足のつる人とビニールひもは忘れてください
カスピ海式を進めていったときの味の変化をグラフに追記した。カスピ海は懐かしいにつながっていたのだ。縁がないと思っていた中央アジアは懐かしい場所であった。
25%の懐かしい味にしなくても、50%ハーゲンダッツはふつうにうまい。2個食べてもカロリーはひとつ分(プラス牛乳のカロリー)だ。お得で健康的できっと地球にも優しいカスピ海ハーゲンダッツ。
最後にいうことではないが、僕はかなり甘いものが苦手なので、特殊な例かもしれません。
甘いものがたくさん食べられない。美味しいと思うのだが、ちょっとでいい。
チョコレートを買うと1週間は持つ。アイスクリームもそうだ。ハーゲンダッツのアイスは濃いいのでふたくちぐらいで満足してしまう。
ふたくち食べて、そこにまた牛乳を足して凍らせれば永遠に減らないハーゲンダッツができるんじゃないだろうか。カスピ海ヨーグルトの方式である。
カスピ海ハーゲンダッツだ。
※2008年9月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。
カスピ海ヨーグルトとはヨーグルトの種となる菌を牛乳に入れておくとできるものだそうだ。少なくなったらまた牛乳を足すとできるというヨーグルトの永久機関みたいなものである。素晴らしい。
しかし実物は食べたことも見たこともない。酔った同僚が家に帰れずに泊めてもらった人んちで見たと言っていた。人が見たと言ってるのを聞いただけである。僕とカスピ海ヨーグルトをつなぐ糸はとても細い。
しかしここから先はハーゲンダッツの話だ。
こどものころ、父親がケーキを一口だけ食べて残りは僕にくれたのを見て「きっと気を使っているのだろう」と思ったがそうではなかった。僕もそうなった。糖分は酒でとっているからじゅうぶんだ。
これを冷蔵庫で凍らせる。カスピ海はハーゲンダッツにも現れるだろうか。
野暮を承知で言ってしまうと、ヨーグルトは細菌の活動でできるもので、アイスとは別物である。アイスは増えない。正論だ。でもあれだけ味が濃かったら多少薄めてもうまいのではないか。本稿の狙いはそこである。
フットボール中に興奮してうっかりボール持って走ったら意外に面白かったのでそれラグビー。みたいなミラクルがおきないだろうか(でもあの話うそらしいよ)。
と言ってるあいだにアイスが凍った(ほんとは数時間経ってます)。
うまい。味が薄まってちょうどいい、ではなくて区別がつかない。困った。いや、困ることはないのだが、これはちょっとした発明ではないだろうか。とほほな結果になったほうが原稿が書きやすいのだが、これはほぼハーゲンダッツだ。成功だ。みんな、ハーゲンダッツは牛乳を混ぜると1割多く食べられるぞ。(傍点筆者、傍点じゃないけど)
スプーンをさしたときの感触も変わらない。言われなければ分からない、というレベルじゃなくて、言われても分からない。犬にしか聞こえない。
そして食べてて思ったのは僕にはまだ濃すぎるということだ。まだ薄めても平気そうだ。
1日に10%食べて、食べたぶんだけ牛乳を足す。それを繰り返すとどうなるだろう。継ぎ足し継ぎ足しで使っている秘伝のタレみたいな話である。違うのはタレを足さないのでどんどん薄くなるところだ。頭の悪い弟子が店を継ぐとこうなる(下記のグラフ参照)。
1週間後にハーゲンダッツは50%を切り、3週間後には10%を切る。それはどんな味だろうか。時間をかけて実験したいところだが、結果を知りたいがために最初から75%、50%、25%の比率のハーゲンダッツを作ってしまったことをお許し願いたい。
見た目わかりません
うまい。普通のハーゲンダッツよりもむしろ甘い気すらする(たぶん錯覚)。ハーゲンダッツだといわれればなにも疑わずに食べると思う。スプーンをさしたときの感触が100%ハーゲンダッツよりも若干柔らかいのが僕に分かる唯一の手がかりである。
25%薄められても分からないのもショックだ。大丈夫か、おれの舌。もっと薄いのはどうだろうか。
このあともどんどん薄くなる。薄くなるという展開は読んでいるみなさんの興味を惹いているのだろうか。
いよいよハーゲンダッツ50%である。毎日1割食べたとして一週間後のハーゲンダッツだ。半分ダッツ。
さすがにスプーンをさすとジャリっと音がする。アイスクリームではなくアイスクリンの感触である。食べてみると味が薄いことがわかる。
でも僕にはこれぐらいの味がちょうどいい。
これぐらいの甘さならばふたくちと言わずもっと食べられる。僕はハーゲンダッツをひとつ買えばふたつ食べられる星のもとに生まれていたのだ。なんたる幸運。キャンペーンみたいな星である。
僕同様、甘いものが苦手というかたはぜひ半分ダッツをお試しいただきたい。しかしハーゲンダッツの底力はすごい。半分に身体を切られても再生するプラナリアのようである。
そしてクォーターである。毎日10%ずつ食べたとして約2週間後に現れるハーゲンダッツだ。
「ハーゲンダッツ」ではなく「ッツ」ぐらいの比率である。
しまった。うまい。
うまいと思ってしまった。たしかにシャリシャリで薄味だけど、こどものころに駄菓子屋で食べたアイスはこんな味だった。河原で食べたからかもしれない。
これの4倍もの濃さのアイスを家で食べてたなんてプチプルもいいところである。このままいったらカルピスを原液で飲む日も近かったかもしれない。気付いてよかった。
ただ、ちょうど良く薄いためにこれを10%でおさえるのは難しく、パクパクと完食してしまった。濃いとちょっとだけだけど、薄ければたくさんだ。人生における幸福の総量は決まっている。幸福じゃなくて乳脂肪分だけど。
ちょっとずつ食べていけばハーゲンダッツは2週間は持つことがわかった。ただ、実際にやる場合は容器に雑菌が入ったりしないように注意してください。
もしくはやらないでください。
さて、なぜ25%ハーゲンダッツだけ河原での撮影なのだろうか。気になっているかたもいるかもしれない。
それは別の興味を検証するためだったのだ。まったくの余談になるのだがよければ紹介させてもらえないだろうか。
薬局の前に「ひざが痛い」と書いたのぼりが立っていたのだ。
これは薬局の主人がひざが痛いという意味ではなく、「ひざが痛い人いらっしゃい」という意味だろう。なぜならここは薬局だからだ。いい薬があるのだろう、そう思わせる。
しかしこれを僕が持っていたらどうだろうか。ひざが痛いことを派手に告白しているように見えないだろうか。話のつじつまは合っているが、そんなひと見たことがない。選挙に立候補しない限り人はのぼりでアピールしないからだ。
貼り紙だったらどうだろう。
この貼り紙が僕に貼ってあったらどうだろうか。この人、足がつるんだなと思うかもしれない。
小さく「ご相談下さい」と書いてあるのは無視することにする。小さいし、写真を家で写真を見返すまで気付かなかったからだ。「足のつる人」という貼り紙だと思っていた。
なぜこんな言い訳っぽい文章を書いているのか、似た貼り紙を自分で作ってしまったからである。
なにかのカテゴリ分けのようだ。テレビの健康番組で「足のつる人はこっち、そうでない人はこっちと集まってもらいました」みたいな絵である。薬局では広告だが、人では告白になる。
紙ではなく、Tシャツに書いてあったらもっと見えるかもしれない。
見えない。
これはただの「変わったTシャツを買った人」である。外国人向けのおみやげか、ユニクロの企業コラボTシャツにも見える。
このあとうっかりこのTシャツのままコンビニに行ってしまったのだが、別になにも言われなかったので足がつる人とは思われなかったのだと思う。
まさかカスピ海ハーゲンダッツがあれほどうまくいくとは思ってなかったので代わりのネタを探していたときの代物なのだ。
この写真を撮っているころ、自宅の冷蔵庫では着々とカスピ海ハーゲンダッツが固まっていたのだ。
いや、まだある。まだ余談があるのだ。もうひとつ気になることを検証していたのだ。河原で。寛容なかたは読み進めてください。
クモといっても雲じゃなくて蜘蛛である。虫のほうのクモだ。クモは尻から糸を出して、風で飛ばされる糸につながって空を飛ぶのだそうだ(バルーニングというらしい)。その範囲は広く、大陸から日本まで飛ぶこともあるらしい。
陸地にたどり着かずに海面に落ちるクモの無念さやいかばかりだろうか。
さておき、人間も長い糸をつければ空を飛べるのではないだろうか。
少なくとも荷造り用のひもで人は飛ばない。
人が糸で飛ばないことについて、スケールの問題だと編集部安藤さん(物理学科出身)が言っていた。飛んだらそれはそれでたいへんなのでこれはこの結果でいいだろう。
この写真を撮ったとき、カスピ海も失敗でこれメインで書くことになったらどうしようと心配していたのだが、カスピ海ハーゲンダッツがうまくいって本当によかった。
だけど載せなくてもいいこの企画を載せてしまうところが人間の業の深さである。ではまとめです。カスピ海ハーゲンダッツのまとめです。
カスピ海式を進めていったときの味の変化をグラフに追記した。カスピ海は懐かしいにつながっていたのだ。縁がないと思っていた中央アジアは懐かしい場所であった。
25%の懐かしい味にしなくても、50%ハーゲンダッツはふつうにうまい。2個食べてもカロリーはひとつ分(プラス牛乳のカロリー)だ。お得で健康的できっと地球にも優しいカスピ海ハーゲンダッツ。
最後にいうことではないが、僕はかなり甘いものが苦手なので、特殊な例かもしれません。
![]() |
||
▽デイリーポータルZトップへ | ||
![]() |
||
![]() |
▲デイリーポータルZトップへ | ![]() |