れんさい企画「小出し記事」 2020年8月18日

富士そばは街ごとに味が違うらしい その3

「街ごとの違い」とはなんだろう。

同じ駅でも、西口と東口の雰囲気が全然違うことがある。
あるいはそれは、富士そばでも同じなのだろうか。

今回は、そんな話である。

編集部よりあらすじ:
五反田、自由が丘、水道橋、王子と順調に富士そばの味の違いを確かめているライター谷頭。それぞれの街に確かな違いを感じてきたがいよいよ今回は「同じ街にある別店舗の違い」に挑む。果たして……!?

1997年生まれ。大学院で教育学を勉強しつつ、チェーン店やテーマパーク、街の噂について書いてます。教育関係の記事についても書きたいと思っているが今まで書いてきた記事との接点が見つからなくて途方に暮れている。

前の記事:富士そばは街ごとに味が違うらしい その2

> 個人サイト Note

富士そば池袋店

池袋駅にきた。
私が初めて富士そばに入ったのはこの池袋だった。
それは、池袋駅東口から歩いて数分の場所にある「名代富士そば 池袋店」。

fujisoba_3_1.jpg
名代富士そば 池袋店

初めて富士そばを食べたのはいつだっただろう。たしか、小学生ぐらいだったと思うが、何年も経って富士そばの食べ比べをしているなんて頭の片隅にさえなかったろう。

当時は気づかなかったことが、ずっとよく見えてくる。
これが成長なのかもしれない。

例えば、店頭に書いてある「乱切りそば」。

fujisoba_3_2.jpg
なんだろうか

そんな疑問を抱きつつ、懐かしの店内に入ってみる。

たしかに、券売機には「乱切りかけ」とか「乱切りもり」といったメニューが書いてある。ここでは、普通のかけそばも「乱切りかけ」になるらしい。

fujisoba_3_3.jpg
券売機の上にも書いてある

乱切りとは、そばがさまざまな太さで切られているもので、そうすることによってそばの風味をより豊かに感じることができるらしい。

fujisoba_3_4.jpg
きた。普通のかけそばと麺の太さが違うことがお分かりいただけるだろうか

食べてみよう。

たしかに、そばの風味が普通とは違う。蕎麦の風味が強くきわだつ、そんな一品である。

fujisoba_3_5.jpg
店内には、サラリーマンが多かった

実は富士そば池袋店の裏手には、昨年大規模に再開発された一帯があって、そこにオフィスビルなども多くある。彼らは、そこで働いている人たちかもしれない。

さながら、ここは大手町か、丸の内のよう。働く大人の強い味方としての富士そば。その原点の味がここにある。私の富士そばの原点もここから始まったと思うと、感慨深い。

いったん広告です

富士そば池袋駅東口店

ここから歩いて数百メートルぐらいのところに、また別の富士そばがある。
その名も、「名代富士そば 池袋東口店」。

「池袋店」とは違うのだ。

富士そばを運営しているダイタングループはいくつかの子会社があり、それらが独自に出店場所を決めるため、近い場所での出店が行われることもある。

fujisoba_3_6.jpg
外観

ここは、普通のかけそばを提供しているらしい。

先ほどの店舗に比べるとおしゃれな内装をしていて、テーブル席なども充実しているから、さきほどサラリーマンの中で感じた喧騒はそこまでない。

fujisoba_3_7.jpg
おしゃれなポール

どちらかといえば、落ち着けるような店内だ。

fujisoba_3_8.jpg
きた。本日2杯目のかけそばである

乱切りの風味もいいが、やはり普通のかけそばのスッキリ感もいい。乱切りが、ツウ向けだとしたら、こちらは万人に受け入れられる味といったところだろう。

そう思って考えると、メニューも、池袋駅東口店の方が多種多様である。

fujisoba_3_9.jpg
夏限定だろうか、そうめんもある

この、万人に受け入れられやすい感じはどこからきているのだろう。

そうか、と思って私は机に大きく地図を広げた。

実は富士そば池袋駅東口店、池袋店と比べると、少しだけサンシャインシティに近いのである。サンシャインシティは、家族連れやカップルに人気のレジャー施設。そして池袋駅からそこへ向かうサンシャイン通りは、いつも多くの人で賑わっている。

つまり、よりバラエティー豊かな人が訪れるのが「池袋東口店」なのだ。だからこそ、万人に受け入れられやすい味と、いろいろなメニューを取り揃えているのかもしれない。

fujisoba_3_10.jpg
休日は、いつも人で賑わうサンシャインシティ通り

この数百メートルの差が2つの富士そばの雰囲気や味を変えるのではないか。

いったん広告です

富士そば池袋駅西口店

池袋にはもう一つの富士そばがある。
それが池袋駅西口店だ。

fujisoba_3_11.jpg
外観

この富士そばは随分とストロングスタイル。

fujisoba_3_12.jpg
「肉富士ラー油丼」というオリジナルメニューがある。なんともがっつりだ
fujisoba_3_13.jpg
こちらの店舗も普通のかけそばだが、いつもより量が多く、ツユも濃く、がっつり食べられる気がする。私が、本日3杯目の富士そばだからかもしれない

なぜこんなにガッツリなのか。そうか、池袋駅西口の近くには、立教大学がある。もしかしたら、これは学生向けの商品なのかもしれない。

fujisoba_3_14.jpg
立教大学。そう考えると納得がいく

ある人が、池袋には街の全てがある、と言っていた。学生街から歓楽街、そしてオフィス街……。雑多で、多様性に満ちている池袋。

そしてそれに合わせるようにして、富士そばも同じ池袋でありながら、絶妙に形を変え続けている。富士そばが同じ街でたくさんの店を出していることが、その多様性を映しだす。
富士そばは、街の微妙な変化も見逃さない。

少しそばを食べすぎた。

落語の「そば清」を思い出す。そば食い競争をする男の話だ。池袋西口店を出てふと横を見ると、落語の寄席「池袋演芸場」があった。今日は落語でも聞いて帰ろうか。

fujisoba_3_15.JPG
こんなところでまた、富士そばから街に思いを馳せてしまった

今日の街

池袋店
・乱切りそばの風味が良い
・土地柄、サラリーマンが多い

池袋駅東口店
・あっさり食べられる美味しいおそば
・バラエティー豊かな人を受け入れてくれる懐の広さ

池袋駅西口店
・がっつりストロングスタイル
・立教大学の学生向けの味かもしれない

▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ