デジタルリマスター 2024年3月18日

京都では学校建築を見るべきだ(デジタルリマスター)

京都に残る文化財と聞いて、イメージするものは何だろう。多少の個人差はあれど、おおむね清水寺とか東寺とか、神社仏閣的な何かではないだろうか。

確かに、京都には数多くの古い寺院や神社が存在し、文化財も山ほどある。その為、京都には日本全国の修学旅行生からご年配の方々まで、数多くの観光客で一年中賑わっている。

しかし、私は声を大にして言いたい。京都は寺院や神社も良いけれど、学校建築もまた素敵だよ、と。

2011年2月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

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その出会いは唐突に、西本願寺の学校、龍谷大学にて

事の始まりは、先月西本願寺を訪れた時に遡る。

西本願寺といえば、境内の中央に堂々とそびえ建つ、巨大な本堂や御影堂が印象的ではあるが、それら以外にも文化財は数多く、裏手に回れば桃山様式を代表する書院や唐門などが、今もなお現存している。

そのうち、境内の南端に位置する唐門は、全面に彫刻が施されたド派手なもので、時間を費やして表裏じっくり見る価値のある逸品だ。

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西本願寺といえば、この本堂と御影堂が目立ちますが
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裏手に回ればこのような唐門があったりする

隙間無くびっしりと彫刻が施されたその唐門を、「へぇ~」「ほぉ~」と散々眺め回し、さて引き返そうかと踵を返したその時に、かの建物は現れた。

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「何だこの建物は」それがこの建築を見た最初の印象だった。西本願寺の南隣に隣接する敷地に構えられた、洋風ながら、どこか洋風になり切れていない感のある独特な建造物。

このような建物が、お寺の隣にあるのはいささか不思議な感じがするが、しかし浮いているという感じは無く、むしろ古都京都にマッチした、レトロな風情が漂っている。

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この中央の建物だけでなく
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両脇をこの建物が囲んでいるのが素晴らしい
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門柱には、龍谷大学との表札が
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黒猫が妙に似合う、不思議な学校建築だ

龍谷大学は、江戸時代に創設された西本願寺の学寮を起源とする大学だそうだ。そしてこの建物は、近代に入り学制が変革を迎えるにあたって建てられたもので、明治12年の竣工。

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立派なペディメントだけど、どこか日本的
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しかし、お寺の学校でこの意匠とは、おもしろいですな

一見すると西洋建築のように見えるけれど、実は日本の大工が見よう見まねで西洋建築を再現した擬洋風建築。このような建物は、西洋建築技術の教育が未熟だった明治初期において、よく建てられていたようだ。

外観は石造のようであるものの、れっきとした木造で、外側から石材を貼り付けて石造風に見せているとの事。

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両脇に二棟建つ、こちらの建物もなかなか
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個々の建物もさる事ながら、全体の雰囲気が良いですな
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この渡り廊下なども、いちいちかっこいい

いやぁ、いいねぇ。うん、凄くいい。

私は完全な西洋建築よりも、このような、和風の意匠が抜け切れていない感じの擬洋風建築が好きだ。特にこの建物は私好みであり、まぁ、とにかく、一目惚れしてしまったのである。

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こちらは煉瓦造の守衛所だそうだ
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このデンティル(上部のギザギザ装飾)が良い
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内部には、建てられた当時の版画が飾られていた

思わぬところで素晴らしい建築に出会うことができた。この建物を前にした時の興奮は、これでもかという程彫刻がてんこ盛りされた、西本願寺の唐門すらも霞んでしまうものであった。

帰りの道すがら、ふと考えた。京都は寺社の町であるが、数多くの大学が存在する学生の町でもある。他にも龍谷大学のような、かっこいい建築を持つ学校があるのではないだろうか。

というワケで、私は京都の大学を巡ってみる事にした。

⏩ 次ページに続きます

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