注射しようぜ!
調味料を効率的に料理に絡ませる方法はないかと思い、開発したのがこの注射器料理だった。最初の頃の発想は調味料にトロみを付けることだったのだけれど、トロみを付けるのも面倒だし、一口毎に付けるのも面倒。そこで注射器に行き着いた。なかなかにいい発見だったのではないかと、個人的に自負しております。
調味料というものがある。何かを食べる時に、調味料をつけることでさらに美味しくいただくことができる。餃子に酢醤油、ウィンナーにケチャップやマスタード、コロッケにソースなど、調味料がないことは考えられない。
しかし、調味料が上手く料理に絡まない時がある。餃子などは表面がツルツルしているから、酢醤油が流れ落ちてしまう。そこで登場するのが注射器。表面に調味料ではなく、もう注入してしまうのだ。
美味しく料理を食べるには調味料が欠かせない。調味料を食べたいから、その料理を食べるまであると思う。調味料の力は偉大で、その料理をさらに美味しく輝かせてくれる。だからこそ、効率よく調味料を料理に絡ませたいと考えてしまう。
たとえば餃子には酢醤油とラー油を混ぜたものを付ける。しかし、経験はないだろうか。思っていたほど酢醤油の味がしないぞ、と。餃子の表面はツルツルなのだ。調味料を受け入れないぞ、という餃子側の強い意志を感じる。
馴染まない、流れ落ちている。これに私は長らく不満を感じていた。餃子には酢醤油が絶対のはずなのだ。しかし、流れ落ちて特に一口目は酢醤油を感じることができない。感じたいのに感じられないのだ。実に惜しい、そして悔しい。
表面に調味料を付けようとするから流れ落ちて馴染まないのだ。だったら中に注入すればいいのだ、と気がついた。そこで登場するのが注射器。医療用のものではなく、安価に手に入るものだ。これにまずは調味料を入れる。
これの良い点は餃子の美しい見た目は変わらないことだ。表面が調味料で黒くなることもなければ、割って中のアンに調味料を付けるわけでもないので、見た目は美しき餃子のまま。なのに、調味料がビンビンに入っているのだ。
我々人類は中からジュワッ、に感動を覚える。肉汁がとか、旨味がとか、中から現れる美味しさを我々は求めている。この注射器によりそれが叶えられている。中から酢醤油を含んだアンが現れ、心から美味しいと思えるのだ。
効率的だ。無駄がない。一滴も無駄なく、調味料が料理に馴染んでいる。調味料の水気が美味しさをプラスしてくれている気がする。我々が求める美味しいが注射器にはあるのだ。もちろん餃子以外でも注射器は活躍する。
肉まんにはポン酢(酢醤油)をつけたい。肉まんはそのまま食べたい、という人もいると思うけれど、九州生まれの私は昔からポン酢を付けて食べてきた。しかし肉まんもまた表面が調味料を拒否する。
しかも、肉まんは大きいので、一度ポン酢を付けただけでは足りない。齧っては付け、齧っては付けを繰り返さなければならない。それはとても面倒なのだ。そこで登場するのがあれだ。
ポイントは注入箇所を複数にすることだ。一点だけでは全体にポン酢が行き渡らない。何箇所か刺すことで全体にポン酢が馴染むのだ。中身にポン酢が行き渡ることで、生地にはあまりポン酢が付かず、フワフワの生地は変わらずそのまま楽しめる。
我々の美味しいは注射器により作り出せるのだ。本来の調味料の付け方では生地などが水気を帯びるという残念な点があるけれど、それが解決される。注射器なのだ。わかりやすい例を示そうと思う。
コロッケにはソースを付けて食べる。上記の2つとは異なり、コロッケの表面は調味料を気持ち良いほどに吸収してくれる。しかし、それはせっかくの衣の持つサクサクという食感を失うことでもある。
ソースを中のジャガイモの部分だけに注入するので、ソースという最高の味をプラスしつつ、サクサクはそのまま。夢のようなコロッケの完成ということになる。コロッケは薄いので注射には技術が若干必要になる。下手に注射すると衣までソースが漏れてしまう。
調味料は先のポン酢はソースだけではない。若干ドロドロしたものもある。ケチャップやマスタード、マヨネーズなどだ。これも注射器で注入することができる。注射器は万能なのだ。
ウィンナーにはケチャップとマスタードだ。もちろんいつも通り付けて食べても、ドロドロしているので、先の液体系調味料よりは絡む。しかし、一口ごとに付けて食べるというのは面倒だ。そこで登場するのがあれだ。
小学生の頃に中にチーズが入ったウィンナーを初めて食べた。あの時の感動は今も覚えている。中にチーズが入っているという驚き。それは私に涙の予感すらもたらした。それと一緒。中に何かが入っていることは感動を生むのだ。
注入後に切ってみるとケチャップとマスタードが溢れ出そうとしている。これを旨味と呼ぶ。感動が旨味となりウィンナーから溢れ出ているのだ。食べればもちろん美味しい。一口ごとに調味料を付ける煩わしさからも解放される。
チョコバナナという食べ物がある。バナナにチョコをまとわせたものだ。とても美味しいのだけれど、作るのは手間だ。チョコを溶かし固めなければならない。それが面倒な場合は上記のようなチョコレートシロップを使えばいいけれど、たれるという問題がある。
バナナは柔らかいけれど、チョコレートシロップにトロみがあるためか、思うように注入できない。そんな時は針を刺し、そこでぐりぐりと注射器を動かし、バナナ内にスペースを作り注入するとスムーズに行える。
食べてみるとこれが美味しい。チョコレートシロップが垂れ落ちることは回避され、効率的に美味しくバナナとチョコをいただくことができる。注射器なのだ。調味料を付ける時代から、注入する時代になったのだ。
調味料を効率的に料理に絡ませる方法はないかと思い、開発したのがこの注射器料理だった。最初の頃の発想は調味料にトロみを付けることだったのだけれど、トロみを付けるのも面倒だし、一口毎に付けるのも面倒。そこで注射器に行き着いた。なかなかにいい発見だったのではないかと、個人的に自負しております。
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