築地の場外はメチャクチャにぎわっている
平日のお昼に築地の場外に来たのだが、観光客がすごい。外国人と修学旅行生だらけである。
ご存じの通り、築地の魚市場はすでに豊洲に移転している。しかしこの人混みはまるでそんな事実などなかったかのようだ。
Q.なぜ築地にこんなに魚介を中心としたお店が多いんでしょうか?
A.それはむかし築地に魚市場があった名残なんですね。
頭の中で唐突にそんなクイズ番組が始まった。全てを忘れ去られた50年後くらいのクイズ番組である。
魚卵の専門店・田所食品
ここが魚卵の専門店「田所食品」である。
やってきたのは僕と、編集長の林さん、編集部の古賀さんだ。編集部2人のニヤニヤがすごいことになっている。今にも口からヨダレが垂れてきそう。大人がこんな表情しているのあまりない。
しかし、僕の表情も2人と大差なかったものと思われる。魚卵があまりにも美しいのだ。以下の画像を見てもらうと、読者の皆様もたぶんこんな顔になってしまうと思います。
スジコとイクラが大量にあるという事実
スジコがどんと並んでいる。スジコの赤さに目がどうにかなりそうだ。
こちらはイクラが山盛り。どちらも寿司屋に行ったら注文するのに躊躇してしまうような高級食材である。それがデーンと業務用の容器に載っている。
大量のいくらをしゃもじですくう。
店員さんはこんな得がたくて柔らかい物を、がっさがっさとしゃもじで小分けに移し替えてゆく。これがすごい。
例えば、生まれつき女性にモテるタイプの男性は、そうでない男性とくらべると女性への接し方というのが全く違う。
それと同じようにイクラを普段から扱っている人だけが持っている「イクラに対する緊張感のなさ」が店員さんから出ているのだ。当たり前のようだけど、これに僕はビビりました。
ものほしそうに見ていたら「食べてみます?」と店員さんに言われて、無造作な感じで手のひらの上に乗せてもらえた。
こんなにもらっちゃっていいんかいな……。と思いつつ食べる。
うんめぇ。
粒の一つ一つが大きい。皮はしっかりと丈夫である。口の中で破るとしょっぱくてうまい汁が口の中に激しく飛び散る。そうか、イクラって爆弾だったんだ。
タラコや明太子の「粒」の存在感がハンパない
イクラだけではない。タラコや明太子もきちんとひかえている。
こんなに整然とならんでいる明太子見たことない。
店員さんがどんどん手に乗せてくる。
うめえ~
タラコの粒ってものすごく小さいだろう。ふだん食べているタラコは「ペースト」のようにしか認識できない。グチャグチャなのだ。
しかし田所食品で売られているやつは違う。「タラコとは一つ一つの粒が集合してできたものだ」という当たり前の構造がはっきりと口の中でわかる。
食材がうまいというのはこういうことなのだろう。
ちなみにタラコの原産地はほぼアメリカとロシアなのだそう(一部北海道もあり)。それを博多に持っていって辛く味付けすると明太子になる。明太子の味付けなんて、どこでもできるような気がするが、やはり博多でやるといい味が出るらしい。
その明太子がここ築地で売られている。移動距離がもうワケ分からないくらい長い。タラが生長して生涯泳ぐ距離とどっちが長いんだろうと思う。
子持ちコンブが厚すぎる
続いて子持ちコンブ。数の子の層が厚すぎる。まるでシベリア(カステラであんこをはさんだお菓子)みたいになっちゃっている。
衣装ケースのような入れ物に保管されている。業者感がすごい。実際業者なんだけど。
店員さんが子持ちコンブの作り方を教えてくれた。子持ちコンブは「コンブを海に沈めてニシンにタマゴを産ませる」という。人が手でつけているのだとばっかり思っていた。
子持ちコンブはカナダで作られているものがほとんどだという。先住民の末裔の人達が、子持ちコンブを作る技術を代々受け継いでいるそうだ。
信じられないくらい壮大な話だ。驚いた古賀さんが「こりゃすごすぎて日本のお正月に食べている場合じゃないっスね~」と言っていた。
お正月に食べることの是非はおいておいて、とにかく今すぐにでも、我々は子持ちコンブへの接し方を考え直さなくてはいけない。そう思わせる来歴である。
魚卵じゃないイカの塩辛もある
塩辛もうまそうだった。魚卵ではないが、珍味つながりということだろう。
これを見て「うまそう~」って思うの、だいぶビジュアルを知識で処理している感じがする。
食べると当然うまい。
これだけの珍味の連続攻撃に、読者の皆様方は口の中がしょっぱくなってきてはいませんでしょうか。
僕は忙しい中タダで試食させてもらっているにもかかわらず、お店の人に「お水ってもらえますかね?」とお願いしていた。水がどうしても飲みたくなるくらい魚卵を食べるなんて、本当に幸せだと思う。
飯が食える
これだけ魚卵を食べ続けているとどうしても「ご飯と一緒に食べたいな」という気持ちが芽生えてくるものだ。
田所食品はそんなワガママな欲求にもバッチリ答えてくれる。食堂のようなスペースがあるのだ。
イクラ丼。右下のポットには出汁が入っており、好きなタイミングで「イクラ茶漬け」にすることができる。
こちらはイクラと鮭の親子丼。
まじまじと見つめてしまう……。
ご飯と魚卵。共に進むべきパートナーであることを確信した。
お茶漬けにコンバート。けっこうボリュームがあるので途中で変えられるのはありがたい。
こちらはサケとイクラの親子パスタ。かなり太い麺である。これ自体が当然うまいのだが……。
麺を食べ終わった後に、サービスで「追い飯」をつけてもらうことができる。バターとサケとイクラが白いご飯に絡みついて最高の味だ。ビジュアル的にはちょっと残念だが、そんなことはどうでもいい。
おにぎりもある。今回は食べなかったけど、これもうまそう。
「さば」や「紅鮭」などの焼き魚がサイドメニューとして表示されているのがおもしろかった。ふつうはこっちがメインメニューだと思う。