特集 2024年1月27日

ナップサックのススメ

「左右の肩の高さ、全然違くない?」

会社のトイレの鏡に映った自分を見て驚愕した。左右の肩のバランスがおかしい。ビートたけしのモノマネくらい、片方の肩だけ上がっている。しかも、ビートたけしのモノマネのなかでも、かなり誇張したタイプのやつだ。何故…。いつの間にこんなことに……。

理由はすぐに見当がついた。毎日トートバッグを使っているからだ。

…今すぐリュックを買おう。

その日の仕事帰り、わたしは超特急でルミネに駆け込んだ。

社会人。体育が嫌い。大人になった今でも大抵の物事を「体育よりマシか、否か」で判断している。

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ナップサックとの出会い

入口の一番手前の店に突進し、店内をザっと見回す。

大容量のもの。デザインの凝ったもの。機能性に優れたもの。ディスプレイの隙間を埋めるように店内に点々と陳列されたリュックたちからは、どれも若干の『気合』が感じられる。「そういうことじゃないんだよなぁ」と勇んだ足取りが失速する。

衝動の収束を全身で感じながら出口に向かって歩いていると、ひときわ簡易的な形状のリュックが目に飛び込んできた。「これだ」と直感した。わたしは、迷わずそれを手に取った。

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リュックが入っているとは思えないほど軽いショッパーを膝に乗せ、帰宅ラッシュの電車に揺られる。

ーいい買い物をした。なんてったって、開け口が巾着状になってるのが最高。画期的。発想の勝利。この世にはとんだアイデアマンがいたもんだ。

ーそんでもって、超軽いし。最近のリュックは超軽量化されてるんだな。ま、スマホも年々薄くなってるし、そりゃリュックもペラペラになりますわ。

ーほんと、デザインが洗練されててシンプルな構造だから、なんなら自分でもつくれそうかも。

 

ーつくったこと、あるかも…。小学生の時、家庭科の授業で……。

 

これがわたしとナップサックの出会いである。

その日に買ったナップサック

ここからは約2年間ナップサックを使い倒した人間によるナップサックの正直レビューを記す。

まずはナップサックの最高ポイントから説明したい。主なトピックスは以下の通りです。

①軽い

②チャックを閉めなくていい

③チャックを開けなくていい

 

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①軽い

マジで軽い。なぜなら裏地も背面のメッシュも何もないから。実際天使の羽ってこのくらいの重量感だと思う。「荷物を最小限にしてみても意外とカバン自体が重いから、どうしたって疲れる」という問題が完全に解決できる。ナップサックを使用して尚、荷物が重いと感じる場合は、完全に内容物の問題だ。因果関係がめちゃくちゃはっきりしていて助かる。

あと、本当に生地がペラペラなので、小さく折りたためるのも魅力だ。
クローゼットがものであふれている人には是非「ナップサックなら使わない時はコンパクトにして収納できますよ」と勧めたい。そしてミニマリストの方にも「ナップサックなら使わない時はコンパクトにして収納できますよ」と勧めたい。そんな逸品である。

 

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②チャックを閉めなくていい

ナップサックの構造について改めて説明する。

要するに、ナップサックは巨大な巾着袋と言える。

巾着状であること、それはつまり、「チャックを閉める必要がない」ということだ。これこそが、ナップサックの最大の利点である。

袋の口と肩紐が連動しているので、肩にかければ自動的に口が閉まる。頭が良すぎる。本当にすごい。わたしが発明したことにならないだろうか。

そもそも、なぜわたしは今までリュックを使っていなかったのか。それはひとえに「カバンのチャックを閉める」という動作ができないからである。

わたし調べによると「中高生の時にスクールバッグのチャックが常に全開だった奴は、一生カバン全般のチャックを閉められない」という統計が出ている。もちろん例に漏れず私自身もそれに該当する。
もし読者の方々の中にスクバのチャック全開中高生がいたら、「それ、大人になっても直らないと思うよ」と言いたい。

でも大丈夫、そんなチャック全開道を邁進する者に優しく手を差し伸べる神アイテム、それがナップサックである。

「↑でもこの外ポッケは閉めないとだろ」と思う方もいるだろう。

お答えします。

前に抱えるので閉めなくていいです。

これに関しては正直、『ナップサック(リュック)を電車内で前に抱えた後に戻すタイミングと必要性』が永遠にわからず、そのまま腹に抱え続けているだけなのだが、まあ結果オーライである。

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③チャックを開けなくていい

チャックを閉めなくていい、それはつまりチャックを開けなくていい、ということだ。

例えば、ちょっとしたものだったら、

こう、 

隙間からねじ込む。

レジで慌てて財布に小銭が入れられなかった時は、この隙間に小銭を流し入れたりする(お賽銭みたい)。 

荷物を探すときも、巾着口に手を突っ込みまさぐることで、『ジェネリック版・箱の中身はなんじゃろな』を日常的に楽しめるエンタメ性も兼ねそろえている。

「そんなことしたらナップサックの中がグチャグチャになるだろ」と思う人もいるでしょうが、それについては普通にチャックがあってもグチャグチャにするので大丈夫です。

 

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ナップサックの弱点

ここまで自らの体験を元にナップサックの魅力をお伝えしてきたわけだが、実を言うと、わたしは現在ナップサックを使っていない。それは何故か。ナップサック唯一の欠点が、その理由である。

ナップサックの唯一にして最大の欠点、それは

肩ひもが肩に食い込んで痛い問題である。

いかんせん紐すぎる

 「ナップサックって紐が肩に食い込んで痛そうだから嫌」

今までナップサックを他人に勧める度に、幾度となく投げ返された言葉だ。

その言葉を聴く度に「私は別に気にしてないけどね」と気丈に振る舞っていた。

しかし、紐が肩に食い込むのは紛れもない事実だ。

 

最初のうちは、「これは、『あまり重いものを持ち運んでると身体が歪みますよ』というナップサックからの気遣いだ」と思い込むことにしていた。

ただ、そう思い続けることに、明確に限界を感じた日があった。

 

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限界を知った日

1泊2日の荷物をナップサックに詰め込み、大阪へと旅立った日のこと。
半日ほど歩き回ったところで、突如未だかつてない違和感が全身に生じていることにきづいた。

無意識のうちに肩を庇おうとして姿勢が崩れたからだろうか。連鎖的に全身(主に関節と背中)にダメージが加わっていたのだ。

なんなら、今まで蓄積された分までもが、ひとまとめになって襲ってきたような気がする。身体の防御力が一気に下がった。そういうの、早めに予告してほしい。

午前中は、自販機で見たことないコーヒーを見つけて写真を撮る余裕があった
見たことないレモンティーもあった

ナップサックを愛用していただけでこの始末…………。何故…………。

肩の部分が…紐だからか……。

 

ヨロヨロになりながらホテルに戻ったわたしは、どう頑張ってもうずもれることのできない硬いベッドの上で、少しでもマシな体勢を模索した。

身体を極限まで捻りながらふと思った。

私が真面目にチャックを閉めさえすれば、あの肩紐の食い込みはなくなるのか。

 

それだったら全然チャック閉めた方がいいかも

 

その日を機に、わたしはナップサックを卒業した。

いまでもナップサックを見ると、あの時泊まった薄暗いビジネスホテルを思い出す。


帰り道の話。
大混雑の新大阪駅は全ての飲食店に嘘みたいな長蛇の列ができていた。お腹はすいているものの、列に並ぶ気力は当然なかった。
ナップサックを背負ってなかったら、くくるや551に並ぶことだってできたはずだ。

それでもせめて弁当っぽい形のものを食べようと、唯一空いていた土産屋で赤福を買った。

人生初の赤福。
手に取った瞬間に「重」と思い、食べた瞬間に「重」と思った。
半分食べたところで身の危険を感じ、フタを閉じた。

(元)愛用、グレゴリのナップサック

[グレゴリー] ナップサック

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