特集 2023年10月28日

タイ産ジャパニーズウイスキー?「天道」を飲んでみる

タイ旅行中の友人から、「タイ産のジャパニーズウイスキーをお土産に買って帰るよ」と連絡があった。タイ産ジャパニーズウイスキー? あなたは一体何を言っているんだ。

しかし、帰国した友人に手渡されたそれは、確かに「タイ産ジャパニーズウイスキー」としか言いようのないものだった。その名も「天道」。果たしてどんな味がするのだろうか。

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの花屋。花を売った金で酒を買っている。

前の記事:ジン6種を飲み比べて、違いを感じてみた

> 個人サイト はてなブログ

筆者も一応酒関連の仕事をしているため、「タイ産ジャパニーズウイスキー」が「インド産神戸牛」くらい意味の通らないものだということをわかっている。その上で、どうだろう。このウイスキーのパッケージだ。

DSC_2347.jpg
縦書きの筆文字で「天道」。天道とは六道輪廻の中の最上部にある世界、神が住む場所の意味だそうだ。筆文字の漢字や和紙めいたテクスチャは明らかにジャパニーズウイスキーを意識している。

発売しているのは、バンコクから188km北にあるというTAWANDANG社。天道の他にもユニークな蒸留酒を何種か生産しているようだ。 

DSC_2351.jpg
箱を開けてみてさらに驚いた。ウイスキーが好きな方はピンとくるだろうが、ラベルがジャパニーズウイスキーの人気銘柄「白州」にそっくり。

product_hakushu.png

 SUNTORYの公式HPより、これが白州。天道のラベルと見比べてみてほしい。

DSC_2359.jpg
説明文によると、日本のものづくり精神を意識して造ったグレイン&モルトウイスキーとのこと。一般的なグレインウイスキーはトウモロコシ、ライ麦、小麦などで造られるが、驚くべきことに天道のグレインはジャスミンライス(細長い形をしたタイ米の一種)である。 ​​​​​​

ジャスミンライスでできた酒なんて飲んだことがない。一体どんな味がするのだろう。

いったん広告です
DSC_2363.jpg
テイスティンググラスに注いでみた。筆者がウイスキーを表現するボキャブラリーに乏しいせいもあるが、この香りをどう表現したらいいか悩ましい。ライトかつ、お煎餅のような香ばしい印象だが、他のウイスキーには感じたことのない不思議な香りがある。

よく熟成された上質なウイスキーが「重厚な、エレガントな」だとしたら、天童は「明るい、オープンマインドな」感じ。ふんわりとお花のような香りがするが、これがジャスミンライス由来なのだろうか?

自宅にあるウイスキーを片っ端から開けて香りを嗅ぎ比べてみたが、どれとも似ていなかった。天道の半分はジャスミンライスの樽熟成米焼酎だと考えると新進気鋭の酒としての面白さはある。

DSC_2368.jpg
お土産としてくれた友人に価格を訊くのは憚られたため、ネットで調べたところ360THBと書いている方がいた。現在のレートで1,500円ほどと考えると、なあんだ! 価格の割に見どころの多い、愉快な酒ではないか。

ストレートで飲んでみたが、想像していたほどの荒々しい刺激はない。白州のような柑橘香と燻製香は筆者には感じられないが、代わりにそこはかとないエキゾチックさがある。

ただ、これはGODIVAのチョコレートとポッキーを比べるようなものだ。白州は現在NAS(熟成年数表記のないもの)でも1万円オーバーで取引される(メーカー希望小売価格は4,500円)。贈答品や特別な日に開けるならそりゃあ高価な方がいいが、毎日飲むなら気軽な味わいの方が嬉しい。きっと比べることそのものがナンセンスだ。

DSC_2371.jpg
それならばと炭酸水で割ってみたが、やはりこれがおいしい。焼酎ハイボールとウイスキーハイボールのサラブレッドと考えると、なかなか飲んでいて楽しいものだ。全体的に癖がなく、万人を受け入れ、ずっと飲んでいられる軽やかさのある味。

「ジャスミンライスの蒸留酒」というだけでも珍しく、飲んでみる甲斐があるだろう。

タイに旅行される方、ぜひ「天道」を探してみてほしい(ちなみにタイは酒類の販売時間が決められているため、意外と入手に手間取ったと友人の談であった)。

 

▶︎天道の蒸留所、公式サイトはこちら

▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ