実は橋にはあまり興味がない
ぼくはこれまで
ジャンクションを愛でたり、
高架下建築を愛でたりしてきたこともあって、よく「橋も好きでしょ?」って言われることが多い。土木構造物における基本であり花形であるのが橋梁だからだ。
しかし残念ながら橋にはあんまり興味がない
橋はなー、みんな好きだしな−、なんかコジャレてるしなー。
でもこういう橋たちはちょうすてきだと思う!ほしい!ください!
と思っていた。が、ぼくにも好きな橋があった。それが「マイ橋」である。
これはなんとすてきなマイ橋。マイにあるまじき重厚で気の利いたコンクリート造り!そし欄干がない。すてき!ほしい!ください!
なんだろう、このうらやましさは。
マイ橋を渡って、階段を上る。完璧なマイホームへのアプローチ。嫉妬。
立派ですてきな家屋のうえ、あまつさえマイ橋所有。世の中なんと不公平か。
狭めのマイ橋アプローチがにくい。いいなー。
「マイ橋」とはこれら、その名の通り個人的な橋だ。ダジャレだ。
ぼくが「興味ない」と言い放った橋はいわゆるふつうの橋で、それはつまりインフラだ。レインボーブリッジとか。たいていでかい。でかいのはなー、そりゃあかっこいいに決まってるよなー。まあ
瀬戸大橋には興奮したけれども。
なんとなく橋って公共のもの、というイメージがあるが世の中には個人の家にアプローチするためだけの個人的な橋というものがあることに気がついた次第だ。これはたいへん気に入った。気に入ったというか、うらやましい。「俺んち橋あるんだぜ!」ってことでしょ。嫉妬するわー。
うわー、このマイ橋は特にすてきだ!
なにがすてきって、この橋の端が(一休さんか)、クニャってなってるのがいい!ここだけでもいいからほしい!
個人的なもので、かつ小さいので、およそ社会資本的橋にはみられないかわいらしさがいろいろ見られる。そのひとつが上のもののように欄干がない点だ。
ほかにも、橋の上にいろいろ乗せちゃってるのもいい。
植木とか自転車とか置いちゃって、まるで玄関前の庭のような(実際そうなんだけど)平常心がいい。
ほかには、やけに急勾配な橋とか。太鼓橋の半分だけ、みたいになってるものがちらほら。普通の橋だったら「ちょっとこれ坂きつすぎない?」っていって「改善」されちゃうんじゃないかと思った。マイ橋なら持ち主が納得すればハーフ太鼓橋もOKってわけだ。たぶん。
なかなかの傾斜。ナイス!
ハーフ太鼓橋級。狭いが交通量の多い道路に面していることもあり、かなりスリリング。ぐっとくる。
正面から。路面の滑り止め模様が急勾配を物語る。それにしてもここも豪邸だ。そしてその位置にゲート置くか!
実はこの急勾配、今回マイ橋を求めて探しに行った場所特有の地形によっている。
崖っきわの流れにマイ橋あり
同じ範囲の地形図。川の左岸(北側)がちょう崖!(「
東京地形地図」をGoogleEarthで表示したものをキャプチャ)
「マイ橋」が存在する街は日本にたくさんあると思うが(本記事でもこの後、岡山へ行きます!)、まず訪れたのは東京は世田谷。玉川から上野毛あたりだ。
世田谷と言えばおしゃれタウン。しかしぼくにとってはここはなにより「国分寺崖線」タウンだ。崖だ。
おそらく東京の地形好きにとっては基礎教養ともいえるこの国分寺崖線。今回流れに沿って歩いた丸子川の部分はこの崖線のすぐ下を走っている。上の地図と地形図をあわせて見れば分かると思う。というか、第三京浜入り口のぐるっとなっている部分のえぐれっぷりがすごいな。
だから橋の向こうが階段、ってケースが多い。
家の後ろが崖。まるで神社かお寺のようだ。
と思ってたら、実際お寺があった。お寺の「マイ橋」だ。
狛犬がでかすぎてこわい(この善養密寺というお寺、珍寺として有名みたいね)。
交差する谷沢川は遡ると「ほんとここ23区かよ!」ってびっくりすることで有名な等々力渓谷に達する(
GPS地上絵のタツノオトシゴの眼でもある)。ここらへんはそういう崖テーマパークなのだ。
なんでここを選んだのかというと、川の脇に道路を作る余裕がなく、かつ川に面していない側からアクセスできない場所にしかマイ橋はないだろうと思ったからだ。
橋を作るのってたいへんだ。だから、なるべく玄関は川じゃない方に置きたいはず。でも後ろが崖だったらそうもいかない。そういうケースでマイ橋が出現するはず、と睨んだのだ。
そして見事予想が当たった。ぼくえらい。
車庫がわりになってるマイ橋たち
さて、ぼくの推理能力がすごいという主張をしたので、マイ橋の見所の説明に移ろう。
まずは、普通の橋ではあり得ない「車庫代わり」という現象だ。
おしゃれハウスに合わせた欄干デザインがすてき。そして、車庫代わり。
欄干への距離の詰め方に「マイ」っぷりがうかがえる。すごい!
駐輪+駐車。この「自分ち感」がいい。橋なのに。
どうせならどーんと橋の真ん中に駐車してほしいと思ってしまった。もっとマイっぷりっを!
豪邸は橋が終わったところに門を置く傾向があることが分かった。その前に駐車しているこの車は訪問者のものだろうか。それにしてもこのマイ橋の末広がりっぷりはすてきだ。
一方、橋の向こうがガレージ、というケースもちらほら。個人的趣味だが、マイ橋の向こうは門や玄関のほうが好みだ。なにその好み。
そういう意味で、これはもうほんとにすてきだと思う。まあこれだけの敷地がある豪邸ならそりゃすてきだろうよ、って話ですが。
でもこの「崖感」あふるるガレージ専用マイ橋はすてきだ。
おお!完全なる車庫橋!
考えてみたらずっと橋の写真を並べ立てているわけだが、みなさんついてきているだろうか。さあ、次の見所は橋の色・素材だよ。
想像してたより凝ってる
これらマイ橋が法的にどのような位置づけにあるのか分からないが(記事書くぐらいなら調べろって話ですが)、「マイ」とはいえども川を跨いでいる以上公共的な側面もあるのでは、と思っていた。が、ときおり建築と合わせてデザインされたものがあって興味を惹かれた。
これとか。住宅のデザインに合わせた欄干。
もうなんか、お城の前の堀を渡る橋のようだ。
これも意図的に建物と色を合わせたのではないかと思う。素朴な鉄板素材と欄干がかわいい。そして滑り止めだろうか。シートが敷いてあるのもキュートだ。
世田谷らしい大きな家にやっかみつつも、やはりマイ橋たるものこれぐらいはこだわりたいものだ、と思った。
なんといっても連なり具合
いろいろ見てきたが、個々の橋を云々しているだけでは真のマイ橋鑑賞家とはいえない。マイ橋の最大の特徴であり見所でもあるのは、その連続具合だと思うのだ。というかマイ橋鑑賞家ってなんだ。
いかにもマイ橋らしい連続っぷり!過剰な高さの欄干とお役所っぽいデザインは残念だが。
ほとんど間隔を置かずに連続して並ぶマイ橋群。
正面から。それぞれ橋の雰囲気が異なるのもいい(大きな画像で見たいというマイ橋鑑賞家の方は
こちらを)
正面から。それぞれ橋の雰囲気が異なるのもいい(大きな画像で見たいというマイ橋鑑賞家の方は
こちらを)
これも個性的なマイ橋が並んでいて面白い(大きな画像は
こちら)
「どれかひとつあげる」っていわれたら迷っちゃうなー!どれもいいなー!(大きな画像は
こちら)
連続具合がなぜ見所かというと、マイじゃない普通の橋がこんなに連続することはないからだ(
行徳橋のような例もありますが)。自分ちのための橋。だからお隣さんはお隣さんで別の橋を架ける。結果、このように橋が連続して、これはもう「暗渠」と呼んでもいいんじゃないかというぐらい橋が密集するケースも。
上のマイ橋群はなんと5連だ。もう橋というより暗渠だ。(大きな画像は
こちら)
マイ橋は人が渡るだけじゃない!
そしてさらに。マイ橋の横を見ると、実は人が渡るためではないマイ橋もあることに気がつく。排水などのパイプが川を渡っているのだった。これがまたなんかかわいらしい。
マイ橋の横によくあるパイプ橋。
崖からならではの高低差!かっこいい!
なんだかすごいことに…
さて、このように見所の多いマイ橋だが、東京の例だけでは飽きたらず、岡山でも見てきました!
ところ変わればマイ橋も変わる
あー!いいなあ、この頼もしくもかわいらしいマイ橋!
岡山でマイ橋が架かっていそうな川っていったら倉敷の水路が連想される(されますよね?)。実際
倉敷にマイ橋たくさんあるのだが、今回訪れたのは岡山駅からほど近いあたりだ。これがほんとうにすてきだった。
こういうのは世田谷にはなかった!いいねえ。キュートだねえ。「マイ」って感じがするねえ。物置置いてるし。
贅沢な幅広のマイ橋を活かし、室外機を置いた。
石積みと塀、そして門扉のエレガントさによく合ったキュートなマイ橋!いいなあ。
うわー!もうなんてすてきな!
マイ橋の向こう、門の前にちゃんとスペースがあって、豪邸感がよく現れている。
やんわりとした傾斜にぐっとくる。そしてここでも隣との連続がいい。
この2連もいいなあ。家屋の雰囲気とよく合っている。
こちらも、「もうほぼ暗渠系」連続マイ橋群。
そして「駐車場代わり」はここでもいっしょ。
世田谷の事例と異なり、背後が崖というわけでもないのに、このマイ橋っぷりはどうだ。憶測だが(だから調べろって話ですが)水運を元に街ができあがった結果、門がすぐ水路に面して、それが現代まで引き継がれてこうなった、というあたりではないだろうか。ほんと適当な憶測ですが。
前出のパイプでいうと、ここにはこんなケースも!すごい。
なんだかすごいことになっているカーブミラー。
マイ橋マイ橋って、分かりづらいネタでいったい誰がここまで読み進めてくれているのか不安ですが、次ページで今回見たマイ橋たちの中でとくに気に入ったものをご紹介して終わりにしよう。
もらえるんならこのうちのどれか
ぼくはカーブした水路に弱いということが分かった。
上の写真のカーブ、曲がったところにあるこのマイ橋。もらえるんなら、第一希望はこれ!
世田谷の物件の中からだったら、これ。やはり流れが合流してかくっとなっている先にある…
これ!この小ささがたまらない!「マイ」って感じ!
前面道路および水路が、向かって横方向に傾斜している点もたまらない。これください。
もうほんと、いったいなにがそんなに良いんだ?って思われると思うが、岡山と東京それぞれこの2つがいまのところ最も気に入っている。
いやでも、げんにマイ橋の向こうの土地が空き地、っていう場所がいくつかあって「マイ橋ほしい」っていうのもあながちありえない話ではない。お金さえあれば。
この荒れたままの土地を買えばもれなくマイ橋がついてくるのかなー。お金持ちになったら買いに来よう。
岡山の、マイ橋が連続する先に、どーん!
究極のマイ橋をここに見た!
全国のマイ橋を巡りたい
分かりづらい内容の記事で申し訳なかった。でも全国に100人ぐらいはいると思うんだよね、マイ橋好き。いつかそういうみんなでマイ橋めぐりをやりたいです。
「工場萌え」であるぼくの長年の夢が叶います!いわゆる"中の人"に工場がなんであんな形なのか、をうかがう集まりを開催しますよ。2012年9月15日(土)17:00から大阪にて。工場好きは必見だ!詳しくは→
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