特集 2021年4月14日

母校の制服オリジナルリカちゃんを、当時の自分の着こなしにする

35年前のことでありました。

この3月で、私の通っていた群馬県立桐生女子高等学校がなくなった。同桐生高等学校と統合されたのだ。

ところで昨年、「制服リカちゃん」の桐生女子高校版(以下、桐女)の案内が送られてきて、いよいよかと思い予約していた。それが先日ついに届いた。

手にとって、ああこんな制服だったなと思う反面、自分でもこの空虚さがわけわからない。多感な時期に通っていた学校がなくなったというのに、なんだか遠い気持ち。

ああ、もしかしたらこうしろということだろうか。このリカちゃん、自分用にカスタマイズすればいいのかもしれない。

1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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おもひでぽろぽろ

「制服オリジナルリカちゃん」とは、同窓会サポート会社の株式会社サラトとタカラトミーとでタイアップした企画で、その学校の実際の制服を着たリカちゃんのことである。学校の制服変更の際や周年祝いなどのタイミングで作られ、同窓生や受験生などに好評を得ているようだ。

まずは皆さん興味津々の、母校版リカちゃんをご覧いただこう。

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まさかこの歳になってリカちゃんをお迎えすることになるとは。
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母校の説明部分はこの写真のみである。生徒用玄関、なんど夢に出てきたか。
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勇気を出して、封を切る…!

フィギュアを鑑賞するのに箱から一切出さないお作法もあるが、私は出しちゃう派である。でもこのリカちゃんくらいは保存用と遊ぶ用に買っておけばよかったかな…と少し後悔した頃、母から「私も買っちゃったよ」と電話が来た。母も同窓生なのだ。じゃ保存用は母のをたまに借りよう。

さて、これが桐生女子高校の在りし日の制服姿だ。

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黒一色のレトロ風味セーラーが実はけっこう人気があるようで、近年の制服ランキングでも常に上位だったのだ。
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これは夏〜秋くらいの、ブラウス仕様。下着が透けないよう、ダサい学校指定肌着が推奨される。
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おお、印刷とはいえ、白線&角のループも再現されている!
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校章&タイのこの感じもなかなかの再現度。

制服リカちゃん、ビジネス的にもいい企画である(何様)。タカラトミーさんもニクいことをする。

手にとったことで、このまま保存しておきたい気もふつふつと湧き起こってきたが、いや、今の私にできることをしよう。

このリカちゃんは全桐女生のイメージを具現化した、いわばイデア的存在なわけだが、リアルな当時の自分からは少し遠い。この子に当時自分がよく着ていた服やお気に入りの小物を持たせて、「桐女生 啓子ちゃん」を出現させようと思うのである。

さて、まずは髪型だ。1年の頃はリカちゃんみたいなおかっぱだったが、3年頃には髪も伸び、髪型も自由になってくる。

あの頃の写真とともに進めていかねばなるまい。バババーン!

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縦巻きロールにリボンだ!

言い訳をしておくと、桐女は最寄駅から自転車で20分ほどもかかる、田園地帯のど真ん中にあった。その上、女子校である。周囲の生徒も、実にのびのびと、男性の目を気にせずにあけっぴろげに息づいていたのだ。この私のチックル+イライザ風縦ロール(引用が古い)も、半分ネタとしてやってた覚えがある。

そもそも、これを整える過程がちょっと面白いのでたまにやっていた。今日はそれを懐かしくなぞってみたい。

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風呂上がりの頭をいったん乾かし、ヘアムースなどなじませた(つもり)。
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くるくる縦に丸めたら、アルミホイルでぎゅっと巻いて就寝。

朝起きてホイルを外せば、立派な縦ロールになっているはずである。くれぐれもホイルを外し忘れて外出しないようにしたい。

さてホイルローリングを施術している間に、小物や服をあつらえよう。

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似たような布を家で探したら…保湿用手袋が眠っていた。これを拝借だ。
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ミシンだとよれるので、手縫い…
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布用ペンでしましまにする!

そう、制服リカちゃんに白と黒しか靴下が入ってないので思い出した。当時、校則でその2色しか認められてなかったのだ。でも私らは「2色入ってんだからこれでいいだろ」と拡大解釈して、このしましま靴下を履いていっては先生に注意されていた。

あるとき全校集会で「靴下をもっと自由にしてほしい」と生徒側から発議があり、私もなんか一席ぶったような記憶がある。

…思い出してきた。内容はほとんど忘れたが、よくわからないくせにジョン・F・ケネディの言葉を引用した気がする(「国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく…」ってアレ)。うわああああ今めちゃくちゃ恥ずかしい。それにお前はどっちの立場でこれを言ってたんだ。

最終的に「白黒ストライプは許可する」という謎の方針が取られるようになって結果オーライではあったが、いったいどんな議事進行だったんだ。

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嬉しはずかしDCブランド

さて続ける。次はこのトレーナーと、トートバッグだ。

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放課後の自習の一コマだろう。「赤いきつね」「わかめラーメン」が見える。
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修学旅行先の奈良か京都だな(そういえばこのアディダスの3本線スニーカーも流行っていたな)

DCブランド全盛期である。上の、オフホワイトのトレーナーは、がんばって買った「BIGI」のトレーナーだ。BIGIの両袖が皮製のスタジャンが欲しかったのだが、とても手が出なかった。トートは、DCブランドではないがたしか「ミキハウス」のだったと思う。このトートが学校で流行っていたと思う。

桐生は「西の西陣 東の桐生」と並び称されるくらい織物の盛んなところで、実家が織り屋さんや染め屋さんの友人もたくさんいた。そのせいでか、市内にはこの街の規模にしては数多くのDCブランド店がひしめいていたものである。今はそこまでの勢いはなくなってしまったが、またがんばって興している方々もあるようだ。

覚えているだけでも、BIGI、メルローズ、PERSON’S、NICOLE、ATSUKI ONISHI、Y's、COMME des GARÇONS、COMME ÇA DU MODE、INGEBORG…、ああ思い出すだけで泣けてきた。それらが市内で買えたのだ。っつっても高いのにはほとんど手が出ず、しかも普段は制服だからトレーナーとかが精一杯だったけど。

BIGIのトレーナー、再現したいのだけど背中のロゴがまったく思い出せない。当時はスマホも、デジカメさえもないから、持ってた服の記録がほとんどないのだった。しかしうろ覚えで作ってみる。

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100円ショップで似た色の靴下を買う。布もトレーナーっぽいし。
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トートは、家に似た生地があった。今回全部制作物が小さいので老眼にはきびしいわい。
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ロゴは、別布に印刷して貼り付けることでなんとか。BIGIのロゴがやっぱり思い出せない。

想定外のセーラー改修が道を阻む

さて、こうして作ったトレーナーをまた思い出話とともに登場させたいのだが、ここでリカ制服をかえりみると…こ、これは!!!

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後ろで留める仕様だった!

この「セーラーの襟」を後述する事情から立てられるようにしたかったのだが、縦にズンと分割されていて、それができない。なぜだ!ここセーラーのポイントなのに!(これは改修中、「ネクタイ」の処理他、理由がわかりすぎるほどわかった。苦渋の決断だったかもしれぬ)

うーん、ここが思い出的にけっこう重要なのだが…というわけで前開きに改修だ。とほほーい。

でも、ここをちゃんとやれば、全桐女生に胸を張って報告できる。私は前開きに改造したぞ、と。後に続け、と。

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オリジナルにあまり手を入れたくなかったが、いたしかたあるまい。
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面ファスナーを前に付け替える。一大仕事となった。ネクタイにもスナップつけたり。

ここでまた思い出した。バッグ、こんなのも強く印象に残っている。

たま〜の東京遠征で、雑誌「olive」を片手にお目当ての雑貨屋めぐりをしていたとき「宇宙百貨」で買った「地球バッグ」である。これもなんとか作ろう。

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球体なのでめちゃ大変でした。

最後に、このコートをぜひ作りたい。以前、「超地元!実家まわり観光案内」で少しだけ話した「全て合皮製の重いコート」である。探したら、大学入っても着てたようで写真が残っていた。

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先輩の卒業式にて。ファー付きフードまで付いてたのか。重いわ。

当時、桐生の街なかに1件のセレクトショップっぽいのがあって、面白い品揃えで東京の風も感じるしで、けっこうお気に入りの店だった。そこで間違って買ったのがこの合皮のコートだ。私が買えたのだから1万しなかったはずだ。

着てたら上毛電鉄車内で不良にからまれたのだが、それは記事の最後に再現してみようと思う。 

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目見当だが制服を目安にちゃんと作る。

 さてここで、縦巻きロールはどうなったか見てみましょう。

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全然巻けてなかった。

髪が短いので当たり前か。虫みたいにしてごめんなリカ。仕方ないのでせめて赤いリボンでごまかそう。

いちおう作りたかった服はひととおり作れたので、着せて撮影したいと思います。

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しまった、かぶせ方式では頭が通らない!と思ったけどトレーナーだったので余裕。
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35年前の私がそこにいた(顔面以外)

こんな風に、山あいの女子校に通っていました。

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髪型は雰囲気です、お察しください。
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ロゴ、だいたいこんな雰囲気だったような。

まぁ、ブランドはロゴが命、ロゴをとにかく見せたい!ってなもんなのでオールOKだ。

しかしここで厳しいチェックが入る。校門でだ!

年配の体育教師(「スピーディーに行動しろ」が口癖なのでスピーディーというあだ名だった)による、「上にオーバーなど羽織るときはセーラーの襟を出す」という謎の校則遵守のためのチェックが厳しく、ことごとく襟を出させられた。「セーラーの襟を立たせたい」という思いは、このエピソードを開陳するためだったのである。

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「やべ、スピーディーだ!」「襟出せ!」「グエッ!」って感じで。
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ロゴもトレーナーの襟ぐりも台無しに。

こんなファッションあるか。しかし当時の桐女生が上の写真を見たら、号泣するにちがいない。私も涙でモニターが見えません。この後ろ姿…秋口の本町通りに大勢いた。間違いなく桐女生だ。

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地球バッグは、本当にこれくらいのスケール感だった。
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自転車に乗るときはイレギュラーな背負い方で。文字通り地球をしょって通っていたぞ。

そこに、問題の「合皮コート」が入る。 

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なんだか大変なことになっている高校生。

コートは重い上に、若さの欠片もないデザインだった。

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作ってて思い出した、こういう切り替えが背中にあった!なんてハードな女子高生だ。
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布も固いので、横から見ると前後にすごく広がっていた。東京にまで持ってくほど気に入ってたのか。

さて件の「合皮コートからまれ事件」を再現して終わろう。

ある朝の上毛電鉄、西桐生行きの混雑した車内ー

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ガタンゴトン…(ほうこうさん人形とコケシは、他校の怖い女生徒です)
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怖い女生徒「なんだよ、コート邪魔なんだよ」
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怖い女生徒「皮だからって調子乗んじゃねーよ!」私「(あわわわわ)」
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私「皮じゃないよ、合皮だよ!」(ドヤァ
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怖い女生徒「なんだよこいつ…」

以上、実話です。最後のコマで向こうは明らかに調子を狂わされているが、勝ち負けで言ったらたぶん私の負けだろう。

***

人形の服を作るのはあまり得意でないのでものすごく大変だったが、「あの頃の自分版リカちゃん」作りはとても楽しかった。このリカちゃんに血肉を与えることができた気がする。

作るうちに女子校でのできごとがぽろぽろと思い出されてきて、私はたくましい女子校で、のびのびと自由にさせてもらったんだなぁと、ひたすら懐かしかった。

 


そして今は

統合後の制服が気になっていたのだが、セーラーは残るようです。ウェストが長めのプリンセスラインになるようです。これもまた短めに改造する猛者が現れるんだろうか。

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確実に時代は変わっていく、だが学ランは不変だ(桐生高等学校Webサイトより)。

【告知】

デザフェスVol.53、5月30日だけ出ます!
青海展示棟にて、ブースNO:E-123です。よろしくお願いします。

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