生放送「記事の森」やってます
この対談は、先日放送したトーク配信『樹液でも飲みながらライターに専門分野の話をきく「記事の森」』から抜粋したものです。番組ではこの2倍くらいしゃべってます。対談をお楽しみいただけた方はぜひアーカイブをどうぞ。
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石川:ここで伊藤さんに送っていただいた写真を見ましょう。
伊藤:今はもっぱらハブを探しがメインで、その過程で毒ヘビに出会えたりという写真達です。
伊藤:ウミヘビですね。桟橋の側面にまで寄ってきたので、すくい上げて撮りました。120~30cmあったんじゃないかな。コブラの仲間で噛まれるとやばいです。神経毒なので派手に血がドシャッて出たりはしないけど、呼吸が止まって死んじゃいます。
石川:静かに死んでいく。
伊藤:ただ性格がおとなしくて。口も小さく牙も奥の方にあるんで、そんなに事故が起きてるわけではないです。でも非常に強い毒を持ったヘビですね。
石川:ヘビの毒攻撃はもっぱら噛む?
伊藤:吹きかけるやつもいます。
石川:毒霧?
伊藤:そうそう。毒霧。そのまんまドクフキコブラっていう名前なんですけど。
石川:すごい。わかりやすい。
伊藤:噛むヘビは、牙に掘ってる溝とか穴を通して毒を注入するんです。ドクフキコブラはその穴が牙の前の方についていて、そこから前にシューッて毒を飛ばすようになってるんです。
石川:スプレーみたいな。
伊藤:水鉄砲の方が近いですかね。それで相手の目とかを狙って。それが一番ヘビの中では珍しい毒の出し方なんじゃないかな。あとはさっき話したヤマカガシの背中。
伊藤:これは奄美大島にいるハブで、いらすとやのハブは模様を見るにこれじゃないのっていう。
石川:マリメッコみたいな柄。
伊藤:沖縄のハブはもっと細々として複雑になるんです。
石川:写真が暗いですけどハブって夜行性ですか?
伊藤:夜行性です。沖縄に観光に行ってもハブを全然見ないのはそのせいです。沖縄でハブを退治するためにマングースを入れたんだけどうまくいかなくて、それはマングースは昼間に活動するタイプで、時間帯が噛み合わなかったっていうのが大きな要因のひとつなんですね。
石川:それは入れる前に気づいてほしかったですね。
伊藤:これはサキシマハブっていう石垣島とか西表島とか先島諸島に住んでいるハブです。普通のハブよりも毒は弱いんですけど、現地のハブとりをやってる人に聞いたら「その代わり壊死が早い」って怖いこと言ってましたね。
石川:壊死が早い。そもそもなんですけど、ハブの毒ってどうなるんですか。
伊藤:派手にグローブみたいものすごく腫れて、肉が壊死して黒ずんできて……みたいな感じになります。ただ最近はハブの毒の成分に神経毒も含まれているのがわかったらしく。
石川:ブレンドされてるんですね。こわっ。
伊藤:これもサキシマハブ。サキシマハブって色のバリエーションが豊富で。さっきのは茶色でこっちはバイオレットじゃないですか。
石川:色も模様も違いますね。
伊藤:もうちょっとピンクっぽかったり、白っぽいのもいます。
あと、トカラ列島にすむ小さくて毒の弱いハブ「トカラハブ」もカーキっぽい色と真っ黒なのとでカラバリがあります。
伊藤:真っ黒に見えるけど近寄ってくとカーキのと同じ模様が入っているんです。でも全然目立たないでしょ。そういうバリエーションも楽しい。ハブの色でペイントソフト作れないかなってくらい。
石川:ハブ色だけのパレット。
伊藤:ヒャンというちっちゃいヘビなんですけど、これも毒ヘビです。コブラと同じ仲間。
石川:コブラの仲間けっこういますね。
伊藤:これは40~50センチくらい。すごくちっちゃいヘビです。口もちっちゃいし、後ろの牙の方に毒牙があるので、噛まれた例はほぼない。
伊藤:これは普通のハブですね。加計呂麻島っていう奄美大島の南側にある島で。これも大きかったですね。1m50~60cm。
石川:これもハブですか?
伊藤:はい。模様がシンプルじゃないですか。これは久米島っていう島にいるハブ。久米島型って一般的に言われてるんですけど。……一般的?
石川:あはは。一般の人はハブの模様の話しないですよ。しかしこれ綺麗ですね。金色。
伊藤:背中の上だけハブ的な模様があって他は単色。すごい綺麗。これを無人島まで探しに行った記事があります。ハブ取りの名人の方と一緒に行って。
伊藤:ハブ捕りを30年やってるっていう。ほんとにレジェンド級のハブ取りの人。
石川:ハブ取りを長年やってるってどういうことなんですか。
伊藤:民家の近くを見回ったり、ハブが出た時に依頼を受けて捕ったりしています。沖縄ではハブ酒の会社とか、ハブを生体展示している施設とかが買い取っていたりしていますが奄美大島では役所にハブを届けるとお金がもらえる制度があったりもします。
石川:へー
伊藤:奄美大島は前は1匹5000円で引き取っていたので、専業でやってる方もいたみたいですね。いまは値段が下がっちゃったのでハブ捕りする人は減っていますが、タクシーはトランクにハブを捕獲する機器を積んでいて、流している時に見つけると捕ったりしているそうです。
石川:それは害獣を駆除したからお金がもらえるってことですか?
伊藤:そうですそうです。それも難しいところなんですよね。生活圏に出てくるハブは危険だから駆除しなきゃいけないですけど、1匹5000円という値がついちゃうと森の奥や山の中まで探しに行っちゃったりとか。
石川:ハブって外来種ではないんですか?
伊藤:外来のハブ(タイワンハブ)が問題になったり、本来住んでいないところへ人の手で移動されちゃったのもいますけど、基本は在来のが多い。
石川:それを必要以上に駆除しちゃうのもまた問題と。
伊藤:生態系を守るという意味ではネズミが大増殖しないのもハブのおかげだったりもするし。ある一定の、ハブに食われるべき動物もいるわけです。
石川:さっきマングースはハブの駆除のために運ばれてきたっていう話がありましたね。
伊藤:何かを退治するために外来種を持ち込んで、それが増えて問題になっちゃったっていうケースはヘビの他にもあって。石垣島では畑の害虫を食べてもらうためにオオヒキガエルを持ってきたのが増殖して問題になっちゃっていたり。
石川:オオヒキガエルの流れで、最近の毒活動のトピックスがあると聞きましたが。
伊藤:オオヒキガエルって中南米原産のでかいヒキガエルで、めちゃめちゃ強い毒を持っているんですね。天敵もいないし繁殖力が強いので激増しちゃって。石垣島にハブ探しに行くと、普通に夜ぴょんぴょん飛んでます。まだいないほかの島では資材に紛れて入っちゃったりしないように注意が呼びかけられてます。
石川:どんどん広がると困るから。
伊藤:今年、小浜島っていうところでハブを探していたんですけど、道端にオオヒキガエルがいるのを見つけてしまって。小浜島の役所に報告したんですね。そしたらやっぱり小浜島での発見は初めてだったらしくて。
石川:おお、第一発見者に。
伊藤:これは由々しき事態だっていうことで環境省の方から連絡が来て。写真を提供して、環境省がニュースリリースしてメディアで報じられてたっていうことがありました。
石川:この写真の撮影者が伊藤さん。
伊藤:そうです。今年のゴールデンウイーク明けですね。
石川:「中央部の路上で観光客が発見」。この観光客が伊藤さん。別の記事だと「観光目的で同島を訪れた一般人が」。
石川:ハブ取りは観光目的に含まれるんですね。
伊藤:しかも夜。周りの住民の方もNHKのインタビューだと知らない知らないって言ってるみたいで、そんなに夜出歩いてる人いないですよね。
石川:相当不審者じゃないですか。
伊藤:あっ。そうですね。それは重々。だから、僕はあえて山のほうとか奥のほうに探しに行きます。集落周りではやらない。
石川:不審すぎるから。
伊藤:不審だし、そこで発見してしまうことのやばさもあるじゃないですか。じゃあ、駆除しなきゃいけないのかとか。
石川:不安を煽ってしまうというのも。
伊藤:敢えてダムの方に行ったりだとかということをやって探してますね。
この対談は、先日放送したトーク配信『樹液でも飲みながらライターに専門分野の話をきく「記事の森」』から抜粋したものです。番組ではこの2倍くらいしゃべってます。対談をお楽しみいただけた方はぜひアーカイブをどうぞ。
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