特集 2019年7月6日

ドメインガールと冗談がタスクになることについて

「なくなったサイトで見る場所へ行く」の評判が良かったのでそれにまつわる話を自由に書きたい。

記事には盛り込まなかったカンザスのこと、そしてカンザスに行かなければならないと思う呪いについて。

(いつもは前月の好評だった記事をライターと編集部の対談で振り返ってますが、今回はひとりで振り返ります)

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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数年前から行きたかった

このドメインガールの写真を完コピする企画は5年ぐらい前からあたためていた。同じ場所に行って同じ写真を撮りたい。インターネットばかり眺めている僕のお礼参りである。

3年前にアメリカ西海岸を訪れたときにも寄ろうと思ったのだが、当時はカンザスシティにライドシェア(*)がなかったので断念した。(僕は怖くてアメリカのタクシーに乗れない)。
今年に入って調べたらカンザスシティにライドシェアが進出していた。そして妻は金髪になっていた。期は熟せり、である。

ライドシェア:UBERやLyftなどの配車サービス。アプリで行きたいところを指定すると車がやってきて運んでくれる。英語で行き先を説明しなくて良い。挨拶はいる。

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カンザスシティに行くことになるとは思ってなかった。カンザスシティはカンザス州とミズーリ州の境界にまたがり、栄えているのはミズーリ州側というわかりにくい都市である。

畜産がさかんで、バーベキューが名物。アメリカ中西部の街である。アメリカ南北戦争の舞台にもなった土地だ。

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バーベキューレストランで食べたバーベキュー。アメリカのバーベキューは肉をただ焼いたものじゃなくてしっかりとした料理だと思った。
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スーパーのバーベキューソース売り場。見えてるもの全部がバーベキューソースである。日本の醤油以上のバリエーション。

トランプ支持の州でやや緊張したが、アメリカ人なので基本愛想が良い。親切な人にしか会わなかった。

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「その事務所」という日本語がおかしいので現地で買ったTシャツ

アメリカで人気のthe officeというシチュエーションコメディのTシャツだったらしく、路面電車の電停と電車の中で「それ好きだ」「いい」となんどか知らない人に褒められた。
電車のなかでほめてくれたおばちゃんは、隣のおばあさんを突っついて「ほら、あのドラマ。」と話しかけたりしていた。
僕は照れ笑いしながらサンキューとかソーマッチとか言った。

アメリカ中西部の街でちやほやされた(Tシャツが)。
予想外すぎる。

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おれなんでここにいるんだろう

旅先のこういう戸惑うことが、良い。
そのときはまさしく戸惑っているのだが、あとから振り返ってあれは面白かったとしみじみする。

開け方が分からない鍵とか、カンザスで乗ったUBERの運転手が朝青龍って知ってる?って言ってきたり。間違い探しの片方の絵のなかにいるようだ。

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ロンドンのドアはドアノブが中央についていた
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カンザスの蛇口は流しそうめんのようだった
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ウスターシャーの交差点には信号がたくさんあった

観光客向けにチューニングされてない場所のほうが戸惑いが多くて、脳が活性化する。
縁もゆかりもない住宅地で、おれなんでここにいるんだっけ?と思うことが旅の醍醐味だと思う。

なんでここにいるんだっけ?の始まりは"冗談"である。

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アイデアに身体がついた

インターネットのおかげで知ることが増えた。ウスターソースのウスターは地名であること、徳島にハヤシという地名があること。それに触発されたことを個人サイトやTwitterに書く。
「インドのデリーでデリーポータルZってサイトやったりして」。

冗談としては50いいねぐらいかな。

ただそれは呪いのように、実際にやったほうが面白いんじゃないの?お前は口先だけでいいわけ?と残る(この呪いがデイリーポータルZを支えていると思う)。
それに現地について調べれば調べるほど、行きたくなる。

呪いにかけられたところにLCCとライドシェアが現れて、口先のアイデアが実現できるようになった。冗談が手足を持ってしまったのだ。Airbnbで住宅街に泊まることもできる。

どうする?

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デリーポータルZ
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パリのメガネのパリミキ
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墾田永年私財法発祥の地

アイデアは飛躍だが、身体を持ったアイデアは本当に僕を飛躍した場所に連れて行ってくれる。
そして縁もゆかりもない土地でなんでここにいるんだっけ?と思うことになる。
あ、おれがいい出したんだっけ。
 

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一方通行の標識が長い、楽しい!

冗談は遠くに連れて行ってくれるが、貯金は冷や汗が出るぐらい減っていく。まさに呪いだ。

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タスクリスト

ドメインガールはタスクリストの中でもかなり大きかったので行ったあとは虚脱感を感じるほどだった。

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ドメインガールを撮りおえて帰るクルマの中から撮った。名残惜しさを感じてください

しばらく余生のような気分だったが、僕はまだまだネットに冗談を書いていた。

・ガラパゴス諸島でガラケー使っているか調べる
・いつも終点表示で見かける中央林間にわけもなく行く
・サロマ湖の切れてるところを飛び越える

冗談きっかけで移動して現地で戸惑う。屋形舟でハワイに行くような経験だ。

つまり、目的も過程も最高ってことです。(屋形舟でハワイもやってみたい)
 

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