その出会いは唐突に、西本願寺の学校、龍谷大学にて
事の始まりは、先月西本願寺を訪れた時に遡る。
西本願寺といえば、境内の中央に堂々とそびえ建つ、巨大な本堂や御影堂が印象的ではあるが、それら以外にも文化財は数多く、裏手に回れば桃山様式を代表する書院や唐門などが、今もなお現存している。
そのうち、境内の南端に位置する唐門は、全面に彫刻が施されたド派手なもので、時間を費やして表裏じっくり見る価値のある逸品だ。
隙間無くびっしりと彫刻が施されたその唐門を、「へぇ~」「ほぉ~」と散々眺め回し、さて引き返そうかと踵を返したその時に、かの建物は現れた。
「何だこの建物は」それがこの建築を見た最初の印象だった。西本願寺の南隣に隣接する敷地に構えられた、洋風ながら、どこか洋風になり切れていない感のある独特な建造物。
このような建物が、お寺の隣にあるのはいささか不思議な感じがするが、しかし浮いているという感じは無く、むしろ古都京都にマッチした、レトロな風情が漂っている。
龍谷大学は、江戸時代に創設された西本願寺の学寮を起源とする大学だそうだ。そしてこの建物は、近代に入り学制が変革を迎えるにあたって建てられたもので、明治12年の竣工。
一見すると西洋建築のように見えるけれど、実は日本の大工が見よう見まねで西洋建築を再現した擬洋風建築。このような建物は、西洋建築技術の教育が未熟だった明治初期において、よく建てられていたようだ。
外観は石造のようであるものの、れっきとした木造で、外側から石材を貼り付けて石造風に見せているとの事。
いやぁ、いいねぇ。うん、凄くいい。
私は完全な西洋建築よりも、このような、和風の意匠が抜け切れていない感じの擬洋風建築が好きだ。特にこの建物は私好みであり、まぁ、とにかく、一目惚れしてしまったのである。
思わぬところで素晴らしい建築に出会うことができた。この建物を前にした時の興奮は、これでもかという程彫刻がてんこ盛りされた、西本願寺の唐門すらも霞んでしまうものであった。
帰りの道すがら、ふと考えた。京都は寺社の町であるが、数多くの大学が存在する学生の町でもある。他にも龍谷大学のような、かっこいい建築を持つ学校があるのではないだろうか。
というワケで、私は京都の大学を巡ってみる事にした。