今日の街
水道橋店
・夏目漱石ゆかりの街で食べるそば
・漱石の言葉を見ながら食べると味が変化する
・結果、そばの風味を強く感じる一杯に
王子店
・ツユが他の店よりも熱い(気がした)
・他のお客さんも、みんなゆったりしている
・かつての料亭「扇屋」の記憶が流れているのかもしれない
そばの味はツユと麺だけで決まるのでない。
どこで食べるのか。それも味を左右する。
同じようなそばだって、食べる場所で味は変わるのだ。
富士そばでも同じだろう。
編集部よりあらすじ:
本当に違うのか?という編集部の心配をよそに前回の五反田店と自由が丘店は見事に味が違った。BGMも店内の雰囲気も客層も違う。今回は水道橋と王子。渋めの街を選んできた、どうなるのか!?
水戸徳川家の屋敷跡に作られた小石川後楽園。今では、東京ドームシティの遊園地で多くの人が賑わう、その近くに富士そば水道橋店はある。
かけそばを注文。到着まで店内をきょろきょろ見ていると、面白いものを発見した。
夏目漱石の名作『吾輩は猫である』の文章だ。小説の登場人物に言わせた揶揄まじりのセリフだが、それが書として飾ってある。なぜ、漱石か。
実は、水道橋店の周りには漱石ゆかりの地が多い。
近くに「吾輩は猫である」の碑があるし、足を伸ばせば漱石の旧宅もある。『吾輩は猫である』の書が飾ってあるのも、気まぐれではない。
文章によれば、そばは噛んで食べるのは風流ではないらしい。
一気呵成にそばをすすり上げる。なるほど、ちまちま噛んで食べるより、そばの風味が一気に鼻に抜ける。漱石の指南もあってか、いつもよりそばの風味を強く感じる一杯となった。
水道橋店のかけそばは、そばの風味をよく感じる。
傍に漱石がいた。彼の視線を受けながらそばを食べる。
水道橋店の味は、漱石の言葉で様変わり。いわば、漱石は水道橋店のそば職人だ。言葉はときに、最良の料理人なのだ。
あるいは、東京北区は富士そば王子店。
またかけそばを注文。
どこかほっとする味である。この暖かさはなんだろうと思ったら、他の店よりもツユが熱いのだ。
なるほど、周りを見てみると、他の店に比べてゆっくりと食事を楽しんでいる人が多い気がする。
このやすらぎはどこから来るのだろう。
そう思って考えてみると、はっと気づいたのは、富士そば王子店の立地だった。
実はここには昔、江戸でも有数の料亭である、扇屋があったのだ。
王子は、明治時代に日本へ来た外国人によって「日本のリッチモンド」と呼ばれていた(リッチモンドはロンドン郊外にある自然が美しい観光地)。
江戸時代から明治時代にかけての王子はそれほど自然が美しい観光地だったのだ。
江戸から日帰りで行ける観光地として人気で、休日になると、江戸からさまざまな人が集まり、余暇を楽しんだ。今でいうと、熱海や湯河原といったところだろうか。
そうか、ここは昔の料亭。
今も昔もこの地で食事を食べる人は、風光明媚な自然に身を委ねながら、ゆっくりと料理の味を楽しんだのである。
富士そば王子店には、料亭としての土地の記憶が流れ続けている。
最初に書いたが、それぞれの富士そばの味は、ツユの濃さと、そばの風味だけで決まるのではない。
そばを食べる人、街や店舗の雰囲気、そして街を取り巻く歴史がその味を変えていくのだ。
きっと、それが富士そばの街ごとでの味の違いになっていくのではないか。
富士そば、なかなか奥が深い。
水道橋店
・夏目漱石ゆかりの街で食べるそば
・漱石の言葉を見ながら食べると味が変化する
・結果、そばの風味を強く感じる一杯に
王子店
・ツユが他の店よりも熱い(気がした)
・他のお客さんも、みんなゆったりしている
・かつての料亭「扇屋」の記憶が流れているのかもしれない
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