この景色がだんだん面白く感じるにようになります
その面白い景色とはこれである。
………。ネットを通じても伝わってないのが分かる。いや、ドラクエウォークを始める前にもうちょっとだけつきあって欲しい。わかりやすくするとこういうことである。
なんでこれをおもしろいと思うのだろう。逆だからではないだろうか。僕が考える一般的な景色はこうだ。
山の向こうにはまた別の町がある。ひと山こえるとまた別の町。だけどこの景色は逆なのだ。
しかも境界がくっきりしている。この景色がうまれた理由は偶然ではない。歴史と行政、東急が絡み合ってできている。
この景色が生まれた理由
この景色は東急が開発した多摩田園都市という住宅地にある。
東急が大山街道沿いに50年かけて開発した住宅地である。ほかのニュータウンが人口増に苦戦するなか、ここだけは計画人口を超えていまや62万人に達している。
だが、この多摩田園都市には切れ目があるのだ。
この切れ目こそ、冒頭に紹介した開発されてない地域である。ここだけ開発前の景色を残している。歩くだけでタイムトラベルだ。
なぜここが開発されなかったのか。市街化調整区域だからである。
市街化調整区域とは開発してはいけない場所のこと。ダメを”調整”というあたりに大人力を感じるが、行政が意図的に田園地帯を残そうとしているのだ。
斜線部分が市街化調整区域である。航空写真で見てもきちんとその部分だけが田畑になっている。勝手に家とか建てていないあたり法治国家である。
鶴見川流域が開発されなかったのはもともと農地として優秀だったからだそうだ。(川田武尊、髙野裕作、佐々木葉(2011)「多摩田園都市開発地域における都市空間構造変化の分析」より)
いくつもの事情がからまって50年かけてこの景色がうまれた。
おもしろがりを召喚
とはいえ、この景色のおもしろさをひとりで伝えられるか不安である。そこでライターの西村さんと大山さんを呼んだ。
冒頭の景色の写真を撮る30分ほど前、ふたりと合流していた。
話の流れで境界を感じる景色を冒頭に載せたが、今回の取材はこの2名プラス僕の3人で行っている。ではあらためて3人で歩いた様子を順番に記してゆこう。
開発されてない鶴見川流域は田園都市線市が尾駅が最寄り駅である。
だが10分ほど歩くと景色が一変する。市街化調整区域に入るのだ。
目の前の景色と遠くに見える景色のギャップがいとおかしである。
近景と遠景の差がおもしろい。市街化調整区域は公園ではなく、水田など本気の農地である。ちょうど稲穂がなっていた。
開発されてない土地は地名も古い
そして我々はまたおもしろいものを見つけた。
宅地開発は地名もモダンにするが、開発されてないところは地名もそのままなのが面白い。ウィキペディアによると、鉄町も上谷本町も明治以前の地名だった。周りは昭和50年代の地名である。ウヒョー。
このあとに行くもう一箇所の市街化調整区域にも造園業の店があった。周辺には大きな家が多いのでそこの庭に納品するのだろうか。
山に入ると住宅街
市街化調整区域の田畑を越えるとまた家が並ぶ市街化区域である。
道ひとつで景色が変わる大パノラマ。
山を宅地化するとは斜面をデジタルに階段状にするということである。
ただ、道路は階段だと車が通れないので斜面になる。
市街化調整区域マニア興奮!田奈 駅前がいきなり市街化調整区域!
さて、冒頭の地図に戻るが多摩田園都市にはもう一箇所切れ目がある。しかもそこには駅があるのだ。田奈駅である。
開発がすすんだ青葉台と長津田のあいだにも関わらず、駅からの景色はまさに市街化調整区域だった。
この地域では恩田川という川が市街化調整区域の境界になっている。川の向こう岸が崖になっているため、境界が分かりやすい。
まず地形や家があってそれを記録するのが地図だと思っていたが、その逆もあるのだ。
あのタワマンからの景色が見たい。市街化調整区域と市街化区域が手にとるようにわかるだろう。展望台がないか調べたが、なかった。家だからな。
街路樹が片側だけ
そしてここも反対側の境界がまた一興であった。
左側にも街路樹を植えると、樹をまもるための樹になってしまう。要らないということになったのだろう。
田奈の駅から離れて市街化調整区域をずんずん歩いた。
市街化調整区域には電気が通ってない。当たり前の事実だけどぐっとくる。きっとガスも通ってない。そこまでの手つかずな土地がこんな近くにあることにニヤニヤしてしまう。
電気も車も通らない市街化調整区域は犬の散歩で賑わっていた。犬だけじゃなくて若い男女がおしゃべりしたりしてて、あらゆる生き物にとってのサンクチュアリだった。
ちなみに犬は家で飼われている小型犬だ。昔の農家の広い庭に長いロープで繋がれていた怖い大型犬では、ない。
グーグルマップはけもの道を示す
最後に遠くに見えた丘の上の宅地に行ってみることにした。グーグルマップを見ると、丘の上の住宅地に一直線で登る道があった。
その道を行くことにしたのだが。
グーグルマップは人の動きで地図を作っているという話を聞いたことがある。このけもの道は地元の人が使っている道なのかもしれない。
用途地図通りにできた町にITがけもの道を記録しているのもまたおもしろい。いやあ、おもしろい。