特集 2025年2月25日

神戸で「かすうどん」頼んだら思てたんとちゃうのが出てきた話

神戸の食堂でメニューに「かすうどん」があるのを見かけて、そういえば食べたことなかったなと思って注文した。かすうどんとは油かす(牛ホルモン)が浮いている出汁のきいたうどんのことで、関西ではメジャーな料理である。

…が、想像していたのとはぜんぜん違うものが出てきてしまった。どうしよう。

1993年生まれ。京都市伏見区出身、宮崎県在住。天性の分からず屋で分かられず屋。ボードゲームと坂口安吾をこよなく愛している。

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おばあちゃん、かすうどん食うんだ!胃腸が若いな、よしおれも!

帰省の折、神戸の施設で暮らす祖母とご飯を食べに行った。朝が早いということもあり、店は市場近くの食堂である。

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メニューが豊富

刺身や海鮮丼などの観光客向けメニューのほかに、安価なうどんや飯物なども提供しているお店だった。せっかくなので海鮮を攻めたいところである。しかし祖母はメニューを見てほぼ即決に近い形で「かすうどん」を選んだ。

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関西のかすうどんの例。安藤さんの過去記事「奈良で食べた「かすうどん」が忘れられない」より。

冒頭で書いたとおり、かすうどんの「かす」とは牛ホルモンを脂分が抜けるまで揚げたもののことだ。そんなかすうどんとご飯を注文した祖母。おお、飯ガッツリばあちゃんじゃん!これからは飯ガッツリばあちゃんと呼ぼう!

僕も飯ガッツリばあちゃんにあやかって、かすうどんと海鮮丼を注文した。

かすうどん(神戸の食堂のすがた)がきた

ほどなくしてうどんが運ばれてきた。

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……?

もう言ってしまおう。粕汁(酒粕で作った汁物)にうどんを入れたものが出てきたのだ。なるほど、これも「かすうどん」である。そうか、そうか、醤油味ですらないのか…。

そういえばメニュー表に※がついていた気がするな。

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(冬季)厳選酒粕とあった
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これもいま思えば大ヒントか

提供を待つ間、母は「かすうどんってもしかして」だの、父は「灘は酒どころやからなあ」だのと言っていた。都合が悪そうな情報だったので無視したが、やはり年長者には敵わないものである。

まさか、かすうどんの本場大阪の隣県で、同じ名前のぜんぜん違うものが出てくるとは思わなかった。祖母は思っていたとおりのものだったらしく、当たり前のように食べ始めた。

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整理する時間

ひとつ思い出したが、九州方言でオオスズメバチのことをクマバチと呼ぶことがある。

しかし、一般的にクマバチと言えば温厚で丸っこいハチのことを指す。そちらは針の毒性も比較的低い。前に神社で刺されたときは大したことにはならなかった(神罰ですか?)。

一方でオオスズメバチの毒は人を死に至らしめることもあるのだ。え、その2種類を混同したら最悪の場合、最悪のことにならないすか?

ちょうどいい機会なので共有しておきました。蜂の話はおわりです。

粕汁のうどんは滋養そのもの

おばあちゃんは粕汁味のうどんでバクバクご飯を食べている。よし、僕も挑戦してみよう。

ただ、たまに帰ってきた関西だから出汁のきいたかすうどんへの期待感がはみ出ているのだ。ここは体験を記事にすることで折り合いをつけようじゃないか(という急ごしらえの話なので今回は写真が少ないです。リアリティ!)。

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いただきます
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鼻から抜けていくアルコール香
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めちゃくちゃ酒だ
いったん広告です

粕汁なので日本酒の香りがかなり強い。食べるつもりだったものと違い過ぎていて思わず笑った。そもそも粕汁を食べたことがないので二重三重に驚く要素がある。

具は細かく切られた野菜と豚肉、お揚げ、こんにゃくなど。麺はコシ控えめでやわらかく煮てある。お出汁は粕汁の味そのものだ。

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具だくさん
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肉は豚の細切れ。油かすの要素はない。

食べていると徐々に味に慣れて良さが分かるようになってきた。

なるほど、これは滋養の飯だ。人類普遍の回復薬といった感じで、RPGの世界なら体力が全回復したうえで最大HPが上がるだろう。作品によってはバランスブレイカーである。

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仕込みの関係で酒粕が美味しい季節は冬なんですってね

外食は脂っこかったり味が濃かったりして不健康に振れがちなので、こういう体を労ったものが安価で気軽に食べられるのはありがたい。

なるほど、なるほど。なるほど。

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ごちそうさまでした

食べ終わって外に出た。

かすうどんが思っていたのと違うことに関して店内で率直な感想を漏らしたこと(「え、まじか」「おばあちゃん白飯いけんのすごいな」「まさか大阪の隣で!」など)について、母から苦言を受けた。

父親は後方に見える山が六甲だと教えてくれた。

おばあちゃんは施設にいて温かい汁物を食べる機会があまりないので、とても満足そうだった。おおむね平和だ。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
最後に「母から苦言を受けた。」とあるので、どんなことを言われたのか不安になったのですが、声が大きい程度の注意だったとのこと。 むしろ「YouTubeサムネでよく見る苦言を使いたかった」だそうです(窪田談)。
サムネで見るワードを使いたい欲を目の当たりにしました。(林)

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