アンパンマンさんのパワーには敵わない
子どもに早いうちからあまりチョコを食べさせない方がいいと思っていたが、チョコクリーム入りのアンパンマンパンを諦めた数日後、アンパンマンペロペロチョコによりチョコはバリバリ解禁された。
アンパンマンの中身はつぶあんだ。
しかしわたしがパン屋で見かけるアンパンマンパンの中身は、つぶあんどころかあんこでもなく、チョコクリームやカスタードクリームの方が多い。
もしかして、現実世界で作られているアンパンマンの中身は、チョコクリームもしくはカスタードクリームがつぶあんの数を抑え、首位に立っているのではないか。
全国から情報を募り、気になる結果を集計した。
※この記事は『デイリーポータルZをはげます会』のサポートによって制作させていただきました。
アンパンマンパンの中身は、チョコクリームやカスタードクリームの方が多いのでは…
この疑問を抱いたのは、娘と近所のパン屋に行った時のできごとがきっかけだ。
わたしには1歳の娘がいる。ほかの多くの子と同じく、アンパンマンが大好きだ。
お店や遊び場でアンパンマンを見つけると、「パン!パン!パン!」と、熱いパンコールが止まらない。
こどもがアンパンマンを見つける力を見くびってはならない。どんなに遠くにいても、アンパンマンが視界に入ると100%その姿を捉える。パンコールを浴び、よくよく探すと必ずどこかにアンパンマンがいる。
1歳児の視力は0.2程度と聞いているが、対象物がアンパンマンの場合は5.0くらいあるに違いない。
パン屋に訪れた時もそうだった。
アンパンマンパンを見つけた瞬間目がギラリと輝き、1歳児とは思えない強い力で手を引かれ、わたしはアンパンマンパンの前に立った。
すると、値札より先にPOPが目に入った。
だよなぁ…チョコだもんなぁ。
大好きなアンパンマンのパンを買ってあげたいところだったが、早いうちからあまりチョコを食べさせない方がいいと思っていたわたしは、アンパンマンパンをトレーに取るのをやめた。
いや、待てよ。アンパンマンなのに、中身があんこじゃないだと…?
そういえば、地元のパン屋で売られていたアンパンマンパンも中身がチョコだったような…
子どもの頃の記憶がフラッシュバックした。
アンパンだと思い食べたアンパンマンパンの中身がまさかのチョコクリームで、子どもの頃のわたしはショックを受けたのだ。
どうしてもあんこが食べたかったわけではない。チョコクリームが嫌いなわけでもない。しかし、自分の中で描いていたアンパンマンのイメージと、手に持っているアンパンマンパンの中身のギャップが処理できず、混乱した。
それ以降、アンパンマンパンを何度食べても、中身はやはりチョコクリームだった。
そしていつからか“アンパンマンパンの中身=チョコクリーム”という潜在意識を、わたしは作り上げていたのだ。
POPを見て一度は納得したものの、なぜアンパンマンなのに中身はあんこでないのか、逆にアンパンマンを忠実に再現してつぶあんを入れているパン屋はどれくらいあるのか、とても気になった。
幸い、母が地元の老舗パン屋に長く勤めている。
アンパンマンパンの中身に関して母を介してリサーチすることもできるし、親しいパン職人へ直接聞くこともできる。
わたしが子どもの頃食べてショックを受けたアンパンマンパンも、ここのパン屋のアンパンマンパンだ。
結論から申し上げると、なぜアンパンマンなのに中身はあんこでないのか、これだという確証は得られなかった。アンパンマンパンを作っているパン職人さえ、はっきりとした理由はわからなかったのだ。
しかし、いくつかの説が浮上した。
1.子ども受け優先説
アンパンマンパンのメインターゲットである子どもには、あんこよりチョコクリームやカスタードクリームの方がウケる。
子どもを意識した結果、あんこではなくチョコクリームもしくはカスタードクリームが入れられることになった。
2.ほかのパンとのバランス説
これは母が勤めているパン屋の話だが、そこのパン屋にはアンパンマンパンのほかにウサちゃんパンやトラパンなど、子ども向けのパンが複数種類ある。
ウサちゃんパンはミッフィーの顔が描かれたパンだが、ミッフィーパンとは言えないらしい。トラパンは、今年の干支にちなんで作られた。
ウサちゃんパンもトラパンも、中身はカスタードクリームだ。
そのためバランスを見て、アンパンマンパンの中身はチョコクリームになったのでは…という説。
3.技術的に作りやすい説
子ども受けしそうなパンの中身といったら、チョコクリームやカスタードクリームのほかにいちごジャムなどのジャムもありそうだが、母いわく、ジャムは技術的に作りにくいらしい。
もちろんジャムパンなどジャムを用いたパンもあるが、ジャムは焼いている時にパンの外に流れやすいため、積極的には採用されないようだ。
母が勤めているパン屋では、保育園や幼稚園などからの大口注文も受けている。注文時中身をジャムにしてほしいという要望があった際は、同じ理由でほかの中身を提案しているとのこと。
チョコクリームやカスタードクリームはジャムに比べて作りやすいそう。ということで、チョコクリームもしくはカスタードクリームが選ばれた。
どれが本当の理由なのかは、アンパンマンパンの中身をはじめに決めた人のみぞ知る。これらの説はあくまでも予想ではあるが、この中に本当の理由があるかもしれない。
そして一番気になるのが、アンパンマンを忠実に再現してつぶあんを入れているパン屋はどれくらいあるのかということだ。
わたしの周りにあるアンパンマンパンが偶然チョコクリームやカスタードクリームが多かっただけなのか、はたまた全国どこのアンパンマンパンも、チョコクリームやカスタードクリームを採用しているのか。
デイリーポータルZを応援してくれている方々が集まる「デイリーポータルZをはげます会」とTwitterで呼びかけたところ、100件近い情報を得た。
投稿いただいたみなさま、ありがとうございます!!
アンパンマンパンの中身を集計した結果がこちら…
やっぱり、わたしの周りだけじゃなかった。
現実世界ではほとんどのアンパンマンがチョコクリームパンマンだったという事実が突きつけられた。
チョコクリームにつづいて多かったのは、カスタードクリーム。
おいしいもんねカスタードクリーム、と共感しかけたが、カスタードクリームが食べたければクリームパンを買えばいいのではと気づき、ハッとした。
ライターの辰井 裕紀さんが送ってくれた、札幌を中心に10店舗を構えるパンチェーン・どんぐりのアンパンマンパンは、顔はアンパンマンだが「クリームパンマン」という名前が付けられていた。
アンパンマンの仲間に「クリームパンダ」というキャラクターがいるので、アンパンマンの顔をしていながらアンパンマンでもなくクリームパンダでもないんだ…と思ったが、アンパンマンのアニメ第29話に「クリームパンマン」という顔はアンパンマン・中身はクリームのキャラクターが登場したとの情報が。
コメントがだいぶややこしくなったが、つまりこのクリームパンマンは、アニメ第29話に限定的に登場した別キャラクターの可能性もある。だとしたら、めちゃくちゃニッチだ。
ちなみにクリームパンマンは、アンパンマンほど強くないそう。あんこの方が力が出るんだね。
チョコクリームとカスタードクリームに圧倒されながらも、本物のアンパンマンの中身であるつぶあんのアンパンマンパンも存在することがわかった。
ここまで希少だと知りながらつぶあんのアンパンマンパンを見つけられたら、相当テンションが上がりそう。つぶあんのアンパンマンパンもぜひ食べてみたい。
残るそのほかは、「こしあん」が1件、顔がチョコクリームで鼻がつぶあんという「2色パン」形式が1件、「中身なし」が1件という結果に。
1つのアンパンマンパンでチョコクリームとつぶあんの両方を楽しめるなんてお得感があるし、順番を考えながら食べるのも楽しそうだ。
そして中身がないアンパンマンパンもあるとは。あんこだと思って食べたらチョコクリームだった、カスタードクリームだった、という事例以上に衝撃を受けそう。
中身あるよな、あるよな…と信じて食べ進めたら、結局最後まで中身がなかったパターンのあれだ。
そしてもう一点気になるのが、アンパンマンなのに中身がチョコクリームやカスタードクリームだという事実を、みんながどう受け止めているのかということ。
先ほど書いたように、わたしは子どもの頃一度ショックを受けたものの、その後食べたアンパンマンパンも中身がすべてチョコクリームだったため、“アンパンマンパンの中身=チョコクリーム”という認識で生きてきた。
世間の声はどうだろうか。
本家アンパンマンの心に寄り添うコメントで泣きそうになった。
やはり子どもたちからの支持は、あんこ<チョコクリーム・カスタードクリームなのか…
わたしと同じ反応のみなさん。
そうそう、「そういうもの」としてからだに染み付いてしまっているのよね…
至極真っ当なご意見!
細かいところに首を突っ込んでしまいすみません!
たしかに、チョコクリームでもおいしいのは間違いない。パンうまい。
あぁ、お父さんお母さんはただただあなたの喜ぶ顔が見たくて買っただけなの。だからお願い、あんまり責めないで…
誰も悪くない、誰も悪くないんだよ〜!
疑問や違和感を感じた人、自然と受け入れていたがギャップに気づいた人、いろいろな受け止め方があってコメントを読みながらニヤニヤしてしまった。
改めまして、投稿いただいたみなさま、本当にありがとうございました!!
この記事を書いたのを機に、母が勤めている地元のパン屋のアンパンマンパンを久しぶりに食べたくなった。最後に食べたのは小学生の頃なので、6年生で食べたとしても20年は経っている。
そう考えると、アンパンマンも、アンパンマンパンも、これだけ長いあいだ子どもに愛され続けているのは本当にすごい。しかも、その温度感は今も昔も変わらずずっと高温をキープしている。
アンパンマンなんて気軽に呼べない。これからはアンパンマンさんと呼びたい。
こちらがわたしの思い出のアンパンマンパンだ。
ん?手に持った感じが昔と違う。
子どもの頃の記憶より、なんだかずっしり、しっかりしているような。
思い切って半分に割ると…
昔はたしかにチョコクリームだったが、今はつぶあんに変わったとのこと。
希少なつぶあんのアンパンマンパンにこのタイミングで出会えるとは、思ってもみなかった。
つぶあんのアンパンマンパンは、チョコクリームに比べるとたしかに甘さ控えめで、少し大人な味。大人はおいしいけど子どもはどうだ?と思い娘にあげたら、甘さ控えめだろうがなんだろうがバクバク食べた。
本格志向…いや、パンは中身より外見が大事なようだ。
子どもに早いうちからあまりチョコを食べさせない方がいいと思っていたが、チョコクリーム入りのアンパンマンパンを諦めた数日後、アンパンマンペロペロチョコによりチョコはバリバリ解禁された。
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