特集 2023年8月1日

シウマイが1日約80万個作られる崎陽軒の横浜工場を見学してきた

ザ・ひょうちゃんヒストリー

さて崎陽軒といえば、「昔ながらのシウマイ」と「特製シウマイ」に入っている磁器のしょう油入れもお馴染みである。その名を「ひょうちゃん」という。

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こちらが「ひょうちゃん」。頭にゴム栓がしてあり、中にしょう油が入っている。かわいい。(画像提供 崎陽軒)
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その歴史をたどるコーナーもあるんですよ。

崎陽軒では、シウマイが誕生した1928年当時からしょう油入れを同封しており、当時は小さなガラス瓶だった。戦後にひょうたん型の白い磁器になったけど、まだ顔はないまま。

初代「ひょうちゃん」が誕生したのは、1955年のこと。漫画家・横山隆一氏が「目鼻をつけてあげよう」と表情をつけた。その数、48種類!

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初代「ひょうちゃん」。いろは48文字にちなんで48種類の表情がある。「ひょうちゃん」の名付け親も横山氏。

時は流れて1988年。崎陽軒創業80周年を記念して2代目「ひょうちゃん」が誕生する。

絵柄の担当はイラストレーターの原田治氏で、80種類×4色×2サイズ(大小)の640種類で展開された。ひょうちゃん、いきなりの大家族化である。

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これでもまだ一部。めちゃめちゃいる。上段にいる四角い形が小タイプ。
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山本さん「前髪をさらっと流しているのが男の子で、くるっと巻いているのが女の子っぽいですよね」

そして現在の3代目。2003年の横浜工場リニューアルに合わせて、初代の絵柄が復活。もちろん48種類ある。

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今では崎陽軒の広報部長を務めている「ひょうちゃん」。もうすぐ70歳。役員待遇だろうか。

2015年に「ひょうちゃん」は還暦を迎え、期間限定の「還暦記念ひょうちゃん」が作られた。

期間中は通常の48種類に加え、還暦記念14種類、そしてスーパーレアの「金色の還暦記念14種」のどれかが入っていたという。

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これがスーパーレアの「金色の還暦ひょうちゃん」。あまりに数が少なかったので、「本当に入っているのか」という問合せが殺到。そんなこと言われても「入ってます」と言うしかない。

そうそう、企業などとの「コラボひょうちゃん」もたくさんあるんですよ。

駅弁なので鉄道関連のコラボはもちろん、横浜Fマリノスとコラボした「トリコロールひょうちゃん」や、創業110周年のときには110番とかけた「神奈川県警ひょうちゃん」、劇団四季の横浜公演に合わせた「キャッツひょうちゃん」「オペラ座の怪人ひょうちゃん」までさまざま。
 

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こちらが「キャッツひょうちゃん」。表情が凜々しい。

山本さん お客さまに楽しんでいただくために、今後もコラボを続けたいですね。ただ、どことでもコラボをするわけではなく、「地域を盛り上げる」という目的が一致することを大事にしています。同じ思いの方がいらっしゃいましたら、ぜひお願いします!

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「東京産」と「横浜産」のシウマイ弁当

工場見学はまだまだ終わらない。なんと次は「シウマイ弁当」の製造工程である。

いま興奮のあまり「なんと」って付けちゃったけど、みんなついてきてくれているだろうか。

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これですよ崎陽軒の「シウマイ弁当」。俵型のご飯にシウマイ5個、鶏の唐揚げ、鮪の漬け焼、筍煮などなど、おかずがたくさん入っている。新横浜から東海道新幹線に乗るとき買う(画像提供 崎陽軒)
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だってシウマイ弁当の「おかずのこだわり」を解説する巨大パネルまであるんですよ。興奮するでしょうそれは。

シウマイ弁当の売り上げは、1日に約2万7000個。年末年始など多いときは3万を越える。

真空パックや冷凍保存ができるシウマイと違い、お弁当は長期保存がきかないので、工場は365日フル稼働だそう。

山本さん GWや年末年始はやっぱり忙しいですね。他には、運動会や選挙でも、たくさん発注をいただいています。横浜市内の小中学校では、入学式や卒業式などで、行事の一環としてシウマイ弁当を食べるところもあるんです。

べつやくさんは過去に横浜の会社で働いていた時期があるらしく、「確かに花見のときはシウマイ弁当買ってた」とのこと。

そういえば横浜スタジアムにも崎陽軒の売店があり、限定の「ハマスタ☆応援弁当」があったりする。もはや「横浜のイベント=崎陽軒」が浸透しているといっていい。

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シウマイ弁当の製造ライン。左から流れてくるお弁当に、おかずを一種類ずつ手作業で乗せていく。おかずの仕込みは朝の3時頃から始まり、15時を過ぎるとお掃除して締めることが多いそう。
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製造ラインを流れ終わると、シウマイ弁当が完成。「今日は2列で作っていますが、繁忙期になるとこれが3列になるんですよ」(山本さん)

しかし、まだシウマイ弁当は完成ではない。最後に“かけ紙”をかぶせて紐で十字に縛る「紐かけ」の作業があるのだ。

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紐かけも手作業……! 結局人の手が一番早くて正確らしい。

すごいスピードで次々とシウマイ弁当に紐が結ばれていく。古新聞だってまともに縛れない我々は唖然とするばかり。

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ずっと見ちゃう。

駅弁屋である崎陽軒にとって、この「紐かけ」は駅弁のアイデンティティのひとつ。

崎陽軒の新入社員は、新人研修で必ず「紐かけ」を習うので、社員全員がシウマイ弁当に紐を結べるらしい。ということは、山本さんも?

山本さん すごく遅いですけど、なんとか合格して……(笑)。十字の部分を中央に持ってくるのが難しいんですよ。自分でやってみると、現場の方のすごさがわかりますね。

ただ、横浜工場より後にできた東京工場では「紐かけ職人がいない」という理由で、別に作られた “フタ”をかぶせる形になっているそう。

つまり、シウマイ弁当をひと目見れば、それが東京工場で作られたものか、横浜工場で作られたものかわかるのだ……! 

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左が東京工場、右が横浜工場のシウマイ弁当。絵柄をよく見比べると、東京工場のかけ紙には東京スカイツリーも描いてある。ちなみに「中身や味は同じです」とのこと。

これさえ知っていれば、「あなたは新横浜から東海道新幹線に乗ったはずです。なぜなら、シウマイ弁当にかけ紙がしてあるのだから……!」みたいな名探偵ごっこもできる。シウマイ探偵である。

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シウマイ弁当のパッケージは現在4代目。初代(1954年)は海と船、2代目(1960年)は三渓園やキングの塔、3代目(1964年)はマリンタワーや氷川丸、4代目(1995年)はランドマークタワーやコスモクロック、と、横浜の風景が反映されている。

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