特集 2020年11月11日

この「昔ばなし」がどうかしている!?

お馴染みの話も、改めて読み直したら新発見がいっぱいありましたよ

ボクの子ども時代、『まんが日本昔ばなし』と『まんが世界昔ばなし』という昔ばなしアニメが放送されていました。

最近、その絵本バージョンを大量に手に入れたんですが、読んでみたら面白いやらどうかしているやら……。

ということで、有名な話からマイナーな話まで、知ってるようで知らない昔ばなしの、特に〝どうかしている〟ヤツを紹介したいと思います。

1975年群馬生まれ。ライター&イラストレーター。
犯罪者からアイドルちゃんまで興味の幅は広範囲。仕事のジャンルも幅が広過ぎて、他人に何の仕事をしている人なのか説明するのが非常に苦痛です。変なスポット、変なおっちゃんなど、どーしてこんなことに……というようなものに関する記事をよく書きます。(動画インタビュー)

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それぞれの話は様々なパターンで伝わっていますが、今回はあくまで『まんが日本昔ばなし』『まんが世界昔ばなし』バージョンでの〝どうかしている度〟で判定していきますよ。

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■「有名な話だけど、細かいところを覚えていなかったよ」部門

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『さいごの一葉』

いきなり「これ、昔ばなしか?」というセレクトですが……。

有名なオー・ヘンリーの短編小説が原作なので、教科書などで読んだことのある人も多いでしょう。

「病床から見えるツタの葉が全部落ちたら私も死ぬわ」的な、少々面倒くさいことを言ってる少女のため、絵描きが葉っぱの絵を描いて、それに励まされて少女の病気が治った……的な話なんですが。

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葉っぱの絵を描いたせいで絵描き、死んでたんだ……

なにそのつらい話。少女の病気が治ったことを素直に喜べないよ!

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『文福茶釜』

茶釜に化けたまま元に戻れなくなったタヌキが、芸を披露して大もうけしました……的な、愉快な話だという印象しかありませんでしたが。

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茶釜に化けっぱなしだったことが身体の負担になって、タヌキ死亡

かわいそう……。子ども時代にアニメ版を見ていたはずですが、どんな気持ちでこの結末を受け止めていたんでしょうか。

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『王さまの耳はろばの耳』

こちらも超・メジャーな童話ですが……。

そもそもは、王様の耳がロバ耳だと知ってしまった床屋が次々に虐殺される話だったんですね。

そのせいで国から床屋がいなくなってしまい、新人の床屋がかり出されて……というところからが、皆さんがよく知っている話です。

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こんな感じで首をちょん切られるのか……

これはアニメの演出の問題ですが、王様の部下が明らかにクレイジーなピエロだというのもしびれます。

最終的にロバ耳をカミングアウトした王様はみんなから好かれるんですけど、ダメでしょこんな王様受け入れちゃ。

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■「こんな話あったっけ?」部門

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『豆つぶころころ』

要は「おむすびころりん」の派生型で、かまどの下に豆つぶを落としてしまったら、その先にネズミの住処があって……みたいな話。

正直じいさんが宝物&赤いおべべをゲットして帰ってきたのを知った欲張りじいさんが案の定マネをするわけですが、結局、何もゲットできずに命からがら帰ってきます。

欲張りばあさんが、「じいさんが赤いおべべを持って帰ってくるんだから、こんな古い着物いらんわ」とばかりに着物を全部焼き払って全裸で待っているというオチが最高です。

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前のめりすぎる狸の皮算用
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『くらげの骨なし』

「浦島太郎」のアナザーストーリー的な話。

竜宮城の乙姫様が重い病に倒れてしまい、治すためには猿の生き肝が必要……ということで父親の竜王(そんな設定はじめて知った!)がカメに命じて猿を竜宮城におびき寄せます。

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竜宮城=りゅうおうのしろ、だったんですねぇ

で、浦島太郎同様、飲めや歌えやの大接待を繰り広げ、猿が寝込んだところで生き肝を抜こうとしたものの、クラゲの失態で猿を逃がしてしまうという話。

そのせいでクラゲは、激怒した竜王に骨を抜かれてしまうんですが、乙姫の病気はどうなったのかなど、だいぶ投げっぱなしで話は終わっています。

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■「ただただ悲しい話」部門

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『ナイチンゲールとばら』

 ナイチンゲール=看護婦というイメージが強いですが、本作では小鳥の名前です。

好きな少女に「赤いバラが欲しい」を言われた少年。ナイチンゲールは彼のために赤いバラを探し回りますが、他の色のバラしか見つからない。仕方ないのでバラのトゲに自分の心臓を突き刺して赤いバラを作るという……。

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この絵がまた痛々しい……

で、少年はそのバラを持って少女の元に行ったものの、「やっぱ宝石の方がいいわ」ということでバラは捨てられてしまいます。

……何、そのひどい話。

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『鐘をならしたきじ』

 親切な木こりに助けられたキジが、木こりを助けるため、鐘に体当たりして死ぬという話。

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生々しい死亡表現

結局死ぬんじゃ、助けてもらった意味、ある?

『ナイチンゲールとばら』はアイルランド、『鐘をならしたきじ』は朝鮮の話なんですが、キリスト教や儒教の思想が強い国では自己犠牲の精神が美徳とされるもんなんですかね?

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■「で、教訓はなに?」部門

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『古屋のもり』

 ある家を襲おうとした泥棒とオオカミが、「古屋のもり」というバケモノにおびえて逃げ出す話(実は古屋のもり=古い家の雨漏りのことなんですが)。

何だかんだで穴に落ちてしまった泥棒を助けるため、猿がしっぽをたらしたら、泥棒がそれをつかんで登ろうとしたため切れてしまうという。

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このせいでニホンザルの尻尾がなくなり、顔も赤くなったのです!?

悪いことをした泥棒&オオカミに罰が当たるなら分かりますけど、なぜか親切心を出した猿が一番痛い目に遭う「何それ!?」な話。

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『うさぎの悪ぢえ』

悪知恵のきくウサギが、他の動物たちを騙して色々と楽をするという話。

普通だと、最終的にウサギに罰が当たりそうなもんですが、最後までウサギの悪知恵が他の動物たちを上回って無事に逃げおおせちゃうんですよね。

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天罰、当たらず

単に他の動物たちがバカすぎるという気はするものの、神も仏もないのかという感じですよ。

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■『モースト・どうかしている・話』部門

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『たにし長者』

 最後に、もっともボクの心をつかんだこの話。

子どもがいない老夫婦が長年、水神様に願をかけていたら、願いかなってようやく妊娠! ……と思いきや、産まれたのはタニシだったというアバンギャルドな話。水神様よ、そんな願いのかなえ方、あるか?

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妊娠・出産を経てタニシが出てきた時の衝撃よ……

百歩譲って子どもがタニシだったとしても、それなりに成長するとか、しゃべるとかすれば育て甲斐もあるってもんですが、このタニシがウンともスンとも言わないし、大きくもならない。

で、20年後……。

20年!?

よく20年間も成長しないタニシを育て続けたな。たとえば、カブトムシの幼虫が20年間まったく成長しなかったら捨てるよ。

何だかんだで20年後にいきなりしゃべり出したタニシを面白がった長者様が娘を嫁にくれるという、クレイジーすぎる展開を見せます。

しゃべるようになったとはいえ、ビジュアルはタニシのままだよ!? 長者様、酔狂がすぎる。

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娘も断ろうよ……

最終的に、なぜかタニシが人間になるわけですが、20年以上タニシを育ててきたじいさん&ばあさん的には、タニシにもそれなりに思い入れがあるでしょうに。

必ずしも人間になったからハッピーという話でもなさそうだけどなぁ……。

■何だかんだで一番衝撃的だったのは……

色々と衝撃的な話を見てきましたが、今回、一番衝撃的だったのは、『まんが日本昔ばなし』と『まんが世界昔ばなし』はどうやら無関係だということ。

同シリーズなんだと思い込んでましたが、改めて調べてみたら、放送局も制作会社も別なんですよね。『世界』の方は『まんが日本昔ばなし』のヒットを受けて作られたパクリ……便乗作品だったんでしょうか!?

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よく見たら、本のサイズも違う!

そういう頭で見直してみると、『日本』の方はどの話でも絵柄やクオリティが安定していますが、『世界』にはかなりバラツキがあって、話によってはメチャクチャ実験的な絵柄のものもありました。

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『ウィリアム=テル』のクライマックス。すんごい絵柄です

たぶん原典はもっとエグイ

全体的に死亡率が高い『昔ばなし』シリーズですが、とはいってもこれはゴールデンタイムに放送されていたアニメの絵本版。本当にエグイ表現はだいぶ削られているはず。

地方のお土産屋さんに時々置かれている民話集みたいな本を読むと、『昔ばなし』絵本とは比較にならないほど〝どうかしている〟話が満載だったりするので、いずれそっちの方面も攻めてみたいところです。

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『まんが世界昔ばなし』はAmazonのprime videoに大量に入っているのでみんな見よう!(2020年11月現在)
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