はじめに
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ライターに地元のうまいものを紹介してもらうコーナーが終了しまして、今回から新コーナーです。昔からずっとある店を紹介してもらいます。初回は編集部の古賀からです。
古賀及子
イトーヨーカドーとファンシーショップ、
小田急相模原駅の近く
小学校の3年生だったか4年生だったかの頃、近所の友人たちと私、みんなが一斉に親に自転車を買ってもらった。
社宅の裏の空き地のほかに緑道沿いにある駄菓子屋に行くくらいしかできなかった私たちの行動範囲は一気にひろがり、大通りの先にあるイトーヨーカドーに自力で行けるようになった。
大変なことだ。このイトーヨーカドーは、当時大流行中のビックリマンチョコを多めに仕入れることで有名な店で、休みの日に親にねだってねだって連れて行ってもらえたら超ラッキーというレアな場所だったのだ。それが放課後毎日でも行けるようになった。自転車を駆る私たちは興奮で輝きに輝いていたと思う。
イトーヨーカドーに出入りするようになって知ったのが、その向かいにある文具店の存在だ。当時はファンシーグッズというものが世にあふれはじめた最初の頃で、それまで学用品を真面目に商っていた文具店が棚を割いてかわいいイラストつきの文房具やポーチ、タオルといった布ものを並べ自らをファンシーショップであると名乗りはじめた。
イトーヨーカドーの前にある文具店もまた広い店内にみっちりとファンシーグッズを並べて我々の目をいっそう輝かせてくれた。
この店が得意だったのが消しゴムで、イラストつきのもの、においつきのもの、変わった形のものなど通うたびにラインナップが力強く増えて行くのが頼もしかった。
小学生たちが沸きに沸いたのが、金太郎飴のような長い状態の消しゴムの切り売りを始めたことで、一行は断面をじっと見定めてお小遣いでできる限りたくさんの種類を買うべく1センチ単位でお願いして切ってもらって集めた。
もう30年以上前の話だ。最近なんだかふと思い出して、ストリートビューであれはどこだったのだろうと、当時の自宅から小学生が自転車で行けるあたりを探してみて、すんなりイトーヨーカドーが見つかったのには驚いた。併設のマクドナルドもそのまま現存していたのだ。屋上のサインにはセブンアンドアイのマークも入るが、ハトのマークも健在だ。
場所は小田急線の小田急相模原駅の近く。
失礼ながらまさかと思ってしまったのは、あのファンシーショップまでもが、過去のストリートビュー画像としてではなく、最新の画像として写っていたこと。間口の様子はおそらく当時と変わっていない。少し古びたお店のネオン看板に店名が「スリーアップ」だったことを知った。
現在の住まいからもそう遠くはなく、先日、だいたい35年ぶりくらいでたずねてみた。ぼんやり電車で向かう道中、窓の向こうに子どものころ遊んだ公園が見える。
「スリーアップ」は、今も消しゴムのラインナップが豊富だった。そこを脈々とさせるのかと思うとうれしくて笑ってしまう。
私の記憶力が悪すぎて、何がそのままで何が新しくなったか正確には把握できなかったのだけど、ああここに、友人たちと団子になって押しかけて、長い消しゴムをうねらせながら両手でレジまで持って行ったんだと、そう思うと「現存」ということの凄みに体が足からリノリウムの床に溶け出しそうだ。
消しゴムのほか、ファンシーグッズも今なお大充実している。私も相変わらずかわいいものが大好きなままだから、欲しいものはいくらでもあった。
あの頃みたいに厳選してレジに持って行って、店員さんに30年以上ぶりに来たんですと言うと喜んでくださって、「もしお近くまでいらしたらまたぜひ」とスタンプカードをくれた。
私いま、小学生の頃通った文房具屋のスタンプカードが、財布に入ってるんですよ。
終わって解説です
古賀さんにこのコラムをお願いしたら、わざわざ行ってきてくれました。ですが行ってしまう気持ち、めっちゃわかります。小学生に行っていた文具店があったらそりゃ行くでしょう!買った文具を入れてもらった紙の袋が味わい深いです。
今から入会しても、過去に掲載したコラムのバックナンバーは、はげます会専用ページで全部読めます。(はげます会担当 橋田)