特集 2023年8月1日

シウマイが1日約80万個作られる崎陽軒の横浜工場を見学してきた

横浜に住んでいると、もう当たり前のように崎陽軒の「シウマイ」を目にする。

駅に行けば売店があるし、横浜お土産としても定番。夕飯のおかずにもしれっと並んだりする。神奈川県民のソウルフード。

そもそもなんで「シウマイ」なのか、いつからどうやって作られてきたのか……と思い取材を申し込んでみると、横浜工場を見学させてもらえることになった。

1975年宮城県生まれ。元SEでフリーライターというインドア経歴だが、人前でしゃべる場面で緊張しない生態を持つ。主な賞罰はケータイ大喜利レジェンド。路線図が好き。(動画インタビュー)

前の記事:マーブルガムやフィリックスガムを作った会社に聞く「歴史」「ガム離れ」「チャッピー」のこと

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朝8時集合で工場見学へ

崎陽軒の「シウマイ」、ご存じない方もいるかもしれない。こちらになります。

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こちらが崎陽軒の「昔ながらのシウマイ 15個入」。
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シウマイたち、小ぶりだけどジューシーで美味しいんですよ。なんで「シュウマイ」じゃなくて「シウマイ」なのかは後ほどご説明します。

横浜みやげといえばシウマイだし、新幹線に乗ればシウマイ弁当を食べるし、なんやかんやイベントがあるとシウマイが出る。神奈川県はシウマイを中心に回っている……と言うのは過言かもしれないがそれくらいの肌感はある。

だって、神奈川県の主要駅には、ほぼ必ずこのシウマイを売っている崎陽軒の売店があるのだ。神奈川・東京を中心に約160店舗あるという。

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横浜駅の中央通路にある「横浜駅中央店」。シウマイ弁当が1日平均900個売れるナンバーワン店舗。この日もずっとお客さんが並んでいた。
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そもそも横浜駅だけで崎陽軒の売店がいっぱいある。東海道線のホーム(手前)と、京浜東北線のホーム(奥)にそれぞれあるくらい。

さて、このシウマイを作っているのが、横浜市都筑区にある崎陽軒の横浜工場である。

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崎陽軒の横浜工場。IKEA港北や日産スタジアムがほど近い場所。通常の工場見学が始まる前にご案内いただけるとのことで、集合時間は朝8時。
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ご対応いただいた、広報・マーケティング部の山本さん。朝早くからありがとうございます。
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なお今回の取材には、大の崎陽軒ファンだというDPZライターのべつやくさんも同席。早くもウキウキが止まらない(左の井上は引いているのではなくマスクの下で笑っています本当に)

崎陽軒の工場見学は大人気で、常に予約でいっぱい。何度かうちの子を連れて行こうと思ったけど、いつ見ても3ヵ月先までびっしり埋まっていた。

どういうことなのかと思っていたのだけど、山本さん曰く「予約開始とともに一瞬で埋まってしまうんです」だそう。シンプルにすごい。

なので、この記事を見て「夏休みに行こう」と思っても、もう秋まで埋まっているのでご注意いただきたい(キャンセル待ちもあるそう)

今日はそんなプレミアチケットをこれから体験するのだ。うちの子たちよ、お父さんだけ見学してごめんな。

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待機スペースに置いてあった「シウマイ弁当パズル」(非売品)。シウマイムードが高まる。
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90年以上レシピが変わっていない

まずは崎陽軒の代名詞である「シウマイ」の歴史から学んでいこう。

いきなり目を引くのが、このモノクロの写真。映っているのは「シウマイ娘」だという。

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横浜駅のホームに、カゴを持ったお嬢さんたちが並んでいる。「シウマイ娘」とはいったい……?

山本さん 「シウマイ娘」は、今で言うキャンペーンガールですね。1950年に初代社長が導入し、シウマイをカゴに入れて駅のホームで売り歩きました。その姿が話題になって、横浜のシウマイが全国区になったと聞いています。

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販売員の歴代ユニフォーム。左奥が初代「シウマイ娘」のもので、右手前は現在のもの。
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横浜駅でシウマイを売る「シウマイ娘」。1952年には新聞小説『やっさもっさ』(獅子文六)に登場。翌年には映画化され、全国に「シウマイ娘」の名が轟く(画像提供 崎陽軒)
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ちなみに工場見学には「シウマイ娘」の体験コーナーもあります。  

そもそも崎陽軒の「シウマイ」が生まれたのは、1928年(昭和3年)のこと。

当時から崎陽軒は横浜の駅弁屋として営業していたが、横浜には名物らしい名物がなかった。

じゃぁ自分で作っちゃおう、と初代社長が中華街を練り歩き、目に留まったのが焼売(シュウマイ)だったという。

ちなみに「シュウマイ」ではなく「シウマイ」なのは、初代社長の“栃木なまり“から。でも中国語の「焼売」の発音にも似ているので結果オーライだった。そんなことあるんだ。

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シウマイの原材料が展示されたコーナーに来ました。豚肉、玉ねぎ……ホタテ?

ただ、一般的にシュウマイは熱々の状態でお客さんに提供されるもの。冷めると味が落ちてしまう。

こういうとき「どうやって温かいまま食べてもらおうか」と考えがちだけど、初代社長は違った。

「冷めてもおいしいものを作ろう」と考えたのだ。

山本さん 中国の点心師をスカウトして、冷めてもおいしいシウマイを1年かけて開発しました。その秘密が、この干帆立貝柱です。豚肉は冷めると味が落ちてしまうのですが、干帆立貝柱の戻し汁と身を混ぜることで、冷めても風味豊かなシウマイになるんです。

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山本さん「この豚肉と玉ねぎは食品サンプルなんですが、こちらの干帆立貝柱だけは本物なんですよ~」。我々「えっ!!!」
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近づくと、めちゃくちゃいい香りがする。「本物だ……!」「貝柱デカくないですか!?」「これ中華街行ったら結構いい値段するよ!」と大興奮の我々。

「シウマイのレシピは1928年から変わっていないんです」と山本さんは言う。

原材料は豚肉、玉ねぎ、干帆立貝柱、グリーンピース、調味料(砂糖、塩、こしょう、でんぷん)、そして皮に使う小麦粉。この9種類のみ。

このレシピで90年以上シウマイが作られ続けている。いま僕たちが食べているシウマイは、「シウマイ娘」が売り歩いていたあのシウマイと、同じ味がするのだ。 

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1日に約80万個のシウマイが誕生

いよいよシウマイの製造工程である。

見学者用の小窓から、実際の製造ラインを見下ろすことができる。
(工場見学は撮影禁止ですが、今回は特別に許可をいただきました)

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左側にある機械が、餡(あん)と皮からシウマイを作る「成形機」。生み出されたシウマイは右奥に続く「蒸し器」へ流れていき、約95度で約10分間蒸される。
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豚ひき肉などで作られた餡が皮に包まれて水色のベルトコンベアに乗って、どんどんシウマイが生み出されていく……。

成形機は8機あり、成形機ごとに「特製シウマイ」や「えびシウマイ」など、さまざまな種類のシウマイが作られている。

成形機ひとつにつき、1分間に420個のシウマイを生産可能だそう。ということは……。

山本さん この横浜工場では、1日に約80万個のシウマイが製造されています。縦に積み重ねると、富士山5つ分の高さになるんですよ。

80万個……!

佐賀県の人口が約80万人だから、佐賀県民に毎日1人1個配れる計算だ。そして富士山5つ分は、東京スカイツリー30個分や、エベレスト2つ分と同じ高さである。

よくわからなくなってきたが、とにかくたくさん作っているのは確かだ。

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成形機の中の餡が少なくなってくると、別のフロアから運ばれてきて自動的に補充される仕組み。 「あの塊ひとつで、シウマイが約2600個作れます」(山本さん)

山本さんによれば、崎陽軒には3つの工場があるが、シウマイを作っているのは横浜工場だけ。

他の工場で作れているお弁当にシウマイが必要なので、横浜工場からはシウマイが毎日出荷されているそう。

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そういえば朝8時に集合したとき、既にトラックがいっぱいいた。ここからシウマイが旅立っているのか。

ちなみに、シュウマイのグリーンピースって普通てっぺんに置いてあるじゃないですか。

でも崎陽軒のシウマイは、グリーンピースが中に練り込まれてますよね?

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成形機の中をよく見ると、餡の中にグリーンピースが混ざっていることがわかる。

山本さん そうなんです。食べたときの歯触りが良くなるほか、小さくて丸い固形物を入れることで、他の具材同士が混ざりやすくなる効果があります。

こうして蒸し上がったシウマイは、ある程度冷ましたあと箱詰めされたり、真空包装&レトルト殺菌された「真空パックシウマイ」になったりして、お客さまのもとに届くのだ。

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これが「移載ロボット」。左のピンクの容器から15個ずつ持ち上げて、箱に詰めていく。
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「昔ながらのシウマイ」の箱詰め作業。シウマイは移載ロボットが箱詰めし、お手ふきやしょう油入れは手作業で梱包。駅弁にお手ふきを入れたのは、崎陽軒が最初!
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……という様子を、小窓からかぶりついて見ていました。

⏩ 次ページに続きます

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