あぶなく忘れるところだった平成を思い出す 2019年5月4日

ルーズソックスとソックタッチ、探したら生きていた

150センチルーズが、ご存命です!

90年代に爆発的ヒットを記録した、ルーズソックスのど真ん中世代である。あのころ、女子高生という女子高生の足元が、分厚い布地に覆われていた。

だが、いつからかルーズを見る機会は減り、紺色のハイソックス人口が増え、今では随分と短めのソックスが主流のようだ。

でも、もう一度履いてみたいじゃないか。探したら、分厚いやつが生きていました。ソックタッチも。

※この記事は2019年のゴールデンウィークとくべつ企画のうちの1本です。

1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。飲食物全般がだいたい好きだという、ざっくりとした見解で生きています。とくに好きなのはカレー。(動画インタビュー)

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あんなに特定の靴下を愛すことはもうないかもしれない

令和元年の今、知らない人もいるだろうか。ルーズソックスとは、くしゃくしゃにして履く、ボリューム感たっぷりの靴下だ。わたしも高校3年間、毎日履いていた。

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ギャルでなくとも履いていた。ボケた写真だが、足元のボリュームを感じ取ってほしい

ルーズソックス、とひとくちに言っても様々な種類があった。なかでも、当時よく履かれたのがアメリカのブランド「E.G.スミス」である。

特に1600円のやつ。靴下としては高額だ。松屋の牛めし(並盛320円)が5杯も食べられる値段と気づき、書きながら震えている。

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ボリューミーな牛カツを食べられる値段でもある

だが当時は、足元をいかにボリューミーに見せるかこそが我々の正義だった。

破れても、他の靴下と縫い合わせて履き、学校に禁止されそうになった時には、勇気を振り絞って校長先生に手紙を書いた。あんなにも狂おしく特定の靴下を愛すことは、もうないんじゃないだろうか。

もう一度会いたい。かつてコギャルの聖地といわれた街、渋谷へ向かった。

置いてある。150センチもある!

まずはここだろうと、おそるおそる渋谷109に向かったところ……

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あれ、いつもと何かがちがう
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ロゴだ。ロゴが変わった!!

ロゴだけじゃない。今や109は、店のラインナップも客層も、ギャルっぽさがほぼない。時代が変わればビルも変わるんだなぁ……って大丈夫か。ルーズはあるのか。

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ありました。しかもラインナップが充実

「E.G.スミス」はなかったが、ブーム当時に時折見かけた日本製ブランド「CUTE&STREET」のものがドカッと陳列されていた。 

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ちなみに「CUTE&STREET」のロゴはこちら。ど真ん中世代は見覚えあるんじゃないだろうか

でも待って。誰が履いているんだろう。さっきすれ違った女子高生の靴下はもっとずっと短かったのだ。 

 

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あのう、どんな人が買っていくのでしょうか? 
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女子高生が「ディズニーランドに行く時に履くから」と言って買って行ったりしますよ。
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ええっ。ねずみの国へこれを……!
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今の女子高生は、日常的にではなく、学祭とか、お出かけとか、特別な時に履くみたいです。3人くらいで来て、みんなでお揃いで買って行ったりしますよ!
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ほおお、毎日は履かないのですね。ちなみにほかの用途で買う人はいないのでしょうか?
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そうですね。原色系の派手なファッションに合わせる人もいますね。厚底や、ドクターマーチンの靴に合わせたりして。

……にしても、ちょっと待ってほしい。目の前に150センチのルーズがある。この長さは初めて見た。 

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平成を振り返るつもりが、新世界に出会ってしまった
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150センチがあるんですね……。

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ありますよ! 過去には最大2メートルのもあったみたいです。

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ひー! 身長より長い!

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150センチ、かわいいですよ。ボリュームいっぱいのルーズはかわいいです!

店員さんの推しもあって、150センチを購入した。冬場にはマフラーとしても使えそうだ。

「E.G.スミス」は横浜で生きていた

とはいえ、やっぱり当時の王者「E.G.スミス」も気になるのだ。渋谷という渋谷を探したが、見つからない。

ええい。もう、メーカーに聞いてしまえ。「E.G.スミス」を取り扱う会社、ウィックスに電話した。

 

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「E.G.スミス」のルーズソックスはもう手に入らないのでしょうか? 街で探したんですが、見つからなくて。

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あれは、正式には「ルーズソックス」ではなく「ブーツソックス(Boot Sock)」という名前です。

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(知らなかった!)

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ブーツソックスは、「E.G.スミス」が、アウトドア用の靴下を、ファッションとして楽しめるよう、綿素材でつくったことに始まります。アメリカでは、約100年選手の特殊な編み機で作られていました。

ですが今はもうその編み機は、老朽化が進み、故障も多くなったため、破棄されてしまっています。近年では、日本国内にある類似の編み機を使い、特別注文で作っていましたが、弊社ではもう生産していません。

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ということは、もう手に入らないのでしょうか……?

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いいえ。75センチのソックスは、まだ在庫があります。横浜ビブレ1階の「ジョイ」さんには、置いてあるんじゃないでしょうか。今月もオーダーが入っていましたので。

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というわけで横浜ビブレに来てみた
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……ら、あった!当時とはタグの色が違うのだが「E.G.スミス」だ
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おお……「E.G.スミス」だ…… やっと会えたね……
 
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うちはもうずっと置いていますよ。ルーズを履いた女子高生もいらっしゃいますし、男性から問い合わせが入ることもあります。

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え! 自分が履く用に、ですか?

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そうです。ひざに負担をかけたくない時や、スノースポーツをする時、ズボンの下に履いたりすることもあるみたいです。

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意外な実用性……!

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というわけで貴重な靴下を手に入れた。足の裏に「love」って書いてある

なお75センチの靴下は、当時我々が「1600円」と呼んでいたものだ。懐かしさに、心がむせび泣いています。

履き比べます

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左「CUTE&STREET」の150センチ。右「E.G.スミス」の1600円
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編み目はほぼ一緒に見える

「CUTE&STREET」は、全盛期当時、「E.G.スミス」と編み目が違っていたと記憶している。でも今のやつはほぼ一緒。長さ以外、見分けがつかない。 

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150センチ、長い

ここで急に、履く前に靴下を、めちゃくちゃに伸ばしてから履いた記憶が蘇ってきた。

ご存知だろうか。女子高生たちは当時、靴下を伸ばしたいがために、様々な力技を編み出していたんです。

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読み終えた雑誌を突っ込み、一晩置いて伸ばす者もいた
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手動の場合は、全力でひたすら引っ張るのみ。丹念に数分やり続ける
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なお、撮影してくれた友人は当時、父親が捻出した「大五郎」の空ボトルをルーズに突っ込んで一晩置き、伸ばしていたという。生活の知恵すぎる
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足の突っ込み方に惑う150センチ。なんせストッキングより長い
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履いてからも伸ばす。当時は、数時間おきに伸ばし直しする者もいた

久々に履いてみると、ずいぶんと手間のかかる靴下だったことに気づく。過去の自分たち、よく根をあげなかったもんだ。

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右が「E.G.スミス」の1600円。左が「CUTE&STREET」の150センチ
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左「E.G.スミス」。右「CUTE&STREET」。遠目だと違いがわかりづらいが、150センチは、靴下止めなしでもずり落ちないという神業を発揮中
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犬にはそっぽを向かれました

年齢が当時の2倍になった今、素足にスカートは震えを覚えたものの、ルーズの分厚い布地は心地がよかった。特に150センチ。当時、求めていたボリューミーさがこれでもかと凝縮されていたのだ。

だが、まさか。あなたまで生産終了にならないよな? 不安なので、販売元のマキシムに聞いておこう。

 

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あのう、今後も販売は続けるんでしょうか……?

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市場の要望がある限り継続するつもりです。

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おおおお! 良かったです! ちなみに、むかし2メートルの靴下があったと聞いているんですが、それはもしかして御社が……?

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はい。確かに、最大で長さ200センチのものを作っていました。お母さんたちから「洗濯が面倒、乾きにくい」と苦情が出たことがあります。

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(たしかに……ただでさえ乾きにくいもんな……)

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現在、市場に供給している数量は、月間約400~450足です。ピーク時は、20倍位の生産を行なっていましたが、需要に追いつきませんでした。

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(女子高生という女子高生が履いていましたもんね……)

全盛期には、ルーズを取り扱っていたメーカーは10社程あったそうだ。だが、ルーズから紺ハイソックスへの流れは、1年ほどで一気に変化。それとともにメーカーも消えてしまったという。

加えて、素材、編み機、仕上げ方、そのすべてが特殊なため、現在では、極限られた工場でしか取り扱われていないそうだ。

つまり、ルーズの未来はマキシムにかかっているのかもしれない。全力で念波を送るのでがんばってほしい。

ソックタッチもご存命だ

さいごに。ルーズといえばソックタッチだ。

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靴下を止めてくれる便利なやつ

ルーズに限らないな。靴下に下がって欲しくないと願うすべての人の味方である。最近めっきり見かけてないのだけど。 

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ソックタッチが優しすぎてしまい、こちらを愛用する者もいたが(おすすめはしない)

そんなソックタッチ、いざ探してみたら、渋谷の薬局数軒であっさり見つかった。

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めっきり見かけないとか言ってごめん
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買っていく人いますか?

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そうですね……あんまり出ませんね。

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4、5年前に、インバウンドの方が買われていく時期がありましたが、今はあまりいないですね。

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(えっ。そんなフェーズがあったんだ!)

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買っていく人、たまにいますよ。お母さんと一緒に買いに来る人もいます。

そのお母さん、もしやわたしらと同世代なんじゃ。時代は回るのだなぁと思いつつ、ソックタッチを世に送り出した、白元アースにも聞いてみよう。

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今も売れているんでしょうか……?(おそるおそる)

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現在は短い靴下が多くなっているため、ソックタッチの出番が少なくなってきておりますが、定番商品としてお取り扱いいただいている企業も多くあります。

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おお、そうなんですね。でも、流行は繰り返すことが多いですし、長い靴下ブームがまた来るかもしれませんよね……!

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我々もソックタッチを無くさないように精進しながら、第3次ブームの到来を期待しています。

 

ちなみに。なぜ「第3次ブーム」なのか、これにはわけがある。ソックタッチ、実はもうすぐ50歳なのだ。

第1次ブームは70年代に訪れており、90年代に起きたのは第2次ブーム、なんである。(withnewsさんの記事が詳しい) 

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ブーム中じゃないけど、渋谷で3色そろいました

……と振り返ってみたら、すっかり過去のものではなくなってしまった。ルーズソックスも、ソックタッチも、令和の時代もなくらないでくれ。


ルーズソックスはいいものだ

本編に書ききれなかったのだが、ドンキホーテ渋谷店にも、ルーズらしきものが置かれていた。

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ドンキで売ってたルーズ。「しっかり生地が魅力」

付近にいた20歳前後の女性に「ルーズって履いてました?」と聞いたところ、「毎日じゃないけど、学祭とかで履いていた」「長いのは躊躇があるから50センチのライトなやつが良い」「ボリューミーなやつは、足が太く見えますよね」とのことだった。

「足、太く見える」

なんという正論だ。わたしたちは熱病に冒されていたのかもしれない。でも、あのなんともいえない埴輪感こそが、ルーズ最大の魅力ではないだろうか。

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