『そのまま食べられる』と書いてある
先日、母とスーパーで買い物をしていた時、春巻きの皮コーナーの前で母が突然立ち止まりこう言った。
「春巻きの皮って、そのまま食べられるだに」
ほ、本気ですかお母さん。春巻きの皮なんて、どこからどう見ても「火を通さんと食べられんよ」と言わんばかりの風貌をしているじゃない。
なぜそのまま食べられると気づいたのか聞いてみると、パッケージに書いてあるという。
こんな目立つ場所に、こんなはっきり『そのまま食べられる』と書いてあったなんて。普段どれだけ物事を抽象的に捉えているか、春巻きの皮に突きつけられた気分だ。
しかも母曰く、揚げたり焼いたりするよりそのまま食べる方がおいしいらしい。父と2人で試したら、酒飲みの父もそのまま春巻きが気に入ったそうだ。
そこまで言うなら試してみよう。
1袋買い、家へ向かった。
そのままなら、調理工程も超簡単
これまで生きてきた中で春巻きの皮をそのまま食べた経験がないので、買ってきたはいいものの、なにをどう調理し始めていいかわからず台所でフリーズした。
高校生の頃、ろくに料理ができないのに先輩の紹介でうっかりファミレスの厨房バイトに入ってしまったことがある。厨房で固まっていると、店長から「なんでもいいから手を動かせ」と言われるのだ。
料理の仕方がわからないのに、なんでもいいからと言われても手の動かしようがない。
その時の記憶が蘇り、軽く泣いた。
つらいバイト経験から“わからない時は人に聞く”という人として大切なスキルを身につけたわたしは、母に指示を仰ぎ、まずは春巻きの皮を半分にカットした。
巻く具材はなんでもいい。というか、正直に言って正解がわからない。
今回は、父と母が最初に試しておいしかったという豚肉と大葉のそのまま春巻きを作ることにした。
「作ることにした」もなにも、調理工程はこれだけだった。
巻く作業も、食べる直前に各々がテーブルで行えばOK。
そのままいただきます
そのまま春巻き、完成!
揚げ餃子ではない。でも生春巻きでもない。初めて食べた味、食感だけど…確かにおいしい!!!
焼肉のタレで甘辛く仕上がった豚肉が、春巻きの皮によってまろやかになっている。皮にほのかに塩味があるので、皮そのものの味も楽しめる。
そしてしっかりめの食感のおかげで、ひとつ食べただけでもわりと食べ応えがあって…これは、いける!!!
ちなみに、この食感をほかのなにかに例えるなら…そう、蒲焼さん太郎を噛みちぎるあの感じ。
この日以降、我が家の春巻きは“そのまま”が定番になった。
明日も食べたい。
記事に登場したのと同じ皮です。
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