特集 2023年11月25日

いらすとやのハブは奄美大島産 ~ハブを追い続けるライター、 毒の生き物について語る~

こんにちは、編集部 石川です。

毎月1回、当サイトのライターに専門分野や得意分野の話を聞いています。今回は、毒の生き物に詳しい伊藤さんに、毒について聞きました。

インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

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毒好き伊藤健史
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。 普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。 最近バレンチノ収集を始めました。

毒を使うっていう行為が面白い

石川:伊藤さんが好きな毒っていうのは?

伊藤:一般的な毒をちゃんと定義しようとするとすごく広くなってくると思うんです。コーラだって飲み過ぎたら毒だし、酸素だって単体では毒だし、塩だって…。

石川:水でも致死量があるって言いますよね。

伊藤:だけど僕の趣味でいうと、生きてるものを傷つける成分だとか能力を持った生き物ですね。ハブだとか、マムシだとか、身近にもクモだとか毒を持ってるものがいますし。

伊藤さんはハブの記事を10本以上書いています。(最新記事「西表島・竹富島・黒島、八重山ハブめぐり」より)

石川:毛虫とか?

伊藤:そうですそうです。イモリ、カエルだって毒だし。大きく分けると攻める毒/身を守る毒というのがありますけど、そういうことに毒を使うっていう行為が面白いです。

石川:いろんな種類の毒をいろんな目的に使っていると。

伊藤:あと人との関わりも面白いですね。美容に使うボトックスってあるじゃないですか。ボツリヌストキシンっていう生物史上最強の毒と言われている毒を使います。

石川:あれ毒なんだ。すげー。

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石川:伊藤さんが特に好きな生き物は?

伊藤:一番はハブですね。記事でもさんざん追っかけてるので。あとはテトロドトキシンを持ってるフグ。フグの毒もちょっと面白くて、フグは自分の体の中で毒を作ってないんですよね。

石川:え、そうなんだ。

伊藤:食べた餌の中のバクテリアから毒をとって蓄積していくので、餌を変えれば無毒のトラフグを養殖できたりする。ただ皮膚病にかかりやすくなったりして、一概にこれで養殖しまくれるぞといううまい話ではないみたいです。

石川:誰でもさばけるフグの夢が一瞬で消えた…。

伊藤:毒を取り込むという意味ではヤマカガシも。ヘビだから牙に毒があるんですけど、ほかに首の後ろの部分にも毒を持っていて、そこを強く叩いたりすると毒がぴゅっと飛び出してくるんですね。その毒はどうしているのかというと、ヒキガエルを食べてヒキガエルの毒を取り込んでるっていう。

石川:2種類の毒を持ってるということ?

伊藤:そうです。あとは鳥なのに毒があるズグロモリモズ。それもやっぱり餌のバクテリアから毒を取り込んでるって言われてます。あとヤドクガエルなんかも餌から。

国立科学博物館蔵、ズグロモリモズ(「世界はこんなに毒だらけ!特別展「毒」開催!」より)

石川:それって普通の魚でも同じような餌を食べたら毒がたまっちゃうことはないんですか?

伊藤:ありますよ。シガテラ毒っていうバクテリアを食べてるカマス系の魚なんかで中毒が起きることはあります。厳密にフグと同じ餌かはわからないですけど、毒性を持つバクテリアを取り込んでいるということで。

石川:こわい!

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哺乳類は毒が少ない

石川:哺乳類はどうですか?

伊藤:少ないけどいます。スローロリスって聞いたことないですか

石川:聞いたことあります。ちっちゃいサル。

伊藤:それが哺乳類の中では毒を持ってる。あとカモノハシだとか。

石川:毒あるんだ!カモノハシのどこに毒があるんですか?

伊藤:足の根元の爪っていうか、そこに棘があって、それで刺して毒を注入するっていう感じですね。

カモノハシの毒の爪(写真:Elonnon

石川:すごい刺しにくそうなところに。でもやっぱり哺乳類は少ないんですね。進化の過程で失ってしまったんですかね。

伊藤:欲しいですけどね。毒を作る力。

石川:人間に毒針があったらすごい犯罪のバリエーションが広がって嫌ですけどね。

伊藤:犯罪に植物系の毒は使われますね。ストリキニーネとかトリカブトとか。トリカブト殺人事件って30年以上前の話かな。

石川:あー、ありましたね。

伊藤:あれはトリカブトの毒とさらにフグの毒を同時に使って行われた犯罪なんです。どっちも神経毒っていって、神経伝達機能を阻害して呼吸を止めてしまうという毒なんですけど、作用の仕方が反対なんですよね。

石川:反対っていうと?

伊藤:トリカブトはナトリウムチャネルっていうタンパク質を活性化させる。フグのテトロドトキシンは逆にタンパク質を不活性化させるという効き方をします。だからトリカブト単体だとコロッと亡くなっちゃうのを、拮抗させて遅らせることができるんです。それで死亡時期をコントロールして遅効性の毒にしたっていう。

石川:毒を時間限定で逆に解毒薬として使っていたことですね。褒めちゃいけないけど賢いな…。

伊藤:びっくりですよね。現実に行われるトリックなんだ。

 

長生きしてほしいな、平坂さん

石川:平坂さん(※)が毒の生き物にめちゃくちゃ刺されてるじゃないですか。

※いきもの系ライター平坂寛さん。近年はYoutuberとしても活躍

伊藤:僕が初めてデイリーポータルの特集記事に登場したのが平坂さんのセアカゴケグモの記事だったんです。付き添いで。

伊藤さん初登場時(平坂さんの記事「あの毒グモは今」より)

石川:これか〜。

伊藤:その頃僕は記事書いてなかったんです。

石川:平坂さんの方がライター入りが先だったのか。

伊藤:それでここからさらに何年かあとですけど、電車に乗ってたら平坂さんからDMが来て、「セアカゴケグモに噛まれました」って。

石川:これだけ注意喚起されてるのに!

平坂さんの記事「毒グモ! セアカゴケグモとクロゴケグモに咬まれてみた」。他にもサソリや毒アリなど数々の毒生き物にかまれていて圧巻の記事。絶対にマネしないでください…!

伊藤:つぶさに毒の効き方がレポートされてくるんですよ。「麻痺状態が左の肩にまで広がってきました」とか。真っ昼間の山手線でドキドキしながら「大丈夫ですか」って返事だけをバカみたいに返して。すごいなと思って。

石川:あはは。長生きしてほしいな、平坂さん。

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