

最近では値段もこなれてきて小型のものであれば1万円くらいから空撮できるものが売られている。いろいろなサイトで空からのアングルの写真を見るたび、そろそろ欲しいなと思っていた。
今回、ひょんなことからドローンを自作することになったので報告したい。

前の記事:履き心地のいいパンツはノーパンを超えられるのか
> 個人サイト むかない安藤 Twitter


まずは今回の取り組みをまとめた動画をどうぞ


順を追って説明します
前述のように、最近ではあこがれのドローンもかなり手頃な価格になってきている。
ならばお金貯めて買えばいいじゃないか、と言われればその通りである。われわれも大人だ、貯金おろしてドローンを買おう。



今回はあえて自作してみたいと思う。
理由の一つはドローンを自作している人がまだ少ないから。インターネットで「ドローン、自作」で検索してほしい。ほとんどいないのがわかるだろう。これはきっとドローン自体が安くなったことで作る労力に見合わなくなったためだ。さすがはインターネットユーザー、賢明である。
しかし本当にそれでいいのか。
インターネットにない情報は補充するのがわれわれの使命ではないか。ここはあえて既成品に頼ることなく手作りで空撮をする夢を選びたい。



材料はホームセンターでそろえる
あれこれ悩む前に近所のホームセンターにやってきた。ほとんどの夢を現実のものにしてくれる場所、それがホームセンターである。ドローンとて例外ではないはずだ。
※今回は東急ハンズや模型店など一般的なクラフト系材料を扱うお店を、ドローンの専門店ではない、という意味合いで「ホームセンター」と呼んでいます。
一点だけ気になるのがカメラ部分である。たとえ飛んだとしてもきれいに着陸できるとは到底思えない自作ドローンに搭載できるカメラなんてそうそうないだろう。
そこでこの記事のコラボ相手であるJVCケンウッドにお願いして丈夫なカメラを貸してもらった。



だけどそこはせっかくの自作ドローンである。いかにも「ビデオカメラっす」という外観のカメラがぶら下がっていたほうが親しみわくし面白いに違いない。アクションカムはアクションする人しか買わないが、ビデオカメラはみんな普通に持っているだろうし。



さあ、役者は揃った。ドローンを作ろう。

この店でいちばんいいモーターをくれ



するとどうだろう



この時点で周りに「カメラ飛ばすので見に来て」と事前に予告した撮影日の3日前である。まだ3日あるなんて余裕だろう、そう思ってこの日は早く寝た。



ご存じのとおりモーターは電池につないでプロペラを回さなければ意味がない。次の日にはそのあたり、電源関連の材料を買いに出かけた。











で、この布、どうやって使うかというと



とはいえ絵に力が出ることは確かだ。試しに昨日作ったドローンの原型を置いてみよう。



ビジュアル的に満足したので実際的な作業を再開する。 今日は配線をしてモーターを回すのだ。あわよくばそのまま浮かす。



まだカメラは積んでいないものの、いちおうドローンの形にはなったと思う。ここまで来たらもう機能的には飛ぶんじゃないのか。



緊張のスイッチ・オン
これ、もしものすごい勢いで飛んでいったらどうなっちゃうんだろうか。昔あった、ひもを引っ張るとプロペラだけが飛んでいって天井に張り付いてしばらく落ちてこなかったおもちゃみたいになるんだろうか。
周りに注意しながらスイッチを入れた。



威勢のいいモーターの音がして顔に風を感じた。プロペラは明らかに下向きに風を発生させている。
しかし機体はぴくりとも浮かばない。
おかしい。
ちなみにどのくらいの浮力が発生しているのか、キッチンスケールでスイッチオンオフ時の重さの違いを測ってみた。
まずはプロペラを回さない状態で計測する。






つまり仮に機体とモーターを含めた重さが5グラム以下に抑えられた場合、それは浮くということである。
ほほう。
…ちょっと待ってくれ。



モーター4個で5グラムの浮力が得られました。浮力を追加するためにあと2個モーターを増やしたとします。モーターの重さはひとつ22グラムあります。さてどうなるでしょう。






モーターを増やすと浮力が増す
モーターを増やした分、発生する風の量も明らかに増えた。プロペラも元気いっぱい、触ると切れそうなくらいである。ガイヤが機体に飛べと囁いている。
いいぞ。で、浮力はどうだ。ええっと……6グラムか。
「6グラムか!!」
つまりモーターを2個増やしたことで浮力が1グラム強化されたわけだ。
待て。機体の重さがぐっと増したことはまあ予想どおりなので今頃嘆くこともないが、モーターの数を1.5倍に増やしたのになぜ1グラムしか浮力が変わらないのか。何がいけないのだ、日頃の行いか。

電圧を上げたらどうか



さあ、回れモーター、飛んでけドローン!
「ブゥゥゥゥゥーーーーーーン」



飛ばなかったしモーターの音で猫が起きてきたので静かにスイッチを切った。
電圧を3倍にした結果、浮力は7グラムに、つまりまた1グラム改善されていた。3倍じゃないのが悔しい。
手を打つごとに目に見えて結果が現れるのはうれしいが、1グラムずつは刻みすぎだろう。一つの対策を図るのに買い出し含め半日くらいかけているのだ、コストパフォーマンスがそうとうに低い。
このまま行くと100グラムの浮力を得る頃には本体が5キロ位になっているだろう。そんなの飛ぶもんか。

軽量化にすべてをかける
こうなったら優先すべきは軽量化である。とにかく1グラムでも軽くしたい。
というわけでまたホームセンターにやってきた。何度目だろうか。もうここに住みたいくらいである。










いまシステムとか給電とか、わかっている風に書いてみたのだが、要するにこの時点で飛んだとしても凧みたいに電線で地上とつながっていることが確定したわけだ。本格的に何がやりたいのかわからなくなってきた。



期待を込めてスイッチを入れてみよう。浮け!浮け!浮け!













もう意識としてそのくらいのレベルまで来ていた。
そして次の朝、起きたらドローンは












話は変わってこのカメラ、WiFi接続でスマホからズームや録画の指示が出せるのだ。まさにドローン向けのカメラである、飛べば。



「飛ばす」とみんなに断言した撮影時間まであと少しである。最後の悪あがきをしておきたい。

もう風船つけてやろう





「じゃあ浮力を最大限に出すためにぎりぎりまでヘリウム入れておきますね。ただ、少しでも尖ったものに当てると破裂しますから気を付けて。」と。
今回の企画、感電とか破裂とか、聞きなれない言葉がたくさん出てくる。



もしこれでカメラを浮かせられたら、僕は彼と同じ目線が得られるわけだ。子供の頃に見たあの人に僕はいまなろうとしているのか。



どうだ!!






念のため言っておくがこのカメラがとくべつ重いわけではなく、むしろ一般的なビデオカメラの中では軽い方だろう。ただ、宙に浮かすとなると話が変わるのだ。
この風船、浮力的に200グラムほどあるので、2個あれば重さ約350グラムのEverioも浮く計算なのだけれど、じつはこれ2個買うと安いドローンが買えてしまうくらいの金額なのだ(ヘリウムが高い)。それちょっと意味がわからないじゃない。そもそも風船で浮かすなら最初から2日かけてモーターにはんだ付けとかしていないし。
そうこうしている間に約束の撮影の時間がきた。撮影場所は海である。飛ばすからには広いところじゃないと危険だろうということで僕が指定したのだ。



いい天気の中、自作ドローンを飛ばす



家ではあれだけかっこよく見えた自作ドローンだが、外に出したとたん「あんた冗談言わないでよ!」という見た目になった。3日間寝食を共にした相手なのでそこそこつらい。
しかし落ち込んでいる暇はない。
今回は飛んでいる姿を動画で押さえておきたかったので、プープーテレビの大北くんに撮影をお願いした。もう来ている。






今回はコラボ企画なので広告代理店の方々も様子を見に来ているのだ。僕の試みが失敗するとコラボ相手のJVCケンウッドと気まずくなるのは僕よりまずこの人達が先だ。



なにはともあれ空撮の専門家である遠藤さんに僕の作ったホームセンタードローンを見てもらった。
どうでしょう、これ、飛ぶと思いますか?



遠藤「ホームセンターで買った材料なんでしょ?飛んだらすごいことだよ。」
遠藤さんは優しかった。






だがわかる、ひしひしと伝わってくる。だってさっき家でやってみて飛ばなかったもの。いくら撮影係と空撮専門家と広告代理店がぼくを遠巻きに見ていたとしても、その事実に揺らぎはないだろう。










「ブゥゥゥゥーーン」










バリカンがあったら頭を丸めていたと思う。久しぶりにこういうしびれる現場を経験した。経験値は上がったが寿命は確実に縮んだと思う。
僕のチャレンジはここでいったん終わる。



もしも、自作ドローンが空を飛んだら
これはホームセンターで売られているものでドローンを作る、そんな夢をかなえた一人の男のお話しです。























本物登場














飛ばないなりに達成感はありました

空撮のプロの遠藤さんも言うように、ホームセンターの材料で飛ぶ機体を作るのはすごいことなのかもしれない。すごいと言われると挑戦したくなる人がいるかもしれないが、そういう人はこの記事をもう一回最初から読んでみてください。






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