1999年に発売されたポケモンスナップというゲームを知っているだろうか?
野生のポケモンたちが動き回る島に行き、自由にポケモンの写真撮影ができる夢のようなゲームだ。今でもこのゲームを最高傑作としてあげる人もいるほど完成度が高い。
新作が開発中であることが発表されており、再び注目度も高まっている。
ポケモンスナップが発売されてから20年も経っている。時の流れが早すぎて自分で書いてて驚きである。
そんな小学生が大人になる長い年月が経っているゲームにも関わらず、今でも研究し続けている人たちがいるのである。
それがポケモンスナップ学会だ。
僕は↑のポケモンスナップ学会の解説動画が大好きで、初めて見たときに一瞬でファンになった。自分が子供の頃にやっていたゲームがここまで深堀りされていることに感動して大笑いした。
今日はそんなポケモンスナップ学会に「なぜ20年前のゲームを研究し続けているのか」「やり続けたことでどんな発見があったのか」ということを深堀りして聞いていきたいと思う。
ポケモンスナップを知らない人たちは「1つのゲームをこんなに探求している人たちがいるのか!!」とわなわな震えあがってほしい。
■ Koto(写真→)
ポケモンスナップ学会会長。解説動画を2010年ごろからあげている。ポケモンスナップを研究し始めた第一人者。
Twitter:
koto_0219
ニコニコ:
11417373
■ キイ(写真←)
ポケモンスナップ学会副会長。イベントの運営や動画の解説など学会の業務を主に担っている。海外のポケモンスナップ仲間との連絡なども担当している。
Twitter:
hidamare
YouTube:
aKaFuKu Snap
ポケモンスナップ学会は白衣が正装だ。オーキド博士へのリスペクトなのである。副会長であるキイさんに至ってはインナーまでオーキド博士と同じカラーという徹底っぷりだ。
また、会長のKotoさんがパルシェンを横向きで持っているのは、その方がポケモンスナップ的に得点が高いからだそうだ。
この1枚の写真だけでガチ勢なのが伝わってくるだろう。しかし、こんなのはまだまだ浅瀬である。ここからずぶずぶと頭まで深みにハマっていってほしい。
※ 取材は窓を全開にして換気し、距離を保って行いました
そもそもポケモンスナップとは
本題に入る前にポケモンスナップとはどういうゲームなのか簡単におさらいしよう。
【ポケモンスナップとは?】
1999年3月21日に発売されたポケモンのゲーム。
野生のポケモンが住む『ポケモンアイランド』に行き、様々な動きや表情をするポケモンたちを撮影することができる自由度の高いゲーム。
撮影した写真をオーキド博士に見てもらい採点されるシステムが特徴的である。
また、当時は撮影したポケモンの写真をプリクラ風にプリントアウトすることもできた。
ポケモンの写真をどれだけうまく撮れるのか?というのがこのゲームの目的である。ただ、得点を気にせず動いているポケモンを見ているだけでも楽しむことができる。
ポケモンスナップ学会では主に「ポケモンごとの最高点 / 最低点の写真の撮り方」「どれだけゲームを最速でクリアできるのか」などを研究している。(詳細にはもっと細かく分かれる)
さて、基礎がわかったところでいよいよポケモンスナップ沼に足を踏み入れていこう。
『同じカセットを100本買う』『ポケモンスナップのために海外に行く』
--------------- カセットだけで3つもあるんですね
これはほんの一部だけで今までで100本ほど買っています。
--------------- 100本!!なぜ……?
研究のためです。他の人のデータやアルバムを見たときに、意外な写真の撮り方で点数をとっているときもあるので。そこから新たに発見したこともありました。
それとTwitterで「昔、ポケモンスナップを親に売られた」という人を見かけるので、そういった方のデータを私が買っていた場合は返してあげることも可能です。ぜひご連絡ください。怖いと言われますけど(笑)
--------------- ネットで「ヤバい人(褒め言葉)」と言われるタイプの人だ…!!
これらは北米版です。この攻略本はスイスのポケモンスナップ仲間に会ったときにもらったものです。
--------------- スイスまでポケモンスナップ仲間に会いに!?
ドイツ旅行を計画していたので、ついでに会いにいくか、みたいな(笑)
--------------- ヤバい人だ(褒め言葉)
なぜ懐かしいゲームを研究するようになったのか
--------------- 会長であるKotoさんはポケモンスナップをなぜ研究しようと思ったのでしょうか?
2008年ごろに久しぶりにポケモンスナップをやったときに、小さい頃には気づかなかった写真が撮れて大感動しました。そのときに奥が深いゲームなのかも…と。
--------------- 始めは懐かしいゲームをただやってみただけだったんですね
そうです。そこから調べてみると海外にもガチ勢がいることがわかっておもしろいなと。そこから研究するようになって2010年に解説動画を公開しました。
その頃はニコニコ動画でゲーム実況が流行り始めていたときで、ポケモンスナップのもいくつか動画があったのですが「これなら自分の方が上手くできそうだ」と思い解説動画をあげることにしました(笑)
こちらはKotoさんが2010年にあげた解説動画
--------------- キイさんが始めたキッカケはなんだったのでしょうか?
大きくハマったのは仲間ニャース(※)という理論を知ってからです。概念がおもしろくてポケモンスナップへの熱が入りました。
--------------- そこからどのようにポケモンスナップ学会が発足したのでしょうか?
学会が発足したのは2016年です。私とキイさんと、もう1人で始めました。もともとみんなTwitterで繋がっていて、偶然3人で集まれる日があったので会ってみることにしたんです。
当時Kotoさんの解説動画に「ポケモンスナップ学会」とタグ付けされていたんです。それを遊び半分でホワイトボードに書いたのが始まりです。
ゲームを学術的に取り上げて解説する動画に『学会』と名付ける文化がそのときはあったんですよ。FF学会とか日本カービィボウル学会とか。
--------------- ポケモンスナップの研究は今でも続いているのでしょうか?
今でも熱心にプレイしている人は多くいます。Cyberscoreというゲームの得点を競うランキングサイトでは、今でも高得点の写真が更新されつづけています。記録保持者は海外にも多くいます。
2019年には日本人プレイヤーがハイスコアアタックの世界新記録をだしました。その人は僕らよりあとから始めた若い人です。
新しい人が活躍してくれればポケモンスナップをやるプレイヤーも増えるので嬉しい限りです
--------------- 同じゲームを続けてくると飽きてくるときもあると思うのですが、「ポケモンかわいい!癒やされる!」という感情はまだ今でもあるんでしょうか?
かわいいとはまったく思わないですね。最初好きだったけど段々嫌いになっていきます(笑)
僕たちにとっては1と0のデータの塊でしかありません(笑)
ポケモンスナップで判明した『スクエアヘッド理論』『仲間ニャース』『β世界線』
ちなみに研究内容が全然わからなくても構わない。画像だけ見て「よくわかんないけどすごい発見しているな!!」ということだけでも伝わってほしい。
--------------- ポケモンスナップを研究してきた中で、どういった発見があったのでしょうか?
研究としてわかりやすいところで言えば『スクエアヘッド理論』『仲間ニャース』『β世界線』あたりでしょうか。
あとは採点は常に研究対象になっていて、発見も多くあります。面積、大きさ、距離のどれが重要なのか検証を重ねていますが、どれもバッチリと当てはまるものがまだまだない状態です。
ポケモンスナップは採点をしているオーキドとの戦いなんです(笑)
研究①:スクエアヘッド理論
--------------- うーん、説明を聞いてもなんとなくしか理解できませんでした……
スクエアヘッド理論については理解も説明も難しいので、仕方ないと思います。『端っこに映っていた方が高得点になる傾向がある』と理解できていればだいたい大丈夫です。
研究②:仲間ニャース
仲間ニャースはビーチエリアにいるニャースを崖から落として撮影することができます。わかりやすいので実際にやってみましょう!
--------------- ??
--------------- ????
これは仲間がいるか微妙なラインですね
いない可能性が高いでしょう
--------------- なるほど、まったく違いがわかりません
--------------- やだ、カッコいい……!
研究③:β世界線
最後に紹介するのは世界線の話です。これはここ2年ほどで見つかった新しい発見です。
ハイスコアアタックの世界記録更新にも関わっているので、ポケモンスナップとして重要な発見でした。
※ 世界線:ここでは「パラレルワールド」 に近い意味で使用します
研究③ 世界線:
まったく同じタイミングで写真を撮っているのにポケモンの挙動が違うときがある。このことから決められた世界線によってポケモンの動きが固定されているのでは?という理論
一番わかりやすいのは、ビーチステージの開始ムービーをスキップするかどうかです。これによってポッポの動きが変わってきます。実際にやってみましょう。
このポッポの動きはオープニングをスキップするかどうかで確定で変わります。
--------------- たしかにポッポの動きが違いますね!ただ、これがわかるとどのような意味があるのでしょうか?
世界線でポケモンの動きが決まるので、狙った写真が撮れるようになります。つまり理論さえわかれば誰でも記録が狙えるセットができたのです。
ただまだ他のステージでは確実に狙った世界線に行ける方法があるわけではないので、研究の余地はまだまだあります。
--------------- SFの超大作の話を聞いてるようだ…
仮説、検証、実証を繰り返して新たな発見がある
--------------- これだけプレイしていればやり尽くされているような気もするのですが、どうやって新しい発見をしているのでしょうか?
仮説を立てては検証しての繰り返しです。偶然の発見からひたすらプレイして試行錯誤します。
最近たまたま見つかったものだと『出張ヤドラン』というものがあります。ヤドランは動く範囲が決まっているはずなのですが、プレイヤーの動きを止めて放置するとありえない場所に移動するんです。他の投稿者の動画で発覚し、その方に話を伺って検証して原因が確定しました。
ヤドランは距離が離れている場所にいるため、あまり仲間点が入りません。出張ヤドランを応用できるようになれば、ヤドランの最高得点が狙えるかもしれません。
--------------- 偶然の産物からの仮説と検証って、本当の研究と同じですね。『学会』って名前は大げさでもなんでもないですね…!
学会を名乗ったおかげで知識が集約されるようになったのはよかったと思っています。突然あたらしい情報を匿名でくれる人もいるんです。
--------------- 新しいポケモンスナップの発売も予定されていますが、やはりこちらも研究していくのでしょうか?
まだわかりません。そもそもオーキド博士の採点があるのかもわかりませんし。もしかしたら採点がなくなって写真をゆっくり撮るだけのゲームになっているかもしれませんし。
研究にやりがいがあればいいなと思っています。もし64版の方が研究しがいがあるのであれば、このまま今のポケモンスナップを研究していくことになると思います。
--------------- 新作発売にも浮かれていない…!さすがすぎる……!!
名作は極めても、極めなくてもおもしろい
ここまで読めばポケモンスナップ学会にどっぷりハマったことだと思う。そんな人はぜひ↓のロースコア解説も見てほしい。
おもしろいゲーム全般に言えることだが、名作というのは初心者でも達人でも楽しめるものだということが改めてわかった。そして20年ぶりにポケモンスナップが名作だと思い知った。