ちょっと聞いてよ 2023年5月1日

授与は年に1度だけ!「魔除け」で江戸時代大人気だった「能勢の黒札」をいただく

江戸時代に有名だった、通称「能勢の黒札」という護符がある。
妙見山別院にある境内の鴎稲荷大明神で、毎年4月15日の祭礼(現在は15日に近い日曜日)の日のみ授与されるという特別感のある護符で、江戸時代は黒札を手に入れようと朝早くから全国から集まった人たちで行列ができていた程だったらしい。

そして、現在も祭礼日限定でその札の授与を行っている――。
そのことを知ったのはちょうど週末が年1の祭礼日という頃だった。これは行ってみるしかない。

生まれも育ちも横浜。大人げない大人を目指し、日夜くだらないことを考えています。ちぷたそ名義でも活動しています。(動画インタビュー

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能勢妙見山は大阪の妙見山の山上にある寺院だが、今回行く「妙見山別院」は能勢妙見山唯一の東京別院だ。東京・本所吾妻橋から歩いて10分くらいのところにある。

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妙見山別院

というわけで妙見山別院にやってきた。なお、ここで祀られている「妙見大菩薩」とは、北極星(または北斗七星)を神格化した仏さまのことだ。

境内に入ると、境内の社のとびらが開いていた。

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向かって正面が本堂、右側は水神堂

能勢の黒札を授与しているのは、境内の「鴎稲荷大明神」だ。まずはお参りをする。

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鴎稲荷大明神

なんでも能勢の黒札は、江戸時代は特に「狐憑きを落とす」と考えられ、信仰されていたとという。

稲荷の御使いは狐である。でも、そこで授与される護符は狐憑きを落とすと信じられていた。少し不思議な気もするが、ひとくちに「狐」といっても神さまの御使いと憑き物では全然別物なんだろう。

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こちらは神使の狐さん

実際、能勢の黒札は狐憑きのみに効果があるわけではなく、「いかなる疫病をも免るる」(鴎稲荷大善神縁起より)と考えられていた護符だ。江戸時代の人々が特に関心があり、なおかつ期待されていた効果が「狐憑きを落とす」ということだったのかもしれない。

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「能勢の黒札」をいただく

そしてついにいただいた。これが江戸時代の人々が求めた、能勢の黒札である。

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能勢の黒札(800円)

外袋には九字と「除魔黒札」の文字。てのひらにすっぽり収まるサイズ感の小さい護符だけど、なんかとにかくなにかに効きそう感がある。これから身に着けておこう。

なお、参拝している時も、古い黒札を返して新しい黒札を授与してもらっている方々を見かけた。

妙見山別院の見どころ・勝海舟の像

妙見山別院の他の見どころも紹介しておこう。境内には勝海舟の胸像があるぞ! 

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勝海舟翁之像

勝海舟は幼少の頃に野良犬に襲われて重症になったことがある。その時に父小吉が妙見堂で水垢離をして祈ったところ平癒したことから、親子で信仰していたのだそうだ。

神社仏閣の胸像って、実は地元の功労者とか地元を開拓した偉い人みたいな「その土地以外の人からすると知らん人」パターンが案外多くて、久しぶりに大物だったからうれしくなっちゃった!

妙見山別院の見どころ・能勢氏の家紋が十字架っぽい

また、能勢妙見山の開基は、戦国時代から江戸時代にかけて活躍した能勢頼次公だ。境内では能勢氏の家紋である切竹矢筈十字(きりたけやはずじゅうじ)をあちらこちらで見ることができる。

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切竹矢筈十字がいっぱいコレクション

めっちゃ十字架っぽい……でも北極星信仰と聞くと星のようにも見えるし、切竹矢筈十字の由来が気になりすぎる。実際、頼次公が日蓮宗を信仰する前のキリスト教が禁止されるより以前、キリスト教を信仰していたという話もあるらしい。

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縁起を留め置く文鎮も天使……?

こじんまりとした境内に、いろいろな歴史が詰まってて素敵な寺院だった! なお、東京別院では4月15日に近い日曜日が例祭日だ。

参詣してみると、きっと新たな発見や歴史のロマンに出会えるはずだ。

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