バスツアーはいい、マジで!
いろいろな驚きはあったけれど、今回のバスツアーが楽しかったのは事実だ。知らない国をガイドしてもらえるのは嬉しいし、なにより安心で楽だった。日本語ならなおいいと思う。
海外旅行というものがある。日本ではない場所に旅行に行くことだ。日本にはない文化、食べたことのない料理など、知らなかった世界を直接知ることのできる刺激的な方法だ。
ただ海外旅行には不安があるのも事実。不安の多くは言葉の問題に集約されるだろう。知らない国で言葉が通じないなんて不安で当たり前なのだ。なんとか楽してしゃべれるようにならないだろうか。そこでバスツアーなのだ。
※この記事はJTBがあたらしく始めたヨーロッパの日本語周遊バスMyBusランドクルーズの広告企画です。前回の記事「究極のバス旅をもとめて!日本vs欧州700キロ昼行バスの旅」もぜひご覧ください。
当サイトの編集部安藤さんから「ヨーロッパに行きませんか?」とお誘いを受けた。私はここ1年半くらい中南米しか行っていなかったので、行きます、と即答した。聞くとバスツアーらしく、オランダからベルギーを通りフランスへ行くらしい。
バスツアーなのでてっきり日本から始まるパックツアーだと思っていたけれど、そうではなく、自分たちでオランダの空港まで行って、そこからバスツアーに参加ということで、現地ツアーに近い感じかもしれない。
安藤さんはいう。「地主くん南米好きじゃないですか。南米の衣装を持ってきてもらえる?」と。ヨーロッパに行くのになぜ南米の衣装なのか。若干の疑問と共に不安にもかられたが、それくらいならばと思い持って行くことにした。いつ行きます? と聞いたら、とりあえず集合日にオランダに来てくれたらいいから、と。
てっきり一緒に行くものだと思っていたら現地集合らしいのだ。一緒に行きましょうよ、と言ったけれど「せっかくだから地主くん、イギリスでも見ておいでよ」と続ける。バスツアー開始日にオランダにいてくれればいいから、と。オランダ集合なのに、イギリス行けという謎のおすすめだった。
海外旅行は言葉の問題が高いハードルとなる。イギリスでもそれを実感した。現地の人が言ってることがわからないのだ。大学でようやくbe動詞を理解した私にとって、英語はものすごく高いハードルだった。
でも、イギリスであることに気がついてからというもの言葉の壁はなくなった。
私は日本ではよく家にいる。へたすると1週間以上人と話さない時もある。外に出てもあまり話さない。友達が少ないから。
ということは知っている人がいない海外で、誰と話す必要があるというのか。つまり英語が話せたとしても話すシチュエーションがないのでは、話せなくても同じなのだ。
ただ、その街について詳しく知りたいとなると話が変わってくる。建物の歴史とか、建物の名前とか、知りたいけれど言葉がわからないから「まあいいか」となってしまう。そんなわけでバスツアーというのはとても素晴らしいと思うのだ。ガイドさんがいて、説明してくれるのだろうから。
聞き間違えていなければ、ここに今日安藤さんが来るはずなのだ。海外で現地集合というのはしたことがなかったので緊張感があった。果たして安藤さんは本当に到着するのか、そんなに私と飛行機に乗りたくなかったのか等、いろいろな感情を持ちながら到着を待った。
そしたら来た。遅れてごめんね、といいながら本当に安藤さんはやってきた。モスクワ経由で来たらしい。それもちょっと意味がわからないけれど、とにかく会えてよかった。こういう小さな達成感も旅の醍醐味である。
この日はそのままホテルまで行って一泊して次の日からバスに乗る。しかしこの次の日からの展開が急だった。
安藤さんとホテルで朝食を食べていると、なぜか彼は急にスペイン語の本を僕に渡してきた。聞くとこのバスツアー、どうも南米人向けらしい。つまりガイドも日本語じゃないのだ。南米の格好を持って来いと言われた訳がわかったぞ。
安藤さんは言う「ほら、地主くん言葉を学びたがっていたじゃない。ひとりでイギリスで過ごしたあと、南米人向けのツアーに参加したら否が応にも言語が覚えられるかなと思って」 と。なるほど。ならば英語でよかったのではないか。
しかしツアーはすでに始まっている。時すでに遅しである。
とりあえず必死でスペイン語の本を読み、なるべく同じツアー客と仲良くなれるようにと、日本から持ってきた南米の衣装を着てツアーバスを待った。経験上南米人はノリがいいので、友達になれる可能性は高い。行ける気がする。そう思わないとやってられない、ということもある。
しかしこの私の晴れない顔を見て欲しい。急にスペイン語の本を渡され、南米人向けのツアーだということを理解し、覚悟を決めて南米の衣装を着てバスに乗り込んだのだ。知らされた事実をポジティブに飲み込んだつもりだった。しかし、バスに乗り込むと南米人はいなかったのだ。ひとりもである。
南米人向けツアーと聞いていたけれど、ツアー客はインド人、インドネシア人、オーストラリア人など各国からの人々と我々だった。南米人いない。安藤さんも驚いていたので事情を知る人はもはや誰もいない。
それにしてもこの状況ではスペイン語の本を必死で読み込んだあの時間も、日本から持ってきた南米の衣装も、まぁ必要ないだろう。私一人だけが浮いているのだ。日曜日のアドバルーンくらい浮いているのだ。どうしてくれようか。
期せずしてひとりだけ南米人となりバスツアーは始まった。ガイドさんは確かにスペイン人だったけれど、解説は全員がわかりやすいよう英語、しかもちょっとスペイン語混じりの英語だった。たとえばミュージアムをムセオと言っている。私が得意の日本語じゃないのでどちらにしろわからないけれど。
言葉については私の成長力に期待ということで置いといて、バスツアー自体はなかなかに素晴らしかった。現地集合なので前後は自由にしておいて、今回のようなオランダ、ベルギー、フランスのような現地での移動目的に利用すると楽なのかもしれない。言葉がわからないとどうやって移動していいのかよくわからないから。
ここがどこかは正確にはわからないのだけれど、これぞオランダという景色のところに連れて行ってもらった。チーズが売られている。オランダはチーズの輸出量世界1位らしい。そうガイドさんは説明してくれていたようだが、私はよくわからなかったのでこれは後でスマホで調べた情報だ。
バスで連れて行ってくれるので、どうやって行くんだっけとか、そもそもどこ行けばいいんだっけ、とかいう悩みがない。これまであまりツアーというものに参加したことがなかったので、これは発見だった。楽だ。めちゃくちゃ楽だ。体力的にもだいぶ楽だ。
オランダに来る前はイギリスで2泊くらいしたのだけれど、ツアーじゃないので自力で移動していた。その結果、1日20キロを軽く超えるくらいの距離を歩いていたのだ。それがバスなら座っているだけだ。バス便利と本気で思う。20キロ歩くってなかなかよ。
問題は解説の英語がよくわからないことだけれど、少なくともバスに乗り込みさえすれば次の場所まで連れて行ってくれるので、英語がそれほどわからなくても大丈夫なのだ。これで解説が日本語だったらパーフェクトなんだけどね。ただ今回参加しているのは南米人向けのツアーだから仕方ない。南米人いないけど。あえて言えば、私だけ南米人だけど。
私はこれまでにも何度か海外に行ったことがあり、特に中南米はメキシコ、ペルー、チリ、アルゼンチンに行っている。すべてスペイン語圏の国だ。おかげで言葉は何一つわからなかった。それに比べれば今回は英語なので、もしかするとわかるかもしれないと淡い期待を持っていた。
街ごとにその街に詳しい現地ガイドさんが来てくれて解説してくれる。私が求めていた観光である。英語だけど。
頑張った。話せなくても大丈夫だけれど、知りたい欲は人一倍あるから、なんとか説明を理解しようと全身を耳にして聞き込んだ。
そぶりからガイドさんが集合時間を口にしているっぽいことはわかる。たぶんフリータイムの後の集合時間を言っているのだろう。それだけでもわかったのは成長といえる。
また建物を指差して説明しているときは、建物の話しをしているんだろうな、と想像する。中学の英語の授業よりはわかる気がするので、置いていかれたくない、という不安が成長を促しているのかもしれない。よく「聞き流すだけである日、突然わかり出します!」みたいな英語教材の話を聞くが、それより海外に来てリアルに集中して聞く方が効果的だと思う。
逆に言葉がわからない方がよかった、と思われえるシーンもあった。
ツアーの途中でダイヤモンド博物館というところに行ったのだけれど、そこには日本人の販売員さんがいて、珍しいというブラックダイヤモンドの説明をしてくれた。何を言っているかめちゃくちゃわかるので、つい買ってしまいそうになった。後ろで安藤さんが小声でずっと(地主くん買いだよ)と言っていたのもあるけど。
ダイヤモンドなのに3万円くらいだし、スペインなまりの英語だらけのツアーと違い、日本語での説明なのでめちゃくちゃ言っていることがわかる。急に心が緩んで買いそうになっていた。最初はまるで興味がなかったのに、安藤さんの呪文のようなプッシュと日本語による説明でめちゃくちゃ揺らいだ。そしてよく見ると綺麗なのだ。
言葉がわかるということは大切なことではあるけれど、わかりすぎるのも問題なのかもしれない。わからないくらいが丁度いい場合もある。私は海外で騙されたことがないのだけれど、それは言葉がわからないからかもしれない。ダイヤモンド博物館は騙してないんだけどね。
正直な話、海外旅行でツアーを使うなんて海外の醍醐味がないだろう、と思っていた。自力で困難を乗り越えて行くのがカッコいい、みたいな中二病的なことを思っていたのだ。
でも違った。めちゃくちゃ楽しい。楽だし、知らない人と強制的に一緒になるので、謎の家族感も出る。フリータイムでもそれは発揮される。
あとツアーだとその国で食べるべき料理も教えてもらえる。旅の楽しみは食事だと思うけれど、たいてい高いお店には行けないので、どこかに安いお店はないかと探すことになる。ツアーだとそういうのも教えてくれる。英語だけど。
英語だけど、割と粘り強く何度も聞きなおしていると大切な部分はなんとなくわかる気がしてくるのだ。
海外だと「マジか! (悪い意味で)」 って料理もあるので、そこんとこ教えてもらえるのが本当に嬉しかった。じっさい全部美味しかったし。
オランダを観光してその日はオランダで一泊、次の日はオランダを出発して途中ベルギーを観光、そのままフランスのパリまでバスで行く。
ベルギーはEUの中心的なことをガイドさんが言っている気がする。たぶん。わかんないから日本語でもう一回聞きたい!
ベルギーワッフルはベルギーチョコをトッピングしたらめちゃくちゃ甘かった。甘すぎて歯が溶けそう、って表現があるけど、まさにそれだ。ただベルギーと言えばワッフルであり、ベルギーと言えばチョコなので、もはやこれ自体がベルギーと言っても過言ではないのだ。食べておくべきなのだ。
南米の衣装は二日目で脱いだ。たぶん他のツアー客は「なんであいつ初日だけ南米人だったんだ」と疑問だったことだろう。
ただ帽子だけは残した。それは南米味を残したかったからではなく、単純に寒かったからだ。ヨーロッパって寒いんだね。それはツアーとか関係なく、調べておけよ、という話だけど。
今回のバスツアーは全部で6日間。この短い間に、いつの間にか他のツアー客と仲良くなっていた。フリータイムが終わって集合するたびハイタッチするくらいに。
この人はインド人で男友達3人でこのツアーに来ていた。仲良くなったら奇跡的に年齢が私と一緒だった。お見合いの質問程度(ご趣味は? みたいな)の英語で仲良くなれるのもツアーで一緒という安心感のためかもしれない。友だち作るのが苦手な僕にとって、まったく知らない土地だとこうはいかない。
パリに到着したらホテルがめっちゃくちゃ綺麗だった。いつも自分で海外に行く時は「お湯にしては冷たいけど、水にしては温かい」くらいの水しか出ないホテルだったり、部屋が人一人分の広さだったりしたのだけれど、このバスツアーのホテルは全て良かった。もしかしたらこれが当たり前なのかもしれないけれど。
次の日はフランスを観光。バスで凱旋門やエッフェル塔を回った。やっぱり英語で説明してくれているのだが、驚くことに少しわかる気がした。いや、日本語並みにわかるわけはないのだけれど、生まれたての赤ちゃんが1歳を迎えました、くらいの成長はあった気がする。言語は本当に必要に迫られると多少は身につくものなのだ。
今まで海外に行っても観光というものをあまりしてこなかった。基本的に撮影目的で行くし、お金もないのでがまんしていたのだ。しかし、ツアーにはその辺も含まれている。移動もホテルも快適だ。日本語ならさらにいいのに、と思うけど。
この日の最後はセーヌ川での乗船だった。ガイドさんは夕方だと夕日が綺麗でとてもロマンチックだよ、的なことを言っていた気がする。たぶんそう言っていた。わかったのは成長だ。
海外で船なんて、以前アマゾン川で乗った「DIY始めたので作ってみました」みたいな船だけだったので、その豪華さと安心感に驚いた。川から見るパリの景色は、川沿いから見る景色より綺麗で、セーヌ川に架かるいくつもの橋をくぐる様はとても興奮だった。
これでバスツアーがほぼ終了した。次の日はフリータイムなので、自分で街を歩いて美術館などに行くことにした。楽を知ったからだろう、途中でバスを探した。バスなら楽だし確実なのだ。
フリータイムなので安藤さんとも別れることになった。
ただその前に驚くべき事実を知ったのだ。
セーヌ川のほとりを美術館まで歩いている時、今回は楽しかったが言葉については不安だった、という話をしていたところ安藤さんが「日本人向けの日本語バスツアーもあるんだけどね」というのだ。
おい。
なんでもこれはJTBの販売する、その日本人向けツアーの広告なのだとか。そのMyBusランドクルーズは11月から募集開始で4月から運行開始らしいのだ。広告作るのに間に合わなかったから今来た、と。間に合わなかったから南米人向けのツアーに混じって今来た、と。
もうちょっと待てばいいじゃん、そしたら日本語でガイドしてもらえたじゃん。
南米人向けのツアーと聞かされ、南米の衣装を着て、スペイン語の勉強をしたけれど、じっさいには南米人はいなくて、英語だからと言って私に英語がわかるわけではなく、さらにこれから日本人向けのツアーも始まるよという事実。この1週間の苦労よ!日本語でガイド聞きたかったな!そっちの方が絶対に楽じゃん。
ただバスツアーの楽しさと楽さは知ったのでよかったとしよう。英語も少しだけ、ほんの少しだけわかるようになったし。ただ日本語でガイド聞きなかったな。日本人向けあるのか。そっちの方が友達も楽にできたかな。いや、友達はむしろ南米人向けだったからできたのかもしれないけど。
いろいろな驚きはあったけれど、今回のバスツアーが楽しかったのは事実だ。知らない国をガイドしてもらえるのは嬉しいし、なにより安心で楽だった。日本語ならなおいいと思う。
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