドカラントとか言われてもぜんぜん分からん、と思って食べてみたが、コーヒーの味と似てるかどうかという点は分からなかった。まあそれは舌の問題なのでしょうがない。

ただ、珍しい果物があったら食べてみようかな、という気にはなった。たとえば、みかんとオレンジ、ぽんかんの違いはなんとなく分かる。そういう違いがあらゆる果物にきっとあるはずで、引き出しが増えること自体は面白そうだなと思った。

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