特集 2020年7月27日

地形地図を見ながら電車に乗ると、すごく、すごく楽しい

あの丘がこれ!あの谷がこれ!目の前の景色がわかるのだ。

すごく楽しい遊びを見つけた。

電車に乗りながら、地形地図を見るのだ。

首都圏の通勤電車でよい。自分が乗っている電車が山を貫き、谷を越えて走っているのが体感できる。

そして、平地に出て景色が広がるのも事前にわかる。

地形地図はいいガイドになってくれるのだ。
この記事の地図はすべて(アプリ「スーパー地形」 を利用しています)

※編集部より
この記事はデイリーポータルZの運営元であるイッツコムのサービスエリアの魅力を紹介するつもりで書いてます。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと新宿区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

前の記事:カスピ海ハーゲンダッツ(デジタルリマスター版)

> 個人サイト webやぎの目

縦と横を同時に楽しめる

電車の線路は上り下りがあまりないように敷設されている。谷では高架になるし、丘ではトンネルや切通(きりとおし)になる。

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山を削って通っているところが切通です

それがわかるのが地形地図である。僕が使っているのはiPhoneアプリの「スーパー地形」である。現在地の地形をペロッと出してくれるので最高だ。

例えば田園都市線 下り 溝の口から梶が谷のあいだのこの景色

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右側手前に崖。よく見ると奥にも丘がある

現在地をスーパー地形を見るとこうなっている。

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ふたつの丘のあいだに谷があり、谷の鼻先を電車が通っているのがわかる。(
アプリ「スーパー地形」 のキャプチャに赤いグラデーションと手書き文字を加筆)
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地図と景色を対応付けるとこうなる。この丘がこれ、この谷がここ

車窓からの景色の凹凸が地図の凹凸と重なるのだ。横からの景色と上からの景色を同時に楽しんでいる状態である。

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楽しさの図解
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移動しながらなので、その楽しさがずーっと続く

地図で現在地を表す矢印が崖に近づく。すると車窓にその崖が現れるのだ。予知能力かよ!?と思うがそれが地図というものだった。でもすごい。
自宅に帰ってからグーグルアースで復習してもまた堪らない。

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斜めから見てまた震える

こんなことになっていたのか!
これ通勤電車ですか?スーパービュー高津区(そんな電車ない)じゃないんですか?と聞きたいぐらいに興奮する。

次の景色がわかる

電車に乗りながら地形地図を見ることの楽しみはこれだけではない。次の展開が分かることも楽しい。

たとえばここ、さっきのいい崖のすぐ先(西)だ。

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電車のすぐ左側は丘、だがその先に低地がある
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車窓からの景色は地図が示す通り切通になっている。

でもこの先が低地になっているということは、左側に景色が見晴らせるポイントがやってくるということである。

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来るぞ来るぞ……来た!という興奮を味わうことができる。

来た!という瞬間にふわっとした高揚感を感じる。変な脳内物質が出ているのかもしれない。地形地図を持って電車に乗るのは報酬系がおかしくなってしまうぐらい楽しい。

目の前の起伏がなんなのか、次にどんな展開があるのかがわかるのだ。この世のガイドブックである(だからそれが地図)。
 

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田園都市線は地形を楽しむ路線である

地形地図を持つと楽しい路線として推したいのは東急田園都市線である。

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二子玉川から先、多摩丘陵のこちょこちょっと凹凸した土地を貫いているのだ(こちらはカシミール3Dを使用した地図 )

田園都市線は細かい丘、谷を次々と越えていく。ブランド住宅地を多く有し、ニュータウンの成功例と言われる多摩田園都市。だが、僕はプチ山岳電車としての楽しみ方を提唱したい。

地形地図を見ながら電車に乗っているときの興奮を味わえるように、車窓と地図をシンクロさせた動画を作った。

その撮影のようすはこうである。

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スマホの地図を画面キャプチャアプリで撮りつつ、外の景色も撮る(これは別の電車で撮った写真)

このビデオドラッグともいえる映像をもとに、車窓からの凹凸と地図の凹凸の対応がわかりやすい景色を選んだのでくどくど説明したい。

動画だけ先に見たい人はこちらからどうぞ。(このページ後半の動画にジャンプします)

 

これがあれ、あれがこれ

まずは単純に目の前の景色がわかりやすく地図にあらわれている地形である。

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切通の硬そうな法面は地図でもくっきり描かれている、いいね!
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地図に現れた垂直な高台は、周囲が住宅だった。2階にも玄関があるタイプの家だろう。(あざみ野~たまプラーザ)

地形に合わせて人々が暮らしているのが分かる。「人々よ…」と電車に乗っているだけで神のような視点になる。

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特徴的な道もまた楽しい。地図にうっすら見えるカーブした道も本物は立派な道路だ。
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鷺沼~たまプラーザ間、線路際に見える山も地図にきちんと描かれている

古墳だったらロイヤルストレートフラッシュだったのだが、それは欲張りすぎた。

秘密基地的な高架

山から飛び出すとすぐ高架というダイナミックな展開も田園都市線の醍醐味である。

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たとえば下り 梶が谷~宮崎台間。台地をトンネルでくぐったと思うと
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すぐ谷になり、地面がどんどん下がって線路は高架になってしまうのだ

ジェットコースターならば両手を上げるポイントである。宮崎台。グーグルアースでおさらいしておきましょう。

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中央奥の台地から飛び出した田園都市線は右下で高架になっている!(Data LDEO-Columbia,NSF,NOAA ©ZENRIN Data SIO, NOAA, U.S Navy, NGA, GEBCO Image Landsat / Copernics)

山から高架が出てくるなんて広島空港の誘導灯ぐらいかっこいい!

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僕にはこう見える。(広島空港の誘導灯 「広島空港の紅い橋を観に行く」(田村美葉)より)

たまプラーザ~あざみ野間も山から飛び出して広島空港入ってるので要チェックである。

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川もいい

田園都市線は谷を何度も越えるが、きちんと谷底に川がある場所は少ない。
たまプラーザ~あざみ野は山から谷に変化する景色が楽しめるが、ここはきっちり川があって田都のグランド・キャニオンと言っても過言ではない。

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谷のもとになった川も顔をのぞかせて僕を歓迎している

鶴見川、恩田川の周辺は宅地にしてはいけない市街化調整区域なので、川と野趣あふれる河原、遠くの宅地というメリハリが堪能できる。思わず降りて記事にしてしまったこともある。(「田園都市のすきまに行く」

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鶴見川は遠くにジャンクションも見えて松尾芭蕉がいたら一句詠むレベル
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蛇行する恩田川の遠くに高台の宅地が見える

ちなみに川が見えるのは、早渕川、恩田川、鶴見川しかないので田園都市線に乗ったらスマホでSNSなど見ている場合ではない。

人工物もまた楽しめる

車窓から見える人工物もまた我々の目を楽しませてくれる。
荏田~青葉台の鶴見川緑地はダイナミックな人工物が多くて思わず偶像崇拝しそうになる。

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江田駅のあたりで一瞬近づいてくる東名高速

東名高速と田園都市線は交差してみたり一瞬並走してみたり、全線通してラブコメのような関係である。

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一瞬すれ違った東名高速と入れ替わるように246と並走し(新たな恋人)、そして奥にはかっこいい変電所が現れる

新たな恋敵、変電所の出現に田園都市線は……!光とともに消えたりせずに島忠を横目、田園都市線最大の景勝地、鶴見川を越える。

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鶴見川を越えると高台が見える。

地図では高台の上に「文」という学校のマークが見える。車窓からの高台をよーく見ると

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学校らしき建物がちょびっと見えるのだ!!

世界は地図の通りだ。この地図さえあれば世の中のすべてが分かった気分になる。
この動画を見たライター伊藤さんは「この学校の校歌には『丘に抱かれて…』みたいな歌詞があるはずだ」と予想していた。

本当にそんな歌詞かどうかは検索してないのでわからない。僕らは正解を知りたいのではなく、想像するのが楽しいからだ。興奮しすぎてJ-POPの歌詞みたいになってしまった。

頑張って作った平地

このように起伏がはげしい多摩丘陵、まとまった平地が必要な車両基地は土地を削って作っていることがわかる。

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梶が谷駅~宮崎台のあいだ、梶が谷駅すぐ横に工事用の車両が並ぶ線路がある。

地図でみると台地のなかに掘りごたつのように削られている。工事、大変そうだ。

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宮前平~鷺沼間に平らな土地があったのでこれも…と思ったらフットサル場だった。

このフットサル場の手前にもジャンプ台のような車庫がある。地形地図の元になっている標高情報は人工物を除去するので、残念ながらそれはないことになっている。

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このでかいホームセンターみたいなものをグーグルアースで見ると…
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車庫なのだ。

ジャッキーチェンだったら飛んでいるだろう。そう周辺住民も思っているはずだ。

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デジタルな山が宅地

最後に山の見分け方だ。地形地図でカクカクっとしている山は宅地である。

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この8bitな斜面はまごうことなき宅地
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にゅるんとした斜面は里山

山を宅地にするには平らな土地にしなければならないので、斜面は階段状になっていく。それが地形地図ではデジタルに見えるのだ。
電車に乗っていても、近づいてくる丘が里山なのか宅地化された丘なのかが分かる。
ひとりで乗っていても誰かに言いたくてたまらない。

動画です

くどくど説明してきたが、実際の動画である。

下り電車、進行方向左側

 

下り電車、進行方向右側

 

車窓動画を見てわーわー言っている人たちの動画

動画を見て興奮している人たちの動画である。いきなりメタ展開で申し訳ない。

 


野生が見える

多摩田園都市は里山を開発して、かつて山だった土地にもきれいな家が並んでいる。

だが、そういう垢抜けた要素の下にはもともとの丘陵が残っていることに興奮する。一枚むいたら野生が現れるのだ。

その一枚はぐのが地形地図だ。

訂正シールが貼ってあるとつい剥がしてしまうようなものである。違う気もする。

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