ちょっと聞いてよ 2023年6月22日

自然食品の店にならぶ商品、そのパッケージの愛しき独特

自然食品の店というのがたまにあって、そこでは化学農薬や化学肥料を極力使わない野菜や果物だったり、科学的な添加物を使わない調味料などの食材全般を扱っている。

こういったお店にならぶ商品パッケージには独特の風情、表情があって、ちょっと見逃せない。

東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

前の記事:何もつけずに食べる麺はとてもおいしい(デジタルリマスター)

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

住宅街に急にあらわれがちな自然食品の店

そもそも「自然食品の店」と言ってピンときてもらえるものだろうか。

店によって方向性は若干差異があるが、食品の生産や流通に対して理想や思想がある、こだわるタイプのお店だ。

チェーン店だと駅前の路面店のほか百貨店に入っていることもある。いっぽう、チェーンではない独立系のお店は住宅街に急にあらわれることが多い。

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写真は東京、神奈川、千葉、埼玉でチェーン展開する「自然食品 F&F」の自由が丘店
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その商品の独特、たとえばこんなかんじ

そんな自然食品のお店にならぶ商品の独特さ、たとえば飲み物だとこういうやつだ。

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なんかこう……独特の雰囲気がありませんか

以前にくらべ、最近では独自性の薄い、おしゃれですっきりしたデザインが増えたとは思う。

それでも今なお、店の棚には「これは」と思わせるパッケージが並ぶ。

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妙に味わいがある
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どうして独特と感じるのか

見ればただなんとなく、その独特さみたいなものはお分かりいただけるかとは思うが、ではなぜそう感じるのか、理由としては大きく3つあると思う。

  • 流通量が少なく既視感がない
  • 資本が入りきらず素朴
  • 伝統的で昔ながら

それぞれのパッケージはこれらの要素を横断的に兼ね備えていることが多い。

この独特性の由来を、例とともに考えていこう。

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絶妙に見たことがない

自然食品の店の商品は、こだわりの品だけあって、一般的にスーパーやコンビニで扱われるものよりも基本的に割高だ。

おそらく流通量も同ジャンルの一般的な商品よりも少ない。

となると、おのずと、あまり見たことがない、見覚えがない品物だ、ということになってくる。

たとえばさきほども上げたこの「ふりかけ45」。

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化学調味料・着色料・酸化防止剤 不使用の文字に合わせ、ふんだんな栄養をびしびし感じる

45種類の食品で作られているというかなりアクロバティックなふりかけである。

堂々たるデザインであり、「ご存じ、ふりかけ45!」といった迫力はあるのだが、どんなスーパーにも必ず並ぶおなじみの「のりたま」や「味道楽」にくらべると完全に身に覚えがない。

(自然食品を日常的に愛用している方にとってはこの先 感性のすれちがう文章が続いちゃうと思うのですが、どうか、こういう見方もあるのだとお許しくださいね)

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ここまで既視感のないふりかけがかつてあったろうか
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ちなみに味はというと、45種類の材料が使われているだけあってかつおベースのなかに複雑な味わいがあるうえ、薄味でしみじみと滋味

 こちらのゼリーもどうだろう。

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じんわりした見たことなさ
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fBフルーツバスケット、名前にもちょっとなじみがない

張り切って主張はしているが、どうにもじわっとした初見感がある。

風情だなあと思う。 

ちなみにこのゼリー、単純にめっちゃくちゃおいしい。ゼリーというよりも、ジュレといった、デパ地下のゼリーみたいな味わい。高いだけある。

言ってしまえばちょっとあか抜けないとも言えるパッケージのにつつまれた、高級食品としての実力もたまらないのだ。

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中の個包装のこのてらいないかわいさよ
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大手が作っているあか抜けとは一線を画す

パッケージの独自性、その要素のふたつめは「資本が入りきらず素朴」である。

自然食品の店にならぶ品々は、大きな資本でもって広く流通させるのとは別の文脈で商品を扱うメーカーが多い。

それにより、ガツンと資本が入って完璧にデザインされた商品とは指向の違うデザインが生まれるのだ。

たとえばこの「梅チュッチュ」をご覧いただこう。

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そもそも名前が意外なんだよな
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そしてこのラベルの構わなさよ(ついでに原材料の潔さを見てほしい、自然だ!)

パッケージが全面デザインではない、ラベルのみにデザインがほどこされているところや、てらいない商品名、かと思えばイラストは「おっ」と思わされるポップさがある。

言いかたとして正しいかわからないが、頑張りすぎないのだ。

こちらもどうだろう。素朴という形容が、ガムにまで及ぶのが自然食品の力である。 

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国産、遺伝子組み換え原料原則不使用、合成食品添加物不使用を掲げるサンコーのミントガムのパッケージ。

このガムはあちこちの自然食品店に並んでいる。象徴的な商品だと私は思っている。 

頑張りすぎないパッケージというと、100円ショップにならぶお菓子が雰囲気としてちょと似ているところもあるかもしれない。あれはあれで素朴だ。

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100円ショップのお菓子、こんな感じ(記事「100均お菓子がそっけない」より)

自然食品のパッケージと100円ショップのパッケージの違いは「国産の風合い」で見分けることができる。

100円ショップの食品は輸入品であることが多いが、自然食品は逆に日本での自給率が低い食材以外はほぼ国産と思われる。 

ちょっとでも国産っぽさがあれば、自然食品を疑っていい。

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100円ショップとの差異は国産の風合い
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フックのある昔ながらっぽさ

良い意味で更新されない、伝統を感じるデザインも、自然食品の商品には多い。

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「固形タイプ」のフォント使いが良い
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ところてんの部分が透明になっていて中が見えるのがかっこいい

歴史を感じるデザインといえば、ご当地系の麺類や練り物、土地独自の漬物などにもよく見られるが、自然食品の独特性は、ところてんのように「商品そのものとしては珍しくない」ところにある。

全国区の食べ物のパッケージだけど、昔っぽく独特なのだ。

すぐそばにあるパラレルワールド

既視感がない、素朴、伝統的。

これらの3要素が横断的にいりまじり、自然食品の店では各商品が独自の存在感を見せている。

自然食品の店には牛乳があり、豆腐があり、冷凍食品もならぶ。ジャンルのラインナップとしてはスーパーやコンビニと変わりない。だけど、行きつけない者にとってはどれも見たことがない品なのだ。

ある意味これはパラレルワールドではないか。

コンビニに行ってから自然食品の店にいき、またコンビニに行く。パラレルのワールドの行きき、あんがい気軽ではないか。

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