会場は練馬の公民館
モンゴル料理パーティーを主催するのは、モンゴル語の通訳・翻訳業などをされているITAKOさん。学生時代に東洋史の講義で興味を持って以来のモンゴル好きで、モンゴル国と内モンゴルに留学した経験をお持ちだ。
パーティーは2009年ごろから毎年のように開いていたが、今回はここ数年の中断を経て久しぶりの開催。みんな心待ちにしていたらしく、今回も全部で50人ほどが集まった。そのうち半分がモンゴル出身の方、あとの半分はモンゴル好きである。
会場は、練馬区内の公民館。よく知らなかったけど、公民館って調理室があったりするんですね。
畑と住宅街に囲まれた公民館。これから、ここがモンゴルになります!
いきなり羊が登場!
公民館に到着すると、ご挨拶もほどほどに、いきなり今日のメイン・羊の登場である。これからやってくる参加者もまだまだいそうだが、みんな待ちきれないのだ。
解体を担当するのは、遊牧地域出身だというモンゴル人のおじさん。「肉の解体なんて久しぶりだよ」と謙遜しているが、やっぱり手際がいい。みんなが見守るなか、羊はどんどん解体されていく。
どの部位が美味しいのか聞いてみると、真ん中あたりのアバラ骨を指さしながら「この2本のまわりがうまい」と笑う。さすが、われわれとは肉に対する解像度がちがう。
羊の匂いで、公民館がモンゴルになる
解体を見守っているあいだ、調理室には羊の脂の独特な匂いが漂っている。
これがもう、笑っちゃうくらいモンゴルの香りだ。
海外生活が長い人が「日本は空港に着いた瞬間から醤油の匂いがする」と言ったりするけど、その話の醤油を羊に置き換えるとモンゴルだ。空港はともかく、少なくとも飲食店は全部この匂いで満たされている。生の羊肉からも、その匂いが漂ってくるのだ。
匂いと記憶は深く結びついているというけど、やっぱり羊の匂いをかぐと、モンゴルの記憶がセットで浮かんでくる。
そういえばモンゴルで羊の解体を見せてもらったときにも思ったけど、羊としての形を保っているあいだは、なんとなく悪いことをしているような気がしてしまう。
しかし、バラバラになっていくと次第に見慣れた肉の姿に見えてきて、「美味しそう」の気持ちが強くなってきますね。
そんなことを言っていたら、
「羊はオオカミに怯えていたんだけど、最後には……飼い主に食べられちゃうんですよ!」
と、モンゴリアンジョークも飛び出した。たしかに!