神戸人形は明治時代に生まれたものらしい
姫路の「日本玩具博物館」の館内に「神戸人形」を展示しているコーナーがあった。
日本玩具博物館の館長である井上重義さんが解説してくれたところによると、この「神戸人形」は明治時代の中頃に誕生したものだそう。神戸みやげとして、海外からの観光客にも人気があった。
現在確認されている最初の作者は神戸市長田区にある長田神社の参道で商店を営んでいた「長田の春さん」呼ばれている人物だとされる。その「長田の春さん」と同一人物だと考えられる野口百鬼堂という小道具師が創始者ということになっているそう。
その後、同様の人形を作る作者が複数現れたものの、小田太四郎という作り手が戦後に亡くなるとともに、神戸人形作りは途絶えてしまった。しかし、神戸人形の再興に取り組む人も現れ、消えかけては誰かが復興し、ということを現在に至るまで何度か繰り返してきたそうだ。
現在は神戸市在住の吉田太郎さんが日本玩具博物館館長 井上重義さんのアドバイスを受けて神戸人形を深く研究し制作・販売しているとのこと。
神戸人形は動かすとさらに面白い
井上館長によると、日本玩具博物館では明治時代から現在に至るまで約500点もの神戸人形を収集し、その一部を展示しているという。どれも貴重なものばかりだ。
神戸人形の大きな特徴の一つはからくりや仕掛けで動くということ。可動部分の多さには人形ごとに差があるが、動かない神戸人形はないという。
日本玩具博物館には、神戸人形の代表作の一つである「西瓜食い」を復元したものがあり、来館者が実際に動かして遊べるようになっている。動画を撮ったので見てください。
人形の台座の脇についたつまみを前後に動かすと、包丁で西瓜を切ってガパッと食べる。口の開く動きがなんとも気味悪くて可愛い。
他の人形が実際にどんな動きをするのか、全部見たくて仕方なくなる。
知れば知るほど気になってくる
井上館長によると、500点ほどのコレクションの中にはアメリカの収集家から引き取ったものが45点ある。その収集家が亡くなった後、遺族から日本玩具博物館宛てに連絡があったそう。
ちなみに、大正、昭和以降の神戸人形は一様に黒い色になる。
井上館長によると、海外からの観光客におみやげとして喜ばれるようになって、より、その好みに合わせて制作されるようになった。日本の工芸品といえば漆塗りの黒い色というイメージが流布していて、そこに合わせたところ、今まで以上に評判がいい。それで黒い色が定番化したのではないかという。
そう聞けば、神戸人形の多くがあえてちょっと不気味な造形をしていたり、お化けをモチーフにしたものが多く存在するのも、日本的なキッチュさを海外向けにデフォルメ化するためだったのではと思えてくる。
井上館長は「神戸人形には日本各地の郷土玩具とはまた違った独創性があります。神戸が誇る文化遺産だと思います」と語る。たしかに、ちょっと図抜けて変な人形だと思う。こんなものが局地的に、数人の職人の手によってだけ作られていたというのが面白い。
ぜひ日本玩具博物館に貴重な収集品を見に来たり、吉田太郎さんの著書や作品(吉田さんは「神戸人形 ウズモリ屋」という屋号で神戸人形を制作・販売している)をチェックしてみて欲しい。きっと神戸人形が好きになるはず。
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取材協力:
日本玩具博物館
神戸人形 ウズモリ屋