ゲーム機としてのリッチさを
このたび改めて入手したのがこちら。これを改造する記事である。
大人になり、当時のようにコソコソ隠れてゲームする必要がなくなった今、このテトリスに抱いた感想は、「ボタンが小さくて遊びにくいな…」であった。
プレイ風景。余談だが普通のテトリスと違って、ブロックを置いたり消したりする特殊ブロックも登場する
テーブルに落ちたゴマを指先にくっつけて拾ったことはないだろうか。このボタンはあれくらいのチマチマ感である。実際には3センチくらいの範囲に7個のゴマが落ちていて、それを高速で押していくことでブロックをそろえていく。
この操作性を改善するため、ちゃんとしたゲーム用のコントローラーを付けることにした。
いまでは4が活躍中のプレイステーション。その初代のコントローラーである。4と比べてもあまり形状が変わっておらず、当時からの完成度の高さがうかがえる名機である。
とりあえずばらす
まずはテトリスをバラして、中を確かめる。「おもちゃを手に入れたらとりあえず分解して中を調べる」、これが正しい工作ライターの姿勢だ。
衝撃だったのは、液晶部分だ。開けると同時にポロっと落ちてきた。本体基板にはんだ付けされているかと思いきや、置いてあるだけなのだ。
どうもこのスポンジの黒い部分が導電ゴムになっており、そこを通して基板から液晶に表示内容を送っているらしい。(導電ゴムと普通のシリコン?が縞模様に入っており、垂直方向にだけ電気を通すため、細かく配線したのと同じ効果がある)
「置くだけ」って、そんな実装法があるのか…!
続いて今回の本題。ボタン部分。
改造の前に、まずボタンが電気的にどう動作しているか、しくみをご説明しよう。
で、改造の話に戻る。問題は、ここにどうやってコントローラーをつなげるかだ。
プレステのコントローラーのボタンは、テトリスと違って直接本体のチップにつながっていない。こんなふうになっている。
プレステにおいては本体に行くまえに信号が変換されるため、単に「押された=通電」ではなくなってしまうのだ。
そのため、これをそのままテトリスに付けるとこうなる。
つまり、単にコントローラーをテトリスに直結しても、操作はできないのだ。
そこで、もういっそのことコントローラー内も配線しなおすことにした、
要はテトリスのボタンの端子を、コントローラーのボタンまで延長してくるのだ。電子工作と呼ぶにはかなり原始的だが、プレステ語を解析するよりはるかに簡単なので、これでいこう。
これでコントローラー側は完成だ。次に、これをテトリスに接続する。
電源を入れると、液晶がブロックで埋まった。テトリスでこの状態になったら10行くらい同時に消えて、すごい得点が舞い込むはずである。そうならないということは……壊れている!
再分解したり戻したりしながら小一時間なやんだ末、原因がわかった。コントローラー側だ。
さらにリッチに
作業中、部品箱からスピーカーが出てきたので、ついでにこちらもつけかえておいた。
試しに電源を入れてみたところ、スピーカーをつけかえたことで、キンキンして耳ざわりだった電子音が、少し柔らかくなった。明確な進歩だ!
やってみる
いざプレイ。操作性もアップしたし、前回より高得点が出るはずだ。ちなみに改造前は5400点。
グリップ付きのコントローラーはホールド感が秀逸で、ボタンもゴムのぐにゃっとした押し心地ではなく、しっかり押せるプラスチックボタン。感覚も広くて押しまちがえることもない。すごい高得点が狙えそう……!
と思ったが、結果は前回より悪い5300点だった。たまたまな、たまたま。
こんどは画面が気になる
ともあれ、キーホルダーのテトリスはその携帯性を犠牲にすることで、操作はしやすくなるわ、サウンドもよくなるわで、ゲーム機としては大幅な躍進を遂げたのだ!
しかしそうなってくると、こんどは据え置きゲーム機と比べてしまうようになる。プレイしていると画面の小ささや、残像の残りがちな液晶の貧弱さが気になってくるのであった……。
機能改善をしたことで、より競争相手がハイスペックなジャンルに移行してしまう。マーケティング理論とかでありそうな話である。
……とはいえおもちゃ改造の醍醐味はそんなところではなく、「俺が改造した世界で一台のおもちゃ」の存在こそが最大の満足感なのである。いやー今回も、充実した工作であった。