朝8時集合で工場見学へ
崎陽軒の「シウマイ」、ご存じない方もいるかもしれない。こちらになります。
横浜みやげといえばシウマイだし、新幹線に乗ればシウマイ弁当を食べるし、なんやかんやイベントがあるとシウマイが出る。神奈川県はシウマイを中心に回っている……と言うのは過言かもしれないがそれくらいの肌感はある。
だって、神奈川県の主要駅には、ほぼ必ずこのシウマイを売っている崎陽軒の売店があるのだ。神奈川・東京を中心に約160店舗あるという。
さて、このシウマイを作っているのが、横浜市都筑区にある崎陽軒の横浜工場である。
崎陽軒の工場見学は大人気で、常に予約でいっぱい。何度かうちの子を連れて行こうと思ったけど、いつ見ても3ヵ月先までびっしり埋まっていた。
どういうことなのかと思っていたのだけど、山本さん曰く「予約開始とともに一瞬で埋まってしまうんです」だそう。シンプルにすごい。
なので、この記事を見て「夏休みに行こう」と思っても、もう秋まで埋まっているのでご注意いただきたい(キャンセル待ちもあるそう)
今日はそんなプレミアチケットをこれから体験するのだ。うちの子たちよ、お父さんだけ見学してごめんな。
90年以上レシピが変わっていない
まずは崎陽軒の代名詞である「シウマイ」の歴史から学んでいこう。
いきなり目を引くのが、このモノクロの写真。映っているのは「シウマイ娘」だという。
山本さん 「シウマイ娘」は、今で言うキャンペーンガールですね。1950年に初代社長が導入し、シウマイをカゴに入れて駅のホームで売り歩きました。その姿が話題になって、横浜のシウマイが全国区になったと聞いています。
そもそも崎陽軒の「シウマイ」が生まれたのは、1928年(昭和3年)のこと。
当時から崎陽軒は横浜の駅弁屋として営業していたが、横浜には名物らしい名物がなかった。
じゃぁ自分で作っちゃおう、と初代社長が中華街を練り歩き、目に留まったのが焼売(シュウマイ)だったという。
ちなみに「シュウマイ」ではなく「シウマイ」なのは、初代社長の“栃木なまり“から。でも中国語の「焼売」の発音にも似ているので結果オーライだった。そんなことあるんだ。
ただ、一般的にシュウマイは熱々の状態でお客さんに提供されるもの。冷めると味が落ちてしまう。
こういうとき「どうやって温かいまま食べてもらおうか」と考えがちだけど、初代社長は違った。
「冷めてもおいしいものを作ろう」と考えたのだ。
山本さん 中国の点心師をスカウトして、冷めてもおいしいシウマイを1年かけて開発しました。その秘密が、この干帆立貝柱です。豚肉は冷めると味が落ちてしまうのですが、干帆立貝柱の戻し汁と身を混ぜることで、冷めても風味豊かなシウマイになるんです。
「シウマイのレシピは1928年から変わっていないんです」と山本さんは言う。
原材料は豚肉、玉ねぎ、干帆立貝柱、グリーンピース、調味料(砂糖、塩、こしょう、でんぷん)、そして皮に使う小麦粉。この9種類のみ。
このレシピで90年以上シウマイが作られ続けている。いま僕たちが食べているシウマイは、「シウマイ娘」が売り歩いていたあのシウマイと、同じ味がするのだ。
1日に約80万個のシウマイが誕生
いよいよシウマイの製造工程である。
見学者用の小窓から、実際の製造ラインを見下ろすことができる。
(工場見学は撮影禁止ですが、今回は特別に許可をいただきました)
成形機は8機あり、成形機ごとに「特製シウマイ」や「えびシウマイ」など、さまざまな種類のシウマイが作られている。
成形機ひとつにつき、1分間に420個のシウマイを生産可能だそう。ということは……。
山本さん この横浜工場では、1日に約80万個のシウマイが製造されています。縦に積み重ねると、富士山5つ分の高さになるんですよ。
80万個……!
佐賀県の人口が約80万人だから、佐賀県民に毎日1人1個配れる計算だ。そして富士山5つ分は、東京スカイツリー30個分や、エベレスト2つ分と同じ高さである。
よくわからなくなってきたが、とにかくたくさん作っているのは確かだ。
山本さんによれば、崎陽軒には3つの工場があるが、シウマイを作っているのは横浜工場だけ。
他の工場で作れているお弁当にシウマイが必要なので、横浜工場からはシウマイが毎日出荷されているそう。
ちなみに、シュウマイのグリーンピースって普通てっぺんに置いてあるじゃないですか。
でも崎陽軒のシウマイは、グリーンピースが中に練り込まれてますよね?
山本さん そうなんです。食べたときの歯触りが良くなるほか、小さくて丸い固形物を入れることで、他の具材同士が混ざりやすくなる効果があります。
こうして蒸し上がったシウマイは、ある程度冷ましたあと箱詰めされたり、真空包装&レトルト殺菌された「真空パックシウマイ」になったりして、お客さまのもとに届くのだ。