今日の街
池袋店
・乱切りそばの風味が良い
・土地柄、サラリーマンが多い
池袋駅東口店
・あっさり食べられる美味しいおそば
・バラエティー豊かな人を受け入れてくれる懐の広さ
池袋駅西口店
・がっつりストロングスタイル
・立教大学の学生向けの味かもしれない
「街ごとの違い」とはなんだろう。
同じ駅でも、西口と東口の雰囲気が全然違うことがある。
あるいはそれは、富士そばでも同じなのだろうか。
今回は、そんな話である。
編集部よりあらすじ:
五反田、自由が丘、水道橋、王子と順調に富士そばの味の違いを確かめているライター谷頭。それぞれの街に確かな違いを感じてきたがいよいよ今回は「同じ街にある別店舗の違い」に挑む。果たして……!?
池袋駅にきた。
私が初めて富士そばに入ったのはこの池袋だった。
それは、池袋駅東口から歩いて数分の場所にある「名代富士そば 池袋店」。
初めて富士そばを食べたのはいつだっただろう。たしか、小学生ぐらいだったと思うが、何年も経って富士そばの食べ比べをしているなんて頭の片隅にさえなかったろう。
当時は気づかなかったことが、ずっとよく見えてくる。
これが成長なのかもしれない。
例えば、店頭に書いてある「乱切りそば」。
そんな疑問を抱きつつ、懐かしの店内に入ってみる。
たしかに、券売機には「乱切りかけ」とか「乱切りもり」といったメニューが書いてある。ここでは、普通のかけそばも「乱切りかけ」になるらしい。
乱切りとは、そばがさまざまな太さで切られているもので、そうすることによってそばの風味をより豊かに感じることができるらしい。
食べてみよう。
たしかに、そばの風味が普通とは違う。蕎麦の風味が強くきわだつ、そんな一品である。
実は富士そば池袋店の裏手には、昨年大規模に再開発された一帯があって、そこにオフィスビルなども多くある。彼らは、そこで働いている人たちかもしれない。
さながら、ここは大手町か、丸の内のよう。働く大人の強い味方としての富士そば。その原点の味がここにある。私の富士そばの原点もここから始まったと思うと、感慨深い。
ここから歩いて数百メートルぐらいのところに、また別の富士そばがある。
その名も、「名代富士そば 池袋東口店」。
「池袋店」とは違うのだ。
富士そばを運営しているダイタングループはいくつかの子会社があり、それらが独自に出店場所を決めるため、近い場所での出店が行われることもある。
ここは、普通のかけそばを提供しているらしい。
先ほどの店舗に比べるとおしゃれな内装をしていて、テーブル席なども充実しているから、さきほどサラリーマンの中で感じた喧騒はそこまでない。
どちらかといえば、落ち着けるような店内だ。
乱切りの風味もいいが、やはり普通のかけそばのスッキリ感もいい。乱切りが、ツウ向けだとしたら、こちらは万人に受け入れられる味といったところだろう。
そう思って考えると、メニューも、池袋駅東口店の方が多種多様である。
この、万人に受け入れられやすい感じはどこからきているのだろう。
そうか、と思って私は机に大きく地図を広げた。
実は富士そば池袋駅東口店、池袋店と比べると、少しだけサンシャインシティに近いのである。サンシャインシティは、家族連れやカップルに人気のレジャー施設。そして池袋駅からそこへ向かうサンシャイン通りは、いつも多くの人で賑わっている。
つまり、よりバラエティー豊かな人が訪れるのが「池袋東口店」なのだ。だからこそ、万人に受け入れられやすい味と、いろいろなメニューを取り揃えているのかもしれない。
この数百メートルの差が2つの富士そばの雰囲気や味を変えるのではないか。
池袋にはもう一つの富士そばがある。
それが池袋駅西口店だ。
この富士そばは随分とストロングスタイル。
なぜこんなにガッツリなのか。そうか、池袋駅西口の近くには、立教大学がある。もしかしたら、これは学生向けの商品なのかもしれない。
ある人が、池袋には街の全てがある、と言っていた。学生街から歓楽街、そしてオフィス街……。雑多で、多様性に満ちている池袋。
そしてそれに合わせるようにして、富士そばも同じ池袋でありながら、絶妙に形を変え続けている。富士そばが同じ街でたくさんの店を出していることが、その多様性を映しだす。
富士そばは、街の微妙な変化も見逃さない。
少しそばを食べすぎた。
落語の「そば清」を思い出す。そば食い競争をする男の話だ。池袋西口店を出てふと横を見ると、落語の寄席「池袋演芸場」があった。今日は落語でも聞いて帰ろうか。
池袋店
・乱切りそばの風味が良い
・土地柄、サラリーマンが多い
池袋駅東口店
・あっさり食べられる美味しいおそば
・バラエティー豊かな人を受け入れてくれる懐の広さ
池袋駅西口店
・がっつりストロングスタイル
・立教大学の学生向けの味かもしれない
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