消費しきれない「のりたま」の導きにより
「ほりにし」「マキシマム」「黒瀬のスパイス」などに代表される、肉料理や魚料理など、なにに使っても美味しくなってしまうというシーズニングスパイス。アウトドアや料理が好きな人たちにとっては、すっかりおなじみになりましたよね。僕も、スーパーなどで見かけてふと気になり、使ってみては、うまーい! などと喜んだ経験があります。
しかしながら、コンセプトの似た商品も含めてかなり種類があるうえ、実際に試してみないとどんな味かわからない。さらに、ひとつひとつの商品がけっこういい値段だったりする。しかも、それぞれに多数のスパイス類を複雑に配合しているので、「これは何味!」みたいな、初心者にとってのわかりやすさはない(ここまで、あくまで個人の見解)。
ところで先日、こちらの記事を書いた時、ものすごく久しぶりにふりかけの「のりたま」を買ったんですが。
酒飲みなので、ふだん白いごはんにふりかけをかけて食べるという習慣が皆無であり、食べてみて、記憶をはるかに超える美味しさに大変感動したものの、しかしその後、やっぱり消費されずにキッチンの棚にあるままなのでした。
さて、ここまでの話によって導き出される仮定とはなにか?
そうなんです。ふりかけもまた、さまざまな食材や調味料が配合された、粉っぽい存在。つまり、「シーズニングスパイスの一種と考えていいのではないか?」ということ。しかもですよ? 「のりたま」なら、のりと玉子味、「すきやき」なら、すき焼き味と、ネーミングと味の方向性が直結していることが多い。さらに、たいていいひと袋が100〜200円とお手頃価格だから、気軽にあれこれ試せる。
もしもふりかけがシーズニングソルト的に使えるならば、そこには「ふりかけシーズニング大陸」という、新たな地平が広がっているということになりませんか?
ふりかけチキン、まぶして焼くか、焼いてまぶすか
さっそく、その可能性を探っていきましょう。大前提として確認しておきたいのは、調理法。つまり、「ふりかけをまぶしてから焼く」のがいいのか、「焼いてからふりかけをまぶす」のがいいのか、というポイント。
というわけで、今回の検証のベースと決めた「鶏もも肉」を使って比べてみることにします。
まずは鶏もも肉をてきとうな大きさにカットし、片方にはのりたまをまぶす。片方はそのまま。それらを薄く油をひいたフライパンに並べ、弱火でじっくり焼いていきます。
※ちなみにこの「薄く油をひいたフライパンで、弱火でじっくり」を、今回の調理法の基本とします。理由は、焦げづらいことと、多少時間はかかれども、肉が柔らかく焼きあがることから。
10分くらい動かさずそのままにしておくと、上の写真のように、外から見てもわかるくらい、下側から肉に火が通りはじめます。感覚で6割くらい火が通ったら、上下を返す。
お、両方ともいい焦げ目がついてますね。まぶし焼きのほうも、心配していた焦げすぎとまではなっていないよう。
で、もう片面にも適度な焦げ目がついたら、ひとまず焼きあがり。まぶし焼きのほうはそのまま皿にとり、焼きまぶしのほうは、素焼き状態の鶏肉にのりたまをかけて、フライパン上でよくまぶしつけます。
では食べ比べていってみましょう。
いざ実食。もぐもぐもぐ。おぉ、そもそも完成された味わいののりたまをまとった、ぷりぷりっとした鶏肉。うまい。うまいけど、端的に説明すると、焼いた鶏肉にのりたまをまぶした味。それぞれが融合まではしていないというか。
すると! これが! だんぜんうまいんです。こっちのほうが。まず、簡易的漬け込み効果が生じたのか、肉がより柔らかくてジューシー。ほんのりと焦げた海苔や玉子の、ほろ苦く香ばしい風味もすごくよくて、ちゃんとした逸品料理。居酒屋で出したら人気メニューになりますよ、これは。
というわけで、ここからはすべて「まぶし焼き」を採用しつつ、もう少しいろんなふりかけで作り比べてみようと思います。
和風ふりかけ3種
スーパーへ行き、「肉にまぶして焼いてみたい」という珍しい理由で選んできた、和風ふりかけ3種。
ちょっと片面が焦げすぎちゃった。けど、
では食べてみましょう。わくわく。ちなみに感想は、ふりかけ自体の素の味、そして、そのふりかけをまぶして焼きあげたチキンの味、両方を記録していきたいと思います。
【辛子明太ふりかけチキン】
・ふりかけの味
ファーストインプレッションの味、食感はのりたまに近いですね。しかしながら、徐々に辛子明太子由来の辛さがじわじわとやってくる。塩気もしっかり強めで、かなり好きな味。
・ふりかけチキンの味
シンプルな白いごはんと合わせて食べるのと比べて、辛子明太子らしい個性は少し薄まったかな。しかし、その赤い見た目とじわりと辛い味わいは、かなり食欲をそそるものがあります。
【わさびふりかけチキン】
・ふりかけの味
こんなにさらさらっと乾いた粉なのに、しっかりツーンと辛いわさびの風味! すごいな、ふりかけって。
・ふりかけチキンの味
お、これも鶏の脂と融合したからか、辛味はおだやかになり、しかしちゃんと爽やかなわさびの個性は生きている。いいですね。
【男梅ふりかけチキン】
・ふりかけの味
和風なふりかけのベースのなかに、かりかりっとした粒大きめの乾燥梅干しが入っていて、それを噛みしめると本気の梅干し味が口のなかに広がります。これまたすごい。
・ふりかけチキンの味
基本的に、肉にまぶして焼くことによって、塩気の角がとれて食べやすくなるのは全ふりかけ共通のようですね。程よい酸味で、たまにふわりと強く梅が香って、これは一品料理として完成されています。うまい!
バラエティーに富んだふりかけ5種+1
さらにスーパーをめぐり、とにかくシーズニング効果が気になるふりかけたちを買い集めます。この企画、そもそも「ふりかけがあまってしまってどうしよう?」というところから始まっていたはずなんですが、はたしてこの道、正解なんでしょうか。しかしまぁ、後戻りなどできるはずもなく。
永谷園の「ゆず胡椒ふりかけ」と「山椒ふりかけ」は、僕は初めて見かけたのですが、うまくないはずがないでしょう。加えて、娘が好きなので珍しく我が家にも常備されている定番「ゆかり」、肉におかかってどうなの? と結果が未知数の「おかか昆布ふりかけ」、逆に間違いなさそうな「にんにくラー油ふりかけ」を。
それから、よく考えたら、こういう試みをしおいて、そもそも冒頭に例をあげたようなシーズニングスパイスの味をきちんと把握しなおしておかないのはどうなんだ? と思い、有名どころのなかから「黒瀬のスパイス」も買ってきてみました。
こちらは、福岡県北九州市で昭和25年に創業した鶏肉専門店「かしわ屋くろせ」のオリジナル。「鶏、豚、牛の焼肉串焼きはもちろんの事、野菜炒めやハンバーグの味付けもこれ1本におまかせ! 万能調味料の王様」だそうです。ただし、1本約1000円と、予備知識なしでいきなり購入するには、やっぱり少々勇気がいる値段ですよね。
すると、おぉ、やはり見た目のクオリティーからして、黒瀬のスパイスで焼いた鶏に王道感があります。