特集 2021年9月30日

ポテトサラダは「ドイツの文化遺産」

世界的に愛されるじゃがいも料理、ポテトサラダ。その発祥地はドイツであると言われているだけあって、ドイツ人の間でも人気な食べ物である。

いや、人気なんてもんじゃない。ドイツ国民にとってポテトサラダはおふくろの味であり、ドイツの文化遺産として称える人もいるほど重要な料理なのだ。

そんなポテトサラダのドイツの食文化での立ち位置について調べてみた。

English version:
Potato Salad: Germany’s Unofficial Cultural Heritage

1986年東京生まれ。ベルリン在住のイラストレーター兼日英翻訳者。サウジアラビアに住んでいたことがある。好きなものは米と言語。

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ポテトサラダは哲学的なテーマ

ドイツの食文化と聞いて思い浮かべるのが、ビール、ソーセージ、そしてじゃがいもだ。

それも、そのはず。一年間で1人あたり60キロ近くのじゃがいもがドイツ国民によって食べられているのだ。1か月に換算すると約5キロ。結構な量である。

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1か月でこの巨大な袋2つ分を食べるのか。

ドイツには、このじゃがいもを使った料理が数え切れないほどあるが、どの地方でも共通して存在するが、ポテトサラダだ。

茹でたじゃがいもに調味料を足しただけのシンプルな料理。作りたてでも、冷まして味を染み込ませてもおいしい。

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スーパーにも何種類ものポテトサラダがズラッと並ぶ。

ポテトサラダは主食として登場することは少なく、大抵メインの付け合わせとして食べられる。そんな脇役的なポテトサラダだが、実はドイツ人にとって非常に思い入れの深い食べ物なのである。

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1人の友人によればドイツの「世界文化遺産」であるポテトサラダ。
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他の友人曰く、ポテトサラダは「非常に哲学的なテーマ」であるそう。

そんな奥の深いポテトサラダの世界に迫ってみたいと思う。

じゃがいも選びが肝心

私は、ドイツに来るまでは何も考えずにじゃがいもを買っていた。スーパーに置いてあるじゃがいもを適当に選び、適当に料理に使っていた。

ドイツに来て、すべてが変わった。

ドイツでは、植物品種庁によって認可されている200品種以上のじゃがいもが、でん粉の量によって3種類に分けられている。

  • Festkochend(フェストコッヘンド)は最もでん粉量が少なく、茹でても形が崩れない
  • Vorwiegend festkochend(フォーアヴィーゲント・フェストコッヘンド)は比較的煮崩れしにくい万能なタイプ
  • Mehligkochend(メーリッヒコッヘンド)はでん粉含有率が最も高く、ホクホクしていて煮崩れしやすい
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スーパーに置いてあるような袋入りのじゃがいもは、この基準によって色分けされていることも。青は煮崩れやすい、赤は煮崩れにくい、緑は煮崩れないじゃがいもだ。
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こちらのお店では、手書きの札がじゃがいもの煮崩れ度を教えてくれる。

煮崩れしない品種はポテトサラダやジャーマンポテト、煮崩れしにくいものはフライドポテトやポテトパンケーキ、煮崩れしやすいものはスープやマッシュポテトなどと、用途がきっちり分かれている。

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ドイツ語のレシピでは、常にじゃがいもの種類が指定されている。こんな大事なこと、なんで語学学校で教えてくれなかったんだろう。

とにかく、この3種類の違いと用途を把握し、簡単なポテトトークができるようになるとドイツ人に一目置かれると思うので、ドイツに行ったら試して欲しい。

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逆にこの種類分けに慣れてしまうと、日本に帰った時にどの用途にどのじゃがいもを買えばいいのか分からず、困るという変な現象が起こる。

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ポテトサラダは安心

さて、ポテトサラダの話に戻る。

ポテトサラダは、決して主役級の料理ではない。肉料理などのメインの付け合わせとして出されることが多い。

しかし、ポテトサラダはドイツ人に安心感をもたらす食べ物なのだと思う。

ポテトサラダが嫌いな人もあまりいないし、ポテトサラダさえあればお腹がいっぱいになる。全ての答えはポテトサラダにあるのだ。

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そんな理由からか、人が集まる場所には必ずと言って良いほどポテトサラダがある。バーベキューといえばポテトサラダだし、クリスマスイブにポテトサラダを食べる家庭も多い。

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夫の実家でも、クリスマスイブにポテトサラダは欠かせない。

私たちの結婚式でも、ドイツ人の義母に大量のポテトサラダを作ってもらった。

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さすがにポテトサラダだけの写真は見つからなかったが、ポテトサラダ達が写り込んでいる写真が一枚だけあった。

聞いてみると、合計7〜8キロほどのじゃがいもを使ったらしい。この日のために一日中じゃがいもを茹でていてくれたのかと思うと、とても嬉しい。

脇役ながら、ポテトサラダは人生の節目となるイベントをひっそりと支えているのだ。

ポテトサラダはおふくろの味

ポテトサラダは、ドイツ全国に共通するおふくろの味でもある。

知り合いや友人に手当たり次第ポテトサラダのレシピについて聞いてみたところ、「ママのレシピだと……」や「母親に確認する」などと、ママの出番が多かった。

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お母さんのレシピを教えてくれと頼んだわけでもないのだが、どの会話にも漏れなくママが登場する。すごい。

そして興味深かったのは、誰もが「うちはごく普通のレシピだけど」とか「典型的なポテトサラダだよ」などといいながら、1つとして同じレシピがなかったことだ。

一人ひとりが当たり前だと信じている「ママのポテトサラダ」があまりにも違うので、家庭の外で出会うポテトサラダにカルチャーショックを受けることもあるらしい。

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日本でも地方によってお味噌汁の具が全く違うように、ドイツでも地方によってポテトサラダは全く別物であるようだ。

ポテトサラダのバラエティの広さ

もちろん、レシピに共通点はいくつかあった。

ポテトサラダに使うじゃがいもの種類に関しては、圧倒的多数の人が煮崩れない品種を使うと答えた。茹でても形と歯応えが残ることが大事だそうだ。

そして、じゃがいもは皮を剥いたら潰さず、切るというのも共通していた。なかでも、輪切りにすると答えた人が多かった。このあたりまでは大体皆同じだった。

だが、ここでまず最初の大きな分かれ道に差し掛かる。

ドイツ式のポテトサラダの味付けは、大きく分けてマヨネーズ派とお酢派の2つに分かれる。

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ドイツの北半分はマヨネーズ派、南半分はお酢派とざっくり分けてしまうこともできるが、なにしろ世界遺跡レベルのテーマなので、適当な発言は禁物だ。なので今回はあえて細かい地域性はあまり追求しなかった。

集まったマヨネーズのポテトサラダとお酢ベースのポテトサラダのレシピに登場した材料を図にしてみると、こんな感じになった。

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お酢ベースのポテトサラダにはブイヨンをお湯で溶いたものやだし汁、そして玉ねぎや油を足すレシピが多かった。

その点、マヨネーズベースのポテトサラダはリンゴやピクルスが入っているものが多く、そのほかの野菜も使われていることがあった。

また他にも、個人的なこだわりが色々あって面白かった。

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それ以外にも、地域的な違いが見えてきたと思ったら、ベルリン市内だけでもお酢とマヨネーズ派で分かれていたり、なんだか大変な世界に踏み入れてしまったようだ。

これだけ調べて唯一分かったことは、ポテトサラダはただ事ではない、ということだった。


まとめ

今回、軽い気持ちで友人や知り合いにポテトサラダについて聞いてみたが、知れば知るほど奥が深く、原稿を書きながら「こんな上っ面を撫でたにすぎない文章はポテトサラダに失礼ではないか」という気持ちになった。

もう少し、ポテトサラダの世界に深入りしてみようかな、と思う。

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