特集 2025年2月4日

完全新発売のお菓子を食べることによる手軽なパラレルワールド体験

コンビニやスーパーで「新商品」とタグのついているお菓子をながめる。

ほう、こんなものが出たんだなあと、思いはするけれど、並ぶ新商品は「小枝 宇治抹茶味」とか「プレミアムバッカス」とか、もともと十分おなじみの、あの商品、小枝だったり、バッカスだったりの展開バージョンが多い。

完全な、なんの足場も手がかりもなく新規で登場する新商品を集めたらちょっと不思議な気持ちになれるんじゃないか。

東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

前の記事:自分にとって遠い食べ物、チーズドッグを6日で身近にできるか

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

多感な私はもうぞわっとしています

集まってもらったのは、ブルボン「ザクループ」、亀田製菓「ゆるふわちっぷす」、赤城乳業「厳選メロンのメロンパン」、岩塚製菓「真夜中の甘い誘惑」。

どうだろう、この写真1枚でちょっと、多感な私などはもうぞわっとしてしまう。

「ここはどこだ」と思う。

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背景紙にしわが入っていること、謹んでおわびいたします

パッケージが、どれも丁寧にその道のプロがデザインしたと思われる、小慣れて垢抜けたものばかりだ。慣れたように、いかにも「みなさんご存知の」という様子で存在する。

でも、私は知らない。

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「なぜ私はこれを知らないのだろうか」

新商品なのだから知っているはずはないのだけど、「なぜ私はこれを知らないのだろうか」と思わせられる。

未知であることをねじふせてくる圧が、こういった新商品にはあるように思う。

以前当サイトで「自然食品の店にならぶ商品、そのパッケージの愛しき独特」という記事を書いた。

自然食品系のメーカーの商品のパッケージには独特の味わいがあって、それをいつくしむ記事だ。ここではそういった商品のパッケージがなぜ独特になるのかの理由のひとつに「資本が入りきらず素朴」を挙げた。

いっぽう、ブルボンや亀田製菓といった全国のコンビニやスーパーに商品を力強く流通させているメーカーには真逆のことが起こる。

つまり、「資本が入りすぎて洗練」というわけだ。

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新人なのに洗練されすぎている

ここでいう洗練というのは、優雅高尚というよりも、“商品らしさ”という意味だ。

新人なのに、もう一丁前にとことん慣れて商品らしい。

けれどユーザーとしては見慣れない。あらかじめあるような顔をしておいてあるのに、知らない。

その誤差が私をうろたえさせ、結果、こういった菓子に囲まれることによって、パラレルワールドにいるみたいになる。

ようこそ!

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御託はおわりです、食べます

説明しながらすっかり興奮してしまった。そんなわたしの傍にも、平気の普通の顔して見慣れたようでまるで見慣れない新商品たちはいる。

食べるか。

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食べよう
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もう抹茶味があってもおかしくない・ブルボン「ザクループ」

今回買った4品のなかでも、極まって「もともとあるっぽいな」と思わされたのがブルボン「ザクループ」だった。

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個包装のチョコレート菓子です

見たことのない既視感に、ほれぼれする。

発売は2024年11 月 26 日。息馬の目を抜く菓子業界にあっては、厳密には新商品とはもう言えないかもしれないけれど、それにしてもこのパッケージ、少なくとも2000年代にはもう出てそうじゃないか。

去年の年末の登場とは思えない。ザクループ抹茶味、すでに出てなきゃおかしいくらいだ。

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ドーム型のクランチチョコです

お菓子としては、ディズニーランドのお土産でもらった覚えがある感じのドーム型のクランチチョコレートだ。

特徴は粗く砕いたクレープ生地、全粒粉のビスケットに加え、砕いたおかきがチョコレート内に入っていること。

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おかき!

そこにおかきを入れるのかという意外性。

私などが開発チームにもしいたら、安易に「おかきざくざくチョコ」なんてネーミングを推してしまいそうなところ、「ザクループ」とそつない名前に仕上げたところに手腕を感じる。

個包装が便利だと思ったが、おいしくって全部一気に食べてしもうた。

原材料欄に醤油やかつおや昆布の調味料が記載されているとおり、おかきが醤油味なのが食べながらわかるのも可笑しかった。

食べればパッケージだけじゃなく、中身もいかにも新商品だ。

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知らないと知っているが絶妙に行き交う・亀田製菓「ゆるふわちっぷす」

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ワニのほかに、同一内容でゾウのパッケージバージョンがある

2025年1月27日発売(ローソンで2024年12月24日先行発売)、亀田の「ゆるふわちっぷす」は、買ったワニのパッケージのほかに、ゾウのパッケージが店頭に並んでいた。

内容は同じ2種類のパッケージデザインがあるということらしく、CDジャケットでそういうのあるなと思う。

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見たことあるようなないような絶妙ギリギリのラインを攻めてきた

米粉を使いつつ、ふんわり仕上げたのが特徴だそうで、食べると確かにこういう食感と味の感じのスナックはありそうでなかった気がする。

揚げてあるタイプのエスニック料理で出てくるえびせんが近いか、でもそれよりずっと軽い。

そんな食感の新規性ぶっとばすように、味は伝統のコーンポタージュ味なのだ。食べながらずっと、知らないと知っているが絶妙に行き交った。

ひと袋142kcalと、カロリーが低くて助かる。

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メロンは入っている、パンは入っていない・赤城乳業「厳選メロンのメロンパン」

アイス界も、お馴染みのブランドが続々新フレーバーを出し、完全な新商品の付け入る隙がないジャンルのように思う。

それでも、ロッテの爽(1999年発売)だって、森永のMOW(2003年発売)だって、登場したときに「なんか新しいの出たな」と思ったおぼえはあるのだから、今から何かがすっと界隈に入ってきて定番化することもあるんだろう。

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若干、何かのシリーズものか……?という気配がある(ご存知の方は優しく教えてください)

これは衝撃的な事実なのだけど、「厳選メロンのメロンパン」(2025年1月21日発売)は、パンが入っていない。メロン果汁は入っている。

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「パンは使用しておりません」の文言の味わい

そもそもメロンパンというのは、メロンではなく、パンだ。

けれど「厳選メロンのメロンパン」はパンは使わずメロンを使ってきた。そうくるか。

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様子のいいアイスですな

コーティング部分にしゃりしゃり感があり、食べるとアイス部分には細かくクッキーが入っている。

メロンパン風クッキーなのだそうで、メロンパンという概念が1本のなかで激しく交錯した。

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かじらず、ナイフで切った断面を見せるところを褒めてほしい

あと、またカロリーの話になってしまうのだけど、メロンパンよりはだいぶカロリーが低いのは快挙なんじゃないか。

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メロンパンってひとつ450kcalくらいありますよね??
​​​​

ちゃんと珍しい味・岩塚製菓「真夜中の甘い誘惑」

2025年1月28日発売の岩塚製菓「真夜中の甘い誘惑」は、商品名が文章なのがお菓子っぽくなく(「世にもおいしいチョコブラウニー」があるか)、でもパッケージがバシッと決まってるからこれぞパラレルワールドの感がある。 

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パッケージにほどこされたバターの量が伏線です

食べるとこれが味もかなりパラレルワールドっぽい。この世界には無い、絶妙な珍しさ。

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サラダせんべいにしては白すぎるという意味での見た目の新しさ

甘いパウダーにかなり攻めたバターの香りが仕込まれていて、そこが口の中でおもいのほかトリッキーに躍動する。パッケージに大きくバターがフィーチャーされているが、それが偽りない。

なおこちらも一袋123kcalとカロリー控えめだった。お菓子業界、カロリーを抑える力をつけてきたということなんだろうか。

 

パッケージの時点でパラレル感はそれなりに味わい切って、味は普通にお菓子だろうと思ったのだけど、食べたらちゃんと味もパラレルワールドだった。

ほんの少しの未来からのお土産みたいだ。

つまりそれが、「新製品」ということそのものの意味かもしれない。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
「いかにも『みなさんご存知の』という様子で存在する。でも、私は知らない。」「資本が入りすぎて洗練」など、新製品を手に取るときの違和感と期待感をきちんと明文化した記事です。 最後に「つまりそれが、『新製品』ということそのものの意味かもしれない。」とタイトルを回収してきれいに終わるのもさすがです。 (林)

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